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「看多機」という介護サービスを知っていますか? 地域で最期まで暮らすための切り札なのに増えない理由

中澤まゆみ・ノンフィクションライター
 
 

 2025年が始まりました。団塊の世代の全員が後期高齢者となる超高齢化時代の幕開けとあって、メディアには「介護崩壊」「介護難民」といった文字が飛び交っています。コロナ以降「最期まで、住み慣れた自宅や地域の施設で暮らしたい」という人は増えました。しかし、その生活を支える介護人材が圧倒的に不足しているため、その願いが実現できるのかという不安も広がっています。

 そんな中、医療・介護・福祉が連携し地域での暮らしを支える「地域包括ケアシステム」を進めるサービスとして国が期待しているのが、自宅への訪問看護と訪問介護、通所介護、そして泊まりの四つのサービスを一つの事業所で利用することができる「看護小規模多機能型居宅介護」(以下:看多機)です。東京都新宿区に24時間365日の医療ケアを行う「坂町ミモザの家」を2015年に立ち上げ10年。訪問看護師の秋山正子さんに、看多機の現状を聞きました。

一つの事業所で「通い」「泊まり」「訪問」と複数のサービスを提供

 「看多機、まだまだ知られていないですね。病院の看護師でも<名前だけは聞いたことがあるけど、どんなことをしているのか知らない>という人が少なくありません」と、秋山さんは残念そうに語ります。

 似たようなサービスに「小規模多機能型居宅介護(以下:小多機)」がありますが、こちらは少し知られてきたかなという程度です。双方ともイメージとしては、小規模なデイサービス。日中そこに通うことを中心に、体調や事情に合わせて泊まることもできるし、ヘルパーの訪問を頼むこともできる。これに訪問看護を加えたのが、看護師が常駐し、医療ケアに対応できる看多機です。両者は名称のわかりにくさもあって、一般の人にはなおさらなじみの薄い、もったいないサービスだと私も思っています。

 二つのサービスの大きな特徴は、複数のサービスを一つの事業所で一括して受けられることです。在宅介護には訪問介護、デイサービス、ショートステイといったさまざまなサービスがあり、通常はケアマネジャーがつくるケアプランに沿ってそれぞれ別の事業所と契約し、サービスを利用します。

 一方、小多機では「通い」「泊まり」「訪問介護」の三つ、看多機では「通い」「泊まり」「訪問介護」「訪問看護」の四つのサービスを一つの事業所で利用することができます。同じ事業所の職員がサービスを提供するので、特に認知症の人には必要な「なじみの関係」をつくりやすいのも特色です。

 しかし、そうした利点があるにもかかわらず、23年のデータでは小多機(06年開始)の事業者数は全国で5523、看多機(12年開始)は994と、制度のスタート時から期待されているほど増えていません。その使い勝手のよさを阻む点が介護や医療の制度の中にあるからです。

便利なのに、使いにくい制度設計

 使い勝手の悪い理由の一つは、これらが「地域密着型」という市区町村が管轄する介護保険サービスだからです(一般の介護保険サービスの事業者は都道府県が指定・監督します)。利用できるのは原則としてそこを住所地とする人という条件があるため、すぐ近くに事業所があるのに、隣町なので利用できなかった、という話も多々あります。秋山さんの運営する「坂町ミモザの家」ではどうしているのでしょうか。

 「ミモザは新宿区ですが、同じ法人の訪問看護ステ…

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ノンフィクションライター

なかざわ・まゆみ 1949年長野県生まれ。雑誌編集者を経てライターに。人物インタビュー、ルポルタージュを書くかたわら、アジア、アフリカ、アメリカに取材。「ユリ―日系二世 NYハーレムに生きる」(文芸春秋)などを出版。その後、自らの介護体験を契機に医療・介護・福祉・高齢者問題にテーマを移す。全国で講演活動を続けるほか、東京都世田谷区でシンポジウムや講座を開催。住民を含めた多職種連携のケアコミュニティ「せたカフェ」主宰。近著に『おひとりさまでも最期まで在宅』『人生100年時代の医療・介護サバイバル』(いずれも築地書館)、共著『認知症に備える』(自由国民社)など。