10月に「医者にヨボヨボにされない47の心得」(講談社+α新書)という本を出したら、思った以上に反響がよく、ベストセラーになりそうな勢いだそうだ。
お察しの方もいらっしゃるかもしれないが、この本はミリオンセラーになった近藤誠先生の「医者に殺されない47の心得」という本を目標にして作られた本だ。
近藤先生は若くして亡くなったわけだが、私はもっと高齢の方を普段診ているので生死より、ヨボヨボにならないというニーズが多い気がしたのと、たまたま担当の編集者がかつて近藤先生の担当だったこともあって、この企画が実現した。
「長生きより頭シャキッ」がいい
さて、私自身の人生観も長生きよりヨボヨボにならないことを目標にしている。
たとえば、血圧については薬を飲まないと最高血圧が220mmHgにもなってしまうので薬は飲んでいるが、正常値の140まで下げると頭がフラフラしてしまうので、170くらいでコントロールしている。
長生きができるより、残りの人生(現在64歳である)頭がシャキッとしているほうがいいという考え方のもとである。
88歳にして20億円の株を運用しているデイトレーダーの藤本茂さんと対談する機会があったのだが、240以上の血圧が記録された紙を見せてくれた。藤本さんいわく、「血圧を下げると株の勘がにぶる」とのことだった。
やはり血圧を高くしておいて脳に十分な酸素がいったほうが長生きできない(それでも藤本さんはすでに日本人男性の平均寿命より7歳も長生きしていて、まだまだ死にそうにないくらいお元気だったが)かもしれないが、頭はシャキッとする人の方がずっと多いのは私の長年の臨床経験からも言えることだ。先日も私の本を読んで血圧の薬をやめたら朝勃(だ)ちが復活したと喜んでいた人にお会いした。
血圧高いと元気で自立できる?
最近は100歳まで生きた人の研究が進んでいる。
有名なのは、慶応義塾大学医学部が行った100~108歳の百寿者163人を対象にした研究だ。
対象者のうちの半数以上が高血圧の既往があることがわかったのだが、それ以上に私が注目しているのは、身体的な自立度を調べたところ、最も自立度が高かったのは上の血圧が156~220のグループということだ。認知症の程度も、血圧が高いほうが軽かったのだ。
血圧が高い人のほうが元気で自立できるということだろう。
さらにいうと、血圧が高い人のほうがむしろ100歳まで生きる可能性が高いことも示唆されているのだ。
血糖値について、私は朝の血糖値が300mg/dlを超えた時のみ薬を飲むようにしていて、ヘモグロビン(Hb)a1cという過去1~2カ月の血糖値の平均を反映するとされる数値(5.6%未満が正常とされるが、糖尿病学会では4.6~6.2%を正常としている)については9%までにしようということで、薬や運動量などを決めている。
ただし、食生活については好きなようにしている。
これについては、アメリカの大規模調査で糖尿病の人の血糖値を薬などで下げた場合、7~7.9%がいちばん死亡率が低いことがわかっているのだが、それでも5%以上の人が低血糖の発作を起こしているというデータをみて、車の運転中の低血糖発作を避けるためにもう少し高めでコントロールすることにしている。
ヨボヨボにならないために血圧や血糖値の薬は少なめにしているのだ。
心肥大は薬で抑える
逆にヨボヨボにならないために飲んでいる薬もある。
実は…
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和田秀樹こころと体のクリニック院長
わだ・ひでき 1960年大阪府大阪市生まれ。1985年東京大学医学部卒。同大学医学部付属病院精神神経科、老人科、神経内科で研修したと、国立水戸病院神経内科および救命救急センターレジデントを経て、当時、日本に三つしかなかった高齢者専門の総合病院「浴風会病院」で精神科医として勤務した。東京大学医学部付属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、国際医療福祉大学大学院臨床心理学専攻教授を経て現職。一橋大学・東京医科歯科大学で20年以上にわたって医療経済学の非常勤講師も務めている。また、東日本大震災以降、原発の廃炉作業を行う職員のメンタルヘルスのボランティアと産業医を現在も続けている。主な著書に「70歳が老化の分かれ道」(詩想社新書)、「80歳の壁」「70歳の正解」(いずれも幻冬舎新書)、「『がまん』するから老化する」「老いの品格」(いずれもPHP新書)、「70代で死ぬ人、80代でも元気な人」(マガジンハウス新書)などがある。和田秀樹こころと体のクリニックウェブサイト、有料メルマガ<和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」>



