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ホームヘルパーの介護報酬改定の愚 在宅医療の専門医が訴える「見直すべきは他にあるはずだ!」

小野沢滋・みその生活支援クリニック院長

 今月に入り施行された介護報酬改定は、実に驚くべき内容でした。ホームヘルパーさんの介護報酬が引き下げられたのです。

 この話が表に出てきた当初、ホームヘルパーさんたちの重要性や経済的な苦境について、この連載でお伝えしたことがある私は耳を疑いました。

 なぜ……。

 全く理由がわからなかったからです。

 今、在宅療養の現場では、訪問介護のヘルパーさん不足が深刻です。すでに10年近く前から、募集してもホームヘルパーになる人がいない状況が続いていました。実際、モーニングケアが集中する朝や、夕方以降の訪問介護者を探すのは至難の業です。

「心を折られた」訪問介護事業者

 本来であれば毎日、だれかが訪問して支えなければならない方でも、人がいないために1人で日中過ごし、転んだり、万が一のことがあったりしても、覚悟の上でなければ自宅で過ごすことが難しい状況になってきています。

 また、志を持って低い賃金でも利用者さんのためにと頑張っている訪問介護事業の方の多くは、今回の改悪で本当に心を折られてしまっているのです。人手不足に加え、今回の改定で事業所を閉めるしかないという方も数多くいらっしゃいます。

 「家族介護から、社会で支える介護へ」というスローガンではじまったはずの介護保険事業は、今や株式会社の狩り場となり、利益優先で姥(うば)捨てのような状況が跋扈(ばっこ)しています。そして、その現状を知るのは私たちのような一部の専門職だけで、一般の方たちはご自身が要介護状態となり、「こんなはずではなかった」と初めて気がつくのですが、時すでに遅いのです。

 厚生労働省は「既存の『介護職員処遇改善加算』を新たに取得すれば大幅に増収となる」と説明しているようです。

 介護職員処遇改善加算は、介護職員のキャリアアップのための仕組みを作ったり、職場環境を改善したりした事業者に対して支給されます。しかし、実際にはほとんどの事業者がすでにこの加算を取得しており、今回の改定で事実上、マイナスとなります。そのあたりはシルバー産業新聞ケアニュースの記事「訪問介護の基本報酬引下げ 事業者から不満や怒り」に詳しく載っています。

減り続けるヘルパー

 介護現場はホームヘルパーさんが足りず、あえいでいます。

 これを見てください。国勢調査の抽出詳細集計の結果から2005〜20年の間に介護、看護職の数がど…

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みその生活支援クリニック院長

おのざわ・しげる 1963年相模原市生まれ。90年東京慈恵会医科大学医学部卒業。在宅医療をライフワークにしようと、同年から亀田総合病院(千葉県鴨川市)に在籍し、99年同病院の地域医療支援部長に就任。22年間、同病院で在宅医療を中心に緩和医療や高齢者医療に携わってきた。2012年に北里大学病院患者支援センター部副部長を経て、13年に同トータルサポートセンター長に就任。同病院の入院患者に対して、退院から在宅医療へスムーズに移行できるよう支援してきた。16年相模原市内で在宅医療専門の「みその生活支援クリニック」を開設。亀田総合病院在宅医療部顧問。日本在宅医学会認定専門医。プライマリケア連合学会認定医、日本緩和医療学会暫定指導医。日本在宅医学会前理事。日本医療社会福祉協会理事。一般法人社団エンドライフケア協会理事。相模原町田医療介護圏インフラ整備コンソーシアム代表。