ゆるやかな糖質制限のススメ ~健康の常識・非常識~ フォロー
ペットボトル症候群で脱水症状 エナジードリンクで糖質疲労 「危険な飲み物」と熱中症予防に適した「意外な飲み物」とは
山田悟・北里大学北里研究所病院院長補佐、糖尿病センター長- 保存保存
- 文字
- 印刷
日本列島を猛暑が襲っています。気温が35度を超える猛暑日が続出しており、強い日差しとじっとりとまとわりつくような熱気に命の危険を感じるほどです。熱中症や脱水症状で病院へ搬送される人も少なくありません。
その予防策として重要なのが、水分補給です。しかし、手当たり次第飲んでもいいわけではないようです。飲み物の中には、脱水症状や糖質疲労を招き、体に大きなダメージを与えるものもあるといいます。
避けた方がよい「危険な飲み物」と、熱中症や脱水の予防に適した飲み物とは――。「ロカボ」を提唱する糖尿病専門医の山田悟医師に伺いました。【聞き手・倉岡一樹】
スポーツドリンクを避けるべき理由
今年もうだるような暑さが続いています。熱中症や脱水症状を防ぐため、水分とミネラルの適切な摂取が大切です。そう聞くと、夏にぴったりな飲み物としてスポーツドリンクを思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。コマーシャルなどから「爽やかで健康的」といったイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、これは避けたほうがよい飲み物です。
連日35度を超える酷暑が始まった10年ほど前のことです。熱中症で病院の救急外来へ搬送される方が急増しました。とりわけ、血糖値が1000mg/㎗を超えるような高血糖で意識を失っている高齢者の方が目立ったのです。血糖値のあまりの高さに驚き、「ひどい暑さだけが原因ではない」と直感しました。
治療して回復した患者さんに話を聞くと、皆さんスポーツドリンクを飲んでいました。しかも飲めば飲むほど、のどの渇きが増したといいます。中には、2ℓのペットボトルを半日で空けていた人もいました。熱中症予防のため、「体に良さそうな」スポーツドリンクに手を伸ばしたといいます。
ただ、スポーツドリンクにはかなりの糖質量が含まれています。
あるスポーツドリンクはペットボトル1本(500㎖)で約31gもあり、私が提唱するゆるやかな糖質制限「ロカボ」だと1食分(40g)に近いです。これをブドウ糖濃度で換算すると、6200mg/㎗となり、血糖値(100mg/㎗程度)と極めて大きな濃度差があります。
汗をかいて失った水分の代わりに、糖質たっぷりのスポーツドリンクを飲むと、糖質摂取過多で異様な高血糖となって体がだるくなったり、急激な眠気に襲われたりします。もともと血糖値が高くないような方でも、知らぬうちに意識を失っても決して不思議ではありません。
血糖値が180mg/㎗を超えると、尿糖(血液中の糖が尿中に排せつされたもの)が出てきます。尿糖は水を引っ張り込むため多尿となり、脱水状態となるのです。「浸透圧利尿」といいます。それゆえ、スポーツドリンクを飲めば飲むほど、血糖値が上がり、脱水症状を加速させてしまうのです。
こうした状況は「高血糖高浸透圧性昏睡(こんすい)」あるいは「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)といわれます。医療者はスポーツドリンクをコーラやサイダー、甘いジュースといった加糖ドリンクと同様、危険視しています。これら、加糖された清涼飲料水全般の摂取を控えていただきたいです。
熱中症予防に最適な飲み物は……
熱中症や脱水症状の予防には、水を飲むだけで十分です。夏場ですと、1日2~3ℓ程度は飲むべきでしょう。水は飲み過ぎても尿になるだけですので、体が「もうこれ以上は飲めない」と感じているのに、無理やり水を飲むなどということさえしなければ、飲み過ぎになりません。
塩分の心配は無用です。そもそも日本…
この記事は有料記事です。
残り5980文字(全文7439文字)
北里大学北里研究所病院院長補佐、糖尿病センター長
1970年生まれ。94年慶応義塾大医学部卒業。同大内科学教室腎臓内分泌代謝研究室などを経て2002年に北里研究所病院へ転じ、07年から糖尿病センター長、24年から同院院長補佐を務める。我慢ばかりを強いるカロリー制限中心の食事療法で、向き合う糖尿病患者の生活の質が低下している現実と直面した。そんな中、食事をおいしく、おなかいっぱい楽しみながら血糖値を穏やかに保ち、肥満者の減量効果にも優れる、緩やかな糖質制限食と出合う。治療に積極的に取り入れるとともに、「ロカボ」と名付けて普及に努め、2013年に「食・楽・健康協会」を設立した。日本糖尿病学会糖尿病専門医。日本糖尿病学会指導医など。主な著書に「カロリー制限の大罪」「糖質制限の真実」「奇跡の美食レストラン」など。慶応義塾大医学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、星薬科大学非常勤講師。





