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なぜ起きた? ビワの集団アレルギー

谷口恭・谷口医院院長
 
 

 2024年6月、山梨県富士吉田市の小中学校でビワによる「集団アレルギー」が発生しました。食事で起こる事件といえば通常は「食中毒」を思い起こします。実際、集団アレルギーなどという言葉は聞いたことがありません。報道されているように本当にビワで集団アレルギーが発生したのでしょうか。これからも発生することはあるのでしょうか。そして同じことを防ぐためには誰がどのようなことに注意すべきなのでしょうか。今回は、この奇妙な事件を明らかにし今後の対策について述べます。

のどの痛み、目のかゆみ

 まずは報道から事件を振り返ってみましょう。6月25日、富士吉田市の小中学校11校で給食を食べた126人の小児が「のどの痛みや目のかゆみなどの症状」を訴えました。うち3人はじんましんや腹痛の症状もあり近くの病院を受診し、1人が入院しました。給食を提供したセンターは「ビワによるアレルギーが原因とみられる」と発表しました。その根拠は、ビワを除いて同じメニューが提供された保育園で園児に症状が出なかったことです。給食センターは、「日ごろから子どもの食物アレルギーを確認したうえで給食を提供しているが、ビワは確認の対象外だった」とし、富士吉田市教育委員会の教育長は「多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを深くおわびします。細心の注意を払い、安心で安全な学校給食を提供していきます」と謝罪しました。

 この報道を聞いたとき、「集団アレルギーなんてあるのか。食中毒の間違いではないのか」と感じた人もいるでしょう。実際、ビワは種子に毒性があることがよく知られており、給食で果肉を大量にカットするときに種子が誤って混入した可能性はないか考える必要があるでしょう。しかし今回の事件では、医師が果実のアレルギーであると診断しています。また、報道されている症状は「のどの痛み、目のかゆみ、じんましん、腹痛」です。これらの症状は食物アレルギーの一種である「口腔(こうくう)アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome)」(以下「OAS」)及びその重症型に一致します。しかも、ビワはバラ科の果物で、OASの原因の代表とも呼べるのがバラ科の果物です。バラ科の果物には、ビワ以外にリンゴ、モモ・スモモ、ナシ・洋ナシ、サクランボ、イチゴ、アンズなどがあります。

珍しくないOAS

 では、ビワによるOAS患者は集団で発症するほどに大勢いるものなのでしょうか。あるいは山梨県に限ったことなのでしょうか。この答えは「患者は大勢いるが、山梨県では特に多い可能性がある」となります。

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谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。谷口医院ウェブサイト 月額110円メルマガ<谷口恭の「その質問にホンネで答えます」>を配信中。