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在宅介護はできなくなる? 国賠訴訟を起こしたヘルパーが問いかけるもの

中澤まゆみ・ノンフィクションライター
 
 

 「2040年には訪問介護事業所を約5000件増やし、訪問介護員(ホームヘルパー)を約3万2,000人追加確保する必要がある」――。厚生労働省は8月30日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、こんな試算を示しました。20年には約114万人だった在宅介護の利用者は、40年には約152万人に増加すると推計され、事業所とヘルパーの不足が深刻化するという危機感が表れています。

 ヘルパー不足はすでに深刻です。求職者1人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」をみると、21年の全職業の平均が1.03倍だったのに対し、介護の求人は3.64倍。中でも13年度に3.29倍だったヘルパーの求人倍率は、22年度には15.53倍へと急増しています。とくに深刻なのは都市部で、都内では新型コロナウイルス感染症の影響で、21年8月には有効求人倍率が50倍近くになったハローワークもありました。ヘルパーも高齢化し、平均年齢は54.4歳、60歳以上が37.6%を占めています。

 在宅で介護を続けるためには、医療・介護のさまざまな職種が関わることが必要ですが、その要の一つとなるのが、在宅ケアの「生活」の部分を支えるホームヘルパーの存在です。

 ところが、ヘルパーが確保できないため、「サービスの枠はあっても、仕事を受けるヘルパーがいない」状態が増えてきました。介護事業者からは「新規の依頼が受けられない」という声が頻繁に聞こえてきます。

 「病院から在宅へ」「施設から在宅へ」と、国は在宅を軸とした地域包括ケアシステムを推進していますが、上記の数字や現状を見ると、高齢者の在宅生活を支えるヘルパーが減少を続けることで、「最期まで在宅」の未来はますます遠のいていきそうです。ヘルパーはなぜ、こんな「絶滅危惧種」的な存在になってしまったのでしょうか。

ヘルパー不足で、在宅介護が成り立たなくなる

 「このままではヘルパーのなり手がいなくなる」と、60~70代の3人の登録型ヘルパーが19年11月、990万円(1人330万円)の損害賠償を国に求める訴訟を東京地裁に提起しました。

 9回の口頭弁論を経て、22年11月に東京地裁は請求を退けましたが、3人は控訴。23年3月22日から東京高裁で2審が始まり、10月25日には3回目の口頭弁論が行われます。

 前代未聞の「ヘルパー訴訟」は、高裁に移ってからは毎回、傍聴券が取れないほどの関心を集めています。

 「人員不足が続けば、在宅介護そのものが成り立たなくなるかもしれない」と懸念するのは、介護家族も同様です。実際、国賠訴訟を起こしたことで反響があったのは、ヘルパーよりも介護家族だったといいます。

 介護保険制度が始まる前の「公務員ヘルパー」時代から32年間、ヘルパーを続ける原告の一人、藤原るかさん(67)は、介護人材不足の原因は「…

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ノンフィクションライター

なかざわ・まゆみ 1949年長野県生まれ。雑誌編集者を経てライターに。人物インタビュー、ルポルタージュを書くかたわら、アジア、アフリカ、アメリカに取材。「ユリ―日系二世 NYハーレムに生きる」(文芸春秋)などを出版。その後、自らの介護体験を契機に医療・介護・福祉・高齢者問題にテーマを移す。全国で講演活動を続けるほか、東京都世田谷区でシンポジウムや講座を開催。住民を含めた多職種連携のケアコミュニティ「せたカフェ」主宰。近著に『おひとりさまでも最期まで在宅』『人生100年時代の医療・介護サバイバル』(いずれも築地書館)、共著『認知症に備える』(自由国民社)など。