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東京の事件で注目の不凍液 命を奪うその仕組みとは

志賀隆・国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)
 
 

 日曜日の午前2時でした。

 「18歳の女性が睡眠薬と車の車庫にある液体を飲んで倒れていた。どうやらクーラント液のようです」という救急車からの入電があり、救急外来では受け入れ準備を始めました。「先生! クーラント液ってなにが危険ですか?」「いい質問です! エチレングリコールの可能性があるので気をつけましょう!」

 救急医をやっていると、危険なものを一定量以上とってしまい、体の調子がおかしくなって運ばれてくる中毒の方の診療をすることがあります。そんな中でも「最も危険な液体」がエチレングリコールです。最近は東京で起きた殺人事件で使われニュースになっていますが、救急医の中では有名な中毒物質です。

体内で代謝されると毒物に

 エチレングリコールはアルコールの一種です。0度でも凍らないため自動車のエンジンを冷やすクーラント液としての用途がよく知られています。ポリエステル繊維の原料やグリセリンの代用、耐寒潤滑油などにも使われますが、その他の身近な用途には、生鮮食品などを低温に保つために使う保冷剤があります。現在は高分子ポリマーなどを使ったものが多いです…

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国際医療福祉大医学部救急医学主任教授(同大成田病院救急科部長)

しが・たかし 1975年、埼玉県生まれ。2001年、千葉大学医学部卒業。学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センター救急科部長などを経て20年6月から国際医療福祉大学医学部救急医学教授、21年4月から主任教授(同大成田病院救急科部長)。安全な救急医療体制の構築、国際競争力を産み出す人材育成、ヘルスリテラシーの向上を重視し、日々活動している。「考えるER」(シービーアール、共著)、「実践 シミュレーション教育」(メディカルサイエンスインターナショナル、監修・共著)、「医師人生は初期研修で決まる!って知ってた?」(メディカルサイエンス)など、救急や医学教育関連の著書・論文多数。