"最大の敵"は「加齢」でも…できるだけ、がんにならないためにはどうすればよいのか? 最新の科学的根拠が示す具体的な予防法
大須賀覚・がん研究者/アラバマ大学バーミングハム校助教授- 保存保存
- 文字
- 印刷
前回の記事で解説したように、がんになる最大の原因は「加齢」――。その意味で、生きている以上、誰しも避けて通ることはできません。しかし「加齢」以外の原因を避け、できるだけがんにならないよう努めることは可能です。
では、具体的にどうすればよいのか。たとえば「生活習慣の乱れを正す」とか「紫外線を浴びない」といった方法を思いつく方もいるでしょう。そこはがんの発生メカニズムを正しく踏まえて考えることが必要です。今回は、がんの科学的な予防法を紹介します。
グレることを防ぐのが大事
がん細胞は正常な細胞がグレた末に発生する――というお話は、これまで繰り返しお伝えしてきました。
人間にたとえれば、真面目な青年であったジャック(正常細胞)が友人の裏切りにあうなどしたために悪い友達とつるむようになり、次第にグレて(遺伝子に傷がつく=遺伝子変異が入る)いきます。さらには暮らしている街の荒廃(加齢に伴う体の変化)に伴って警察(免疫細胞)が弱体化し、凶悪なギャング(がん細胞)になってしまうことと似ています。
こうしたメカニズムを踏まえれば、逆にがんをできるだけ発生させないようにすることも可能になります。真面目なジャックがギャングにならないよう、まずはグレることを防げばいいのです。
前回の記事で解説したように、がんが発生する最大の原因は「加齢」です。年を取る過程で、細胞には自然と遺伝子変異が生じてしまいます。人が生きている以上、仕方のないことで、現時点の医療でも、加齢に伴う遺伝子変異については防ぎようがありません。ですから、がんを防ぐには加齢以外の原因を減らすことが必要になります。
人がグレる時も「ある日突然」ではなく、周囲の環境が影響するといわれますよね。たとえば犯罪行為を繰り返す悪い友達に囲まれていたり、日々事件が起こる荒廃した街にいたりすると、どんなに真面目な子でも影響され、グレやすくなるかもしれません。がんについても同様で、体内の環境が悪化していると、正常細胞内の遺伝子変異を増加させてしまうことが分かっています。
遺伝子変異が入るのを加速させる要因として科学的に確認されているものには、喫煙、飲酒、ウイルス感染、肥満、運動不足、紫外線、過剰な塩分摂取、野菜摂取不足、熱い飲食物の摂取、化学物質(アスベストなど)への暴露などがあります。
加齢が内部の要因なら、こうしたものは外部の要因ということになります。言い換えれば、減らせるものや改善できることがほとんどです。ちょっとしたことでがんになる確率を下げられるのですから、知っておいた方がいいし、これらをよく理解することがとても大切になります。
人間関係や街の様子に注意を払って、子どもたちがグレてギャング(がん細胞)にならないよう、適切な環境を作ること――これが、がん予防の基本になります。
では、具体的に、どのように防いでいったらよいのでしょう。日本人の発がんに関わる重要な原因を取り上げ、それぞれについて解説します。
70以上の発がん性物質を多数含む“最大の敵”
これに…
この記事は有料記事です。
残り2608文字(全文3873文字)



