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一時保護所で「ぶたれた」 訴えた子どもの真意は?

青山さくら・児童相談支援専門職員
 
 

 「T職員にぶたれた」。児童相談所(児相)が運営する一時保護所で暴力を受けたと母親に訴えたMさん。一方、T職員は「そんなことぜったいしてません」と涙ながらに訴えます。その後起きた予期せぬ事態に、児童福祉司の青山さくらさんはある思いを抱きます。

母の入院中に起きた“事件”

 2カ月ほど、児童相談所で一時保護していたMさん(5歳・女児)が、家庭復帰となった。

 Mさんの母は、1年前、夫からのDVでシェルターに逃げてきて、今は母子生活支援施設に入所している。半年前に離婚が成立して、働き始めようとしていた矢先のこと、足がしびれて動けなくなった。心因性のものだという。

 うつと診断され、10日ほど入院することになり、Mさんを一時保護所で預かることになった。しかし、入院中、母は看護師に暴力を振るったり、服薬を拒否したり、「死にたい」と言ってナースステーションに駆け込んだり、不穏な行動を繰り返したため、入院が延びた。

 ひと月後に退院したものの、回復までには時間がかかり、訪問看護を受けたり、保健師の付き添いで通院したりして、ようやくMさんを引き取れるまでに回復したのだった。

 母のもとに帰ったMさんは、「(一時保護所で)ぶたれた」と母に語った。

 母は興奮して児童相談所に電話してきて、「てめえら、うちの子に何しやがったんだ!」と大声でわめいた、という。Mさんは「T先生が、ぶった」、カレンダーを指さして「この日とこの日、2回ぶたれた。コラ!って、手のとこぶった、Mちゃんなにもしないのに」と母に言ったらしい。

 まず、Mさんに話を聞きにいくことにした。母子生活支援施設の施設長を通して母に打診したが、「これ以上、Mを傷つけないでほしい」と断られた。母に会いたいと申し入れたが、母も「今は話ができるような心境ではない。(S県の)保育園で園児虐待事件があったから、保育士は信用できない」と返事があった。

 T職員に話を聞きにいった。

子どもたちに人気だったT職員

 「夜勤の時、…

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児童相談支援専門職員

「青山さくら」はペンネーム。複数の児童相談所で児童福祉司として勤務した後退職し、現在は自治体などで子ども虐待関連の仕事をしている。「ジソウのお仕事」は隔月刊誌「くらしと教育をつなぐWe」(フェミックス)で2009年4月から連載。過去の連載の一部に、川松亮・明星大学常勤教授の解説を加えた「ジソウのお仕事―50の物語(ショートストーリー)で考える子ども虐待と児童相談所」(フェミックス)を20年1月刊行。【データ改訂版】を2021年3月に発行した。絵・中畝治子