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玄米、マクロビ、オートミール…… それ、本当に体にいいの? 「健康的な食習慣」が糖質疲労を招く

山田悟・北里大学北里研究所病院院長補佐、糖尿病センター長
 
 

 玄米やマクロビオティック、オートミールなど、「健康的」と思われている食べ物や食事法があまたあります。ところが、糖尿病専門医の山田悟医師は「糖質疲労(食後高血糖)を招き、取り組むことを避けたほうがいいものが多い」と警鐘を鳴らします。

 世間でもたれているイメージとは異なり、体への悪影響が懸念される食べ物や食べ方とは――。詳しく解説してもらいました。【聞き手・倉岡一樹】

日本人にはびこる「黒い食べ物」信仰

 「白米を食べるなら玄米の方が健康にいい」「食パンはだめだけど、ライ麦パンは体にいい」――。

 日本人は「黒い食べ物」に対して健康的なイメージを持つ人が少なくないようです。糖質制限をしている人たちも同じで、もはや「信仰」に近いものすら感じます。

 確かに、これら黒い食品は食物繊維を含んでいますから、精製された真っ白な食品よりはまだ「まし」なのかもしれません。そうした点に着目した食事法が「低GI食」です。

 GIは「グリセミック・インデックス」の略で、同じ量の糖質を摂取した後の血糖値の上昇度合いを、50gのブドウ糖を「100」として相対的に表現した数値です。数値が低いほど、食後の血糖値は緩やかに上昇します。

 とりわけ、日々主食としてお米を食べる日本人に根強いのが、精白されていない玄米を「健康的な食べ物」と見なす風潮です。中には、「玄米は白米より血糖値が上がりにくい」と主張する医師もいます。

 確かに白米の周りについているぬかや胚芽には食物繊維やたんぱく成分が含まれており、血糖上昇を抑制する効果があります。しかし、玄米に占めるぬかや胚芽の比率が白米(胚乳)よりもかなり低いため、血糖上昇のブレーキ作用としては不十分です。

 GIを精力的に研究している、豪シドニー大のジェニー・ブランド・ミラー博士がGI値に関する情報ウェブサイト(https://glycemicindex.com/)を開設しています。ミラー博士は玄米のブランドごとにGI値を調べていますが、白米(コシヒカリ)が89で、玄米(非特定)が87と、大きな差を感じさせません。

 また、別の国際的なGIデータベースでも白米と玄米のGI値に大差はなく、中国産の米(非特定商品)は、白米が83±1、玄米は87±1と玄米のほうが高いです(注1)。ちなみに、日本のお米のデータはありません。

 食物繊維は、糖質と同じ炭水化物に分類されているものの、エネルギー量が少なく、血糖値を上げず、かつ消化を助ける働きもあるため、ダイエットに取り組む人は積極的にとるべき栄養素です。ただ、「食物繊維さえあれば糖質を食べても大丈夫」との「免罪符」にされている側面があるように思います。

 先に紹介した玄米と同様、そばやライ麦パンなどの黒い食べ物に含まれる食物繊維の量は糖質と比べると微々たるもので、ほぼ用をなさないと考えられます。一方、炊いた大麦は水分を含みますから、同じ容積で比較した時には、糖質削減にはつながります。しかし、血糖値は上がりますし、「大麦だから食べても大丈夫」との免罪符にはなり得ません。

マクロビも健康効果に疑問符

 また、炊いた後に冷やした白米は「レジスタント・スターチ(難消化性でんぷん)」が増えるため血糖値を上げにくい、と主張する人もいます。しかし、難消化性でんぷんが含まれる割合も非常に小さいため、「…

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北里大学北里研究所病院院長補佐、糖尿病センター長

1970年生まれ。94年慶応義塾大医学部卒業。同大内科学教室腎臓内分泌代謝研究室などを経て2002年に北里研究所病院へ転じ、07年から糖尿病センター長、24年から同院院長補佐を務める。我慢ばかりを強いるカロリー制限中心の食事療法で、向き合う糖尿病患者の生活の質が低下している現実と直面した。そんな中、食事をおいしく、おなかいっぱい楽しみながら血糖値を穏やかに保ち、肥満者の減量効果にも優れる、緩やかな糖質制限食と出合う。治療に積極的に取り入れるとともに、「ロカボ」と名付けて普及に努め、2013年に「食・楽・健康協会」を設立した。日本糖尿病学会糖尿病専門医。日本糖尿病学会指導医など。主な著書に「カロリー制限の大罪」「糖質制限の真実」「奇跡の美食レストラン」など。慶応義塾大医学部非常勤講師、北里大学薬学部非常勤講師、星薬科大学非常勤講師。