ちょっとショッキングな響きのある「毒親」。じつは「自分は一生懸命に子育てしてきた」と思っている親も子どもに“毒”を与えてしまっている可能性があるそうです。親たちが前の世代から受け継ぎ、我が子に与えてしまう「昭和世代ならではの不安感」とは――。カウンセラーの高橋リエさんに聞きました。
不安解消のため過干渉してしまう親たち
「子どもに暴力をふるい、怒鳴りつける親ばかりが毒親とは限りません。教育熱心な親、まじめできちんとした親もまた、毒親になってしまっている可能性があります」
こう語るのは親子関係の問題に詳しく、「気づけない毒親」(毎日新聞出版)の著書もあるカウンセラー、高橋リエさんだ。自身も子どもの不登校問題に直面するなど、長年、子育てに悩み続けてきた。
「毒親とは少しショッキングな言葉ですが、自分の不安感を解消するため、子どもを過剰にコントロールしようとする親を指します。米国の心理学博士でセラピストのスーザン・フォワードが書いた『毒になる親』(1989年刊行)がきっかけで広まりました」
しかったり、口出ししたりするのは親としてごくあたりまえだが、毒親の干渉ぶりは度を超えている。子どもの気持ちを思いやれず、何事であれ黙って見守ることができない。意思を尊重せずに支配下に置こうとしてしまうため、子どもは主体性を失い、長年にわたって生きづらさを抱えがちとなる。
子どもにとっては毒になりかねない、親の不安感。その根源には“昭和世代独特の価値観”があるのではないか、と高橋さんは指摘する。
「第二次世界大戦中、日本人はまさに死と隣り合わせの日々を生きていました。我が子が戦死しても泣くことが許されなかった時代ですが、実際、感情をまひさせなければ襲いかかる恐怖に耐えられなかったことでしょう」
抑圧された感情のかわりに人々の心を支配したのは、さまざまな強迫観念だ。「我慢しなければ」「競争に勝たなければ」「人様に好かれなくては」――。強烈な不安感とともに生まれた強迫観念は、戦後も長く日本人の心に染みついた可能性がある。
「戦中・戦後世代の親に育てられた今の中高年にはまじめな方が多い。自分の感情をおさえ、会社や家族のためひたすら頑張ってこられた。それだけに子どもの気持ちをうまくくんでやれず、強迫観念をおしつけてしまった面もあるかもしれません」
とはいえ、今や我慢せずともクリックひとつで好きなものが手に入る時代。友達がいなくても、ひとりで楽しめるゲームはいくらでもある。厳しい競争に勝ち抜くより楽しく生きるほうがいい、と考える若者も多いはずだ。
豊かな時代に生まれ育った若者たちが抱く願望とは、頑張って競争に勝ち残ることではなく、「自分らしく自由に生きたい」という“ワンランク上の欲求”ではないか、と高橋さんは分析する。だからこそ親世代の心配を、「欲求の実現を邪魔する“毒”」ととらえる風潮が高まったのかもしれない。
「一生懸命に育ててきたのに今さら毒親呼ばわりされるなんて、と怒りや悲しみを感じる親御さんは大勢いらっしゃることと思います。でも、子どものことで悩んでいるのであれば、自分が抱く不安感や強迫観念、そして子どもの気持ちに目を向けてみていただきたいのです」(高橋さん)
わかりにくい「隠れ毒親タイプ」とは
ただし冒頭のとおり、「まさかこの人が」と思うような人が毒母、毒父という例は多々ある。「とくに毒母は美人で感じがよく、親切な方が多いので、なおさらはた目にはわかりにくいようです。第三者はもちろん、当事者である親子も“毒”に気づきにくいことは多いですね」(高橋さん)
以下を見ればわかるように、毒親のなかには「隠れ毒親」ともいうべきタイプも潜んでいる。
【毒母タイプ】
わかりやすさ度:★★★★★
“ジャイアン”タイプ:暴言、暴力を繰り返し、恐怖で子どもを支配してしまう。なかには普段、穏やかなのに突然人が変わる「ひょう変型」や、兄弟によって態度が違う「差別型」もある。
わかりやすさ度:★★★★
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