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高齢者でも熱中症対策で塩分を取っていいの? 和田秀樹医師が「過剰に恐れる必要はない」というワケ

和田秀樹・和田秀樹こころと体のクリニック院長

 今年は、とくに昼間は嫌になるほど暑い。

 そうなるとなんといっても怖いのは熱中症だ。

 一般的に熱中症とは、「(気温が高い時に)体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされたりすることにより発症する障害の総称」とされている。

 体温が上がり、脳への血流が不十分になって立ちくらみを起こしたり、筋肉痛を起こしたりするのだが、重症の場合は、意識がもうろうとしたり、けいれんが起こったりして、最悪死に至る怖い状態だ。

 さて、最近は熱中症については、いろいろな警告もマスコミで流れるし、対策もかなり知れ渡ってきた。

 なかでも、水分を取るだけでなく、電解質、とくにナトリウムの必要性はよく知られるようになってきた。

減っている脳出血

 さて、ここで問題になるのは、高齢者、とくに血圧の高い高齢者は、塩分を控えるように言われているのに、熱中症対策で塩分を取って大丈夫なのかということだ。

 私は、熱中症のシーズンでなくても、高齢者の患者さんには、塩分を十分取るように指導している。

 日本人の塩分恐怖はある種のトラウマからだ。

 1951年から80年まで日本人の死因のトップは脳卒中だった。

 その原因が高血圧だとされ、当時、あまりよい血圧を下げる薬がなかったこともあり、国をあげて減塩運動が行われたことがある。

 その名残で、高齢の方は塩分に神経質で、塩分は控えるべきものと思っている人が多い。

 周囲に脳卒中で亡くなる方が多かったから、塩分が怖いという刷り込みがなされたのだろう。

 減塩しょうゆなどはよく売れているし、年をとったら味が薄いものにすべきだという考えもまん延している。

 ただ、そもそも脳卒中、脳血管障害で亡くなる人は減っていて、日本人の死因のベスト3には入っていない。

 また、今は塩分が多く、血圧が高いから起こるとされている脳出血は減っていて、その死亡者数は脳の血管が詰まって起こる脳梗塞(こうそく)の半分程度だ。

 私が聞いた話では、昭和30年代や40年代には最高血圧が150とか160くらいの人がけっこう脳出血を起こしていたらしい。

 実は、たんぱく質やコレステロールが足りないと、血管の弾力性がなく、圧がかかると簡単に破れてしまう。ところが栄養状態がよくなると血管が丈夫なので、多少血圧が高くても破れない。

 先日、お会いした88歳で資産20億円のデイトレーダーの藤本茂氏は…

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和田秀樹こころと体のクリニック院長

わだ・ひでき 1960年大阪府大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒。同大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科で研修したと、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデントを経て、当時、日本に三つしかなかった高齢者専門の総合病院「浴風会病院」で精神科医として勤務した。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、国際医療福祉大学大学院臨床心理学専攻教授を経て現職。一橋大学・東京医科歯科大学で20年以上にわたって医療経済学の非常勤講師も務めている。また、東日本大震災以降、原発の廃炉作業を行う職員のメンタルヘルスのボランティアと産業医を現在も続けている。主な著書に「70歳が老化の分かれ道」(詩想社新書)、「80歳の壁」「70歳の正解」(いずれも幻冬舎新書)、「『がまん』するから老化する」「老いの品格」(いずれもPHP新書)、「70代で死ぬ人、80代でも元気な人」(マガジンハウス新書)などがある。和田秀樹こころと体のクリニックウェブサイト、有料メルマガ<和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」