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日本女性の死亡リスクを上げる 「学歴×仕事のミスマッチ」

西川敦子・フリーライター
 
 

 学歴や職業、同居相手――。いろいろな視点から日本人の健康度を探ってみると、意外な結果が明らかになりました。死亡リスクが高い女性とは? 心を病みやすいのはどんな暮らし方? 大阪医科薬科大学医学部、社会・行動科学教室教授の本庄かおりさんに教えていただきました。<前編:世界一長寿だけど男女格差がヒドイ国で女性たちの心身に起こっていること>

高学歴女性がさらされる「死のリスク」

 ――前編では、「短期的な健康度は、時間に追われる正社員女性のほうが低いけれども、長期的な健康度はパート・アルバイト女性のほうが低い」というお話を伺いました。世界一長寿とされる日本女性ですが、じつは非正規雇用の人々のほうが死亡リスクが高いなど、健康格差が生じていたのですね。

 学歴と脳卒中罹患(りかん)リスクの関係についても調べてみました。世界では学歴と健康には関係があり、学歴が高い人ほど健康度が高いことが報告されています。なお、世界保健機関(WHO)によると、脳卒中は虚血性心疾患に次ぐ世界の死因の第2位であり、ストレスや生活習慣と関連の深い疾患です。

 研究では、最終学歴が中学校卒業の女性たちの脳卒中罹患リスクを1とし、高校卒業の女性たち、大学・短大・専門学校卒業の女性たちのリスクと比較しました。※1

 結果を見ると、高校卒業の人の死亡リスクは約0.68倍。中学校卒業の人より3割ぐらい少ない。ところが大学・短大・専門学校卒業の人は0.95と中学校卒業の人とほとんど変わりません。

 ――高校卒業の人より、大学・短大・専門学校卒業の人たちのほうが、脳卒中リスクが高かったということですね。

 そう、世界からすると驚きの結果です。さらに、対象者の属性を細かく見たところ、大学・短大・専門学校卒業の人々の中でも、無職の人の脳卒中罹患リスクは高くありませんでした。リスクが高いのは高学歴で、かつ就業している女性たちだったのです。

 そこで今度は、就業している人を「専門職・管理職」「事務職」「販売・サービス」「肉体労働」と職業分類別に分類し、脳卒中罹患リスクを見てみました。 ※2

 その結果、脳卒中罹患リスクがもっとも高いのは、「大学・短大・専門学校を卒業し、肉体労働、販売・サービス業に就いている人たち」でした。いずれも同じ職業分類の中学校卒業者を上回る結果となりました。

 ――高学歴で、肉体労働や販売・サービス業に就いている女性の死亡リスクが高かった、と。

 学歴と職業は関連があり、学歴が高い人ほど専門職や管理職など、収入の高い職業に就く確率が高くなります。そして、学歴と職業のミスマッチが起きている場合は、精神的健康度が悪化しやすいことが、海外の研究ですでに示されています。

 もちろん誇りをもち、生き生きと働いている方は大勢おられるでしょう。問題は、高学歴の女性たちの中で期待した仕事に就いていない場合です。

 日本において、こうしたケースはけっしてまれではありません。新卒で就職した会社では正社員として事務職に就いていたけれど、結婚、出産のため、退社せざるを得なくなってしまった。子育てが落ち着いたので再就職しようとするも、正社員での雇用は難しく、結局、パートでの仕事をせざるをえなくなってしまった、という方は大勢いると思います。

 日本はまだまだ新卒一括採用、終身雇用の企業が多く、一度、職を離れた女性の正規雇用はハードルが高いといえます。

制度が女性たちの生き方を縛っている

 ――女性の年齢別の労働力人口は、出産・子育て期でいったん低くなり、子育てが一段落した頃、また高くなります。一般に「M字カーブ」と呼ばれますが、近年はだんだんカーブが緩やかになってきました。かわりに登場したのが「L字カーブ」という言葉。女性の正規雇用率が20代後半でピークに達した後、下がり続ける状態を示しています。

 正規雇用による就業をあきらめる方も少なくないと思いますよ。その結果、前編で述べたように「耐える力」を失ってしまい、不安を抱えるケースもあるのではないでしょうか。

 「だから女性のみなさん、退職しないようにしましょう」ということをお伝えしたいわけではありません。これは個人の選択の問題ではなく、個人の選択に強い影響力のある社会や制度の問題である、と私は考えています。

 現在制度改革が進められていますが、年間130万円以上稼ぐと第3号被保険者でいられなくなり、公的年金や医療保険の負担がのしかかってくるといっ…

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フリーライター

にしかわ・あつこ 1967年生まれ。鎌倉市出身。上智大学外国語学部卒業。編集プロダクションなどを経て、2001年から執筆活動。雑誌、ウエブ媒体などで、働き方や人事・組織の問題、経営学などをテーマに取材を続ける。著書に「ワーキングうつ」「みんなでひとり暮らし 大人のためのシェアハウス案内」(ダイヤモンド社)など。