大切に育ててきた我が子から「毒親」と呼ばれた――。すでに成人している子どもの反抗期に悩む親は少なくないようです。大人の親子関係を心地よいものにしていくためにはどうすればいいのでしょうか。親子の問題に詳しい心理カウンセラーの高橋リエさんに聞きました。
敗戦から高度経済成長期に増えた毒親家庭
不安感から、子どもを過剰にコントロールしようとしてしまう「毒親」。
ショッキングな響きをもつ言葉だが、大人世代にとっては誰しも人ごとではないかもしれない。昭和の敗戦から高度経済成長期以降、毒親・毒親育ちは急速に増えた可能性があるからだ。
親子問題に詳しく、「気づけない毒親」(毎日新聞出版社)などの著書があるカウンセラー、高橋リエさんは「背景にあるのは核家族化だ」と説明する。
「若い親がうまく子育てできないのはあたりまえのこと。ですから昔の大家族では、産みの親だけでなく、地縁血縁の大人たちが子どもに親身に関わり、未熟な親をフォローしてくれました」
親以外の逃げ場があるので、子どもも精神的なバランスをとることができた。
「ところが人々が経済的に豊かになるにつれ、閉鎖的な核家族家庭が増えていきました。子どもに関わる大人が未熟な親だけだと、子どもにとって親が絶対的な存在となりがち。親の影響力が大きくなりすぎたせいで、弊害が生じているんです」
結婚後も毎週のように実家に帰って親の愚痴の聞き役になる、親に認めてもらえる結果を出そうと仕事や子育てで頑張りすぎる――。
「毒親育ち」の大人たちはいくつになっても親に意識が向いていると高橋さんは話す。また、そもそも毒親育ちには親に絶対服従している人が多い。
「配偶者そっちのけで親のことばかり気にしていれば、しっかりしたパートナーシップは築けません。また、親に認めてもらおうと高いステータスを求め続けたところで、充足感や幸福感は得られないでしょう。自分が本当は何をしたいかわからないまま頑張り続けた揚げ句、心身ともに疲弊してしまうケースも少なくありません」
深刻な「愛着障害」に陥っている人もよく見られる。
愛着障害とは、養育者を信頼し、甘えることができなかったために、情緒や対人関係に支障をきたしてしまう状態。イギリス出身の精神科医、ジョン・ボウルビィによって提唱された。
「自己肯定感が低く、他人を極端に警戒する」「誰にでもなれなれしい態度をとり、わがままに振る舞う」などタイプによって特徴が大きく違うが、共通するのはアイデンティティーをうまく確立できず、生きづらさを抱えている点だ。
暴言、暴力、問題行動――子どもがひょう変してしまうワケ
親が精神的に不安定な状態にあると、幼い子どもは無意識に一定の役割を演じようとする。
「親を助ける子役」や「親のお気に入り役」に回る子もいるが、問題行動を起こす「手のかかる子役」、家族のストレスのはけ口となり、サンドバッグがわりにひどいことを言われ続ける「スケープゴート役」になる場合もある。いずれも親に育ててもらうため、親の注意を引くための自己犠牲的な選択という。
「大人になり、親の庇護(ひご)が必要なくなれば、もう自己犠牲的な役を演じる必要はないのですが、毒親育ちだと、いくつになっても同じ役割を演じ続けてしまう。長じてから疲弊してうつなどの症状が出たり、自分の子どもに問題が生じたりします。そこで自分の問題、ひいては親の問題に気づく方も多いですね」
生きづらさの正体が見えてきたとき、子どもは「親を絶対視してしまう自分」から卒業しようともがき始める。
「『電話やLINEを無視するようになった』『2世帯住宅で仲良く暮らしていたのに、出て行ってしまった』といった場合は、遅れてきた反抗期の可能性があります。親御さんは戸惑うでしょうが、本人にとっては親の支配から脱して自分らしく生きるための第一歩です」と高橋さん。
いっぽう、仕事や結婚生活につまずき、ブーメランのように実家に戻るケースもある。戻ってから、親に支配されていたことに気づき、人が変わったように攻撃的になるケースも少なくない。暴言、暴力で親を責め立てたり、復讐(ふくしゅう)するかのごとく問題を起こして、親に心労をかけ続けたりするという。
引きこもるのは「優しい子」
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