自民党総裁選から総選挙へと慌ただしい政局の動きがメディアをにぎわせている。選挙の争点は「裏金」問題や石破茂政権の信任を問うことだとされているが、国民の関心が高いのは年金や介護などの社会保障だと思う。各政党や候補の社会保障に関する考えは、選挙公約を見てもあまり違いがわからないかもしれない。むしろ、日常の言葉や素顔に政治家の本音や人間性が表れる。どれだけ本気で現実感があるのかを見定めなければならない。
「自閉隊」発言で批判された石破氏
国民の人気は高いが自民党内ではあまり人望がなく、ようやく5度目の挑戦で総裁の椅子を射止めたのが石破氏だ。「軍事オタク」「農水族」などを自任しているが、若いころは社会保障や暮らしを専門とする政治家を志していたことはあまり知られていない。
「同期当選した別の議員が党内の厚生労働部会に所属することになったため、自分は農林水産部会に回された」と石破氏本人から聞いたことがある。
30代のころ自民党を離党、小沢一郎氏率いる新生党(後に新進党)へ参加するが、4年後には自民党に復党、勉強熱心で政策通として頭角を現し、順調に当選回数を重ねて政府や党の要職に就いた。独特のキャラが受けてメディアに登場する機会が増え、総理候補として注目されるようになった。
その石破氏が思わぬところで批判を浴びたのが障害者に関する発言だった。
2004年3月、小泉純一郎内閣で防衛庁長官に就任した石破氏は自民党議員のパーティーで「自衛隊は今まで半分やゆ的に『自閉隊』と言われてきた。自閉症の子どもの『自閉』と書いて『自閉隊』だ」と発言した。
米国での同時多発テロの発生を受けての有事法制の制定や、自衛隊のイラク派遣に政府が取り組んでいたころだ。国連平和維持活動(PKO)に協力できなかった自衛隊の状況を憂えての発言だったが、障害者団体から強い批判が起きた。
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植草学園大学教授/毎日新聞客員編集委員
のざわ・かずひろ 1983年早稲田大学法学部卒業、毎日新聞社入社。東京本社社会部で、いじめ、ひきこもり、児童虐待、障害者虐待などに取り組む。夕刊編集部長、論説委員などを歴任。現在は一般社団法人スローコミュニケーション代表として「わかりやすい文章 分かち合う文化」をめざし、障害者や外国人にやさしい日本語の研究と普及に努める。東京大学「障害者のリアルに迫るゼミ」顧問(非常勤講師)、上智大学非常勤講師、社会保障審議会障害者部会委員なども。著書に「弱さを愛せる社会へ~分断の時代を超える『令和の幸福論』」「あの夜、君が泣いたわけ」(中央法規)、「スローコミュニケーション」(スローコミュニケーション出版)、「障害者のリアル×東大生のリアル」「なんとなくは、生きられない。」「条例のある街」(ぶどう社)、「わかりやすさの本質」(NHK出版)など。





