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第一印象はいいのに、仕事ができないと評価はガタ落ち 上司や同僚からは嫌われ… ADHDだからこそ突破できたヒミツとは?

光武克・発達障害キャリアカウンセラー

 みなさん、こんにちは。

 光武です。

 寒さが急に本格化し、年々秋を感じにくくなっているなと感じます。

 急激な気温の変化は、季節性うつと呼ばれる疾患を併発しやすい発達障害者は注意が必要です。

 今日はそんな気温の変化を通じて自分の特性に気付いた増田さん(仮名)のお話をしたいと思います。

ある介護士から寄せられた相談

 増田さんが僕に相談してきたのは、3年ほど前の11月でした。

 新型コロナウイルス禍が深刻な時期と重なり、オンラインでお話を聞くこととなりました。

 当時の増田さんは介護士をしており、老人ホームで勤務していましたが、職場ではかなり苦労しているとのことでした。

 「光武さん、急にこんな形でお話を聞いてくださってありがとうございます」

 「いえいえ、増田さん。ご連絡ありがとうございます。事前に送っていただいていたので、ある程度は状況を把握していますが、よかったら、僕の認識に誤りがあっては困るので、改めてどんなことに困っているのか、教えてもらえますか?」

 「光武さん、分かりました。それじゃあ、状況から説明します。高校を卒業した後、なんとなく専門学校に通って、介護士になりました。理由は、なんとなくで、正直言えば、何も考えていなかったという感じです」

 「なるほど。続けてください」

 「実は介護士って結構好きな仕事で、やりがいもそれなりにあったんですね。もちろん給与や待遇に関してはちょっと違うなって思う部分もあったんですけど……」

 「エッセンシャルワーカーではあるものの、どうしても待遇面では業界構造的にジレンマを抱えやすいですよね」

 「そうなんです。で、ある施設で働いていたんですけど、入居されていらっしゃる方からは、『増田さんって本当に真面目でいい人』って言ってもらえるんですけど、一緒に働く上司や同僚からは嫌われることが多かったんです」

 「少しきなくささが出てきましたね」

 「そうなんです。で、嫌がらせってわけではないんですが、必要なコミュニケーションを無視されるなどして、正直職場に行くのが精神的にきつくなってきてて、転職をすべきなのか、どうしたらいいのか分からないって状況です」

 「それはかなりしんどい状況でしたね」

 画面に悲痛な面持ちでうなだれる増田さん。

 その声は少し震えており、必死に冷静さを保とうとしているのが見て取れました。

「擬態」でうまく切り抜けたのに…

 注意欠陥多動性障害(ADHD)の特性を持つ人がぶつかる問題として、第一印象だけ異常にいいという問題があります。なんとかヤバい特性を隠しつつ、擬態することでうまく切り抜けてきたADHDは、短期決戦(たとえば面接など)だけはとてもいい印象を持たれてしまうのです。

 このジレンマは僕もずっと持ち続けており、どんなに仕事ができない、ポンコツであると言っても、「冗談である」とか、「謙遜するな」というようにしか周囲に捉えられず、実際に仕事のできなさが露見した瞬間、評価がガタ落ちするという経験を多くのADHDが経験しています。もはやADHDの通過儀礼といっても差し支えないと、僕は思っています。

 なぜこうしたギャップが生まれてしまうのか。

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発達障害キャリアカウンセラー

1985年、佐賀県出身。上智大学文学部中退後、フリーの予備校講師として活動し、学習参考書や発達障害関連の記事を執筆。障害者雇用を基軸とする人的資本経営の人事・組織コンサルタントを経て、株式会社Speeeにて中途採用リクルーティング業務に従事。2017年に発達障害者のためのバー「The BRATs(ブラッツ)」を東京・渋谷でオープン(現在は東京都内のイベントバーで随時開催中)。店舗のホームページ 光武さんのX(旧ツイッター)アカウント