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不安だらけの新型コロナ「レプリコンワクチン」

谷口恭・谷口医院院長
 
 

 今秋より再開される新型コロナワクチン接種が10月1日に始まると報道されたのは7月中旬でした。これまでのように全員が無料で受けられるわけではなく、65歳以上及び重症化リスクが高い60~64歳を対象とした「定期接種」となり、自己負担は7000円の見込み、定期接種の対象外の場合は任意接種で費用は未確定――といった情報が公表されました。厚生労働省は約3224万回分のワクチンを供給できると見込んでいますが、このうち427万回分を占めるのが「レプリコンワクチン」です。新たに登場するこのレプリコンワクチンについては、さまざまなうわさが飛び交い大きな混乱を招いています。私自身はその有効性に期待もしているのですが、政府や専門家の説明は不十分です。今回は今秋から使用されると言われているレプリコンワクチンについて私見を交えて述べてみたいと思います。

ワクチンの効果が薄れていく理由とは

 まずは聞きなじみのないレプリコンワクチンが、どのようなタイプのワクチンかについてまとめておきましょう。「レプリコン」とは生物学的用語で、簡単に言えば「複製されるRNA(またはDNA)」のことです。そして、レプリコンワクチンとは「注入されたmRNAが自己複製されるワクチン」です。コロナワクチンが当初期待されたほど有効でなかった理由の一つは「ワクチンの効能が短期間で失われるから」です。それを考えると「レプリコンワクチンなら一度接種すればワクチンの有効成分(mRNA)が自己複製され、その結果ワクチンの効果も長持ちする」と一応は考えられます。しかし、そう簡単に素直にうなずけない理由が二つあります。

 一つは、コロナワクチンの効果が短期間で失われるのは、ワクチンの効果が減少するからというよりもむしろ、ウイルスが短期間でかたちを変えていくことに原因があるからです。コロナウイルスの構造は1本鎖RNA型であり、生物学的に簡単に変異が起こります(ヒトのような2本鎖DNA型がもっとも変異しにくい)。また実際に新型コロナウイルスは、武漢株、アルファ株、デルタ株、オミクロン株、さらにそのオミクロン株がXBB、BA1、BA2、JN1、KP2、KP3など、まるで既存のワクチンからすり抜けるように次々にかたちを変幻させてきました。このことからもワクチンの効果が長続きしないことが分かります。

食い違う説明

 そして、レプリコンワクチンに手放しで賛成できないもう一つの理由は「安全性」です。mRNAワクチンは新型コロナウイルスのアウトブレイクをきっかけに誕生したまったく新しいタイプのワクチンであり、導入当初は「mRNAを体内に入れて安全性は担保されるのか」という疑問の声が小さくありませんでした。この疑問に対して、行政や感染症専門医らは「ワクチンとして体内に注入されたmRNAはすぐに分解されるから心配ない」と言ってきました。厚労省のサイトには「mRNAワクチンで注射するmRNAは短期間で分解されていきます」と記載されています。

 しかし、この「短期間で分解されるから安心」という説明には疑問を呈する識者も少なくありません。「短期間で分解されない」ことを示唆した論文もあります。例えば、コロナワクチン接種から3週間後に死亡した76歳男性の脳と心臓からワクチン由来のスパイクタンパクが多数検出されたことを示した報告があ…

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谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。