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がん細胞は“逃げ上手” 免疫とがんの単純ではない関係

大須賀覚・がん研究者/アラバマ大学バーミングハム校助教授
 
 

 免疫とは、体の中に入った異物を取り除く防御システムです。細菌やウイルスが入り込むと、免疫が異物を認識して排除し、体を守っています。免疫は、がんの予防や治療においても重要な働きをしています。

 だからこそ、がんには免疫療法があり、世間では「免疫力を上げると、がんが治る」といわれたりするのです。

 しかし、免疫とがんの関係はそれほど単純なものではありません。今回は免疫とがんの本当の仲について解説します。

免疫は、どのようにがんを予防しているのか

 前述した通り、免疫は体の中に入ってきた異物を検知して、攻撃・除去するシステムです。この防御システムは外からの異物に対してだけでなく、体内にもともとある正常な細胞が何らかのきっかけでおかしくなってしまった際にも発動します。

 その「おかしな細胞」を、防御システムを担う免疫細胞が検知すると、さまざまな免疫細胞が寄ってたかって「おかしな細胞」を攻撃し、除去しようと奮闘します。この免疫システムによって、がんの発生は予防されているのです。

がんが「泥棒」なら免疫は「警察」

 つまり、がんのもとになる「おかしな細胞」は、免疫細胞によって駆除されていることになります。

 それなのに、なぜがんは発生してしまうのでしょうか。

 理由の一つに、がん細胞の「逃げのうまさ」があります。

 がん細胞は増殖・進化する過程で、免疫細胞に殺されないよう逃れるすべを獲得しています。その結果、最終的に大きながんを作ることが分かっています。

 がんを詳細に調べた研究によると、がん細胞は免疫細胞の攻撃から逃れるためのシグナルを表に出して、うまくすり抜けていることが明らかになっています。

 不謹慎なたとえかもしれませんが、免疫細胞が「警察」で、がん細胞が「泥棒」だとすれば、がん細胞は警察に”賄賂を渡す”ことで取り締まりをされないよう先手を打っていることになります。がんは発生過程で、”賄賂”の裏ワザを見つけて攻撃を逃れ、生き延びることを可能にしました。

 よ…

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がん研究者/アラバマ大学バーミングハム校助教授

筑波大学医学専門学群卒。卒業後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面し、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。Twitterアカウントは @SatoruO (フォロワー4万5千人)。