「介護の沙汰はケアマネ次第」――。突然やってくる介護がうまくいくかどうかは、選んだケアマネジャー(介護支援専門員)の良しあしにかかっている、といっても過言ではありません。しかし、在宅生活を支えるケアマネジャーも深刻な人手不足に陥っています。その原因となる問題も山積みです。知っているようで知らないケアマネジャーの仕事。多岐にわたる仕事の内容と、それを取り巻く数々の問題を、ケアマネ歴20年のベテラン、小島操さん(東京都内居宅支援事業所勤務)に聞きました。
ケアマネのなり手がいない
介護保険のサービスは要介護度に応じて支給限度額が決まっていて、どのサービスをいつどれだけ利用するかについては、ケアプランを作成することになっています。その際、相談に応じたり、プランを代わって作成し、サービス事業者や医療機関、行政などとの連絡や調整をしたりしてくれるのがケアマネジャーです。
ケアマネジャーの数は2022年度、全国で18万3278人、居宅介護支援事業所(ケアマネ事業所)は4万3035カ所(※1)。厚生労働省のシミュレーションでは、高齢者が増加するため、25年度までに約2万7000人、40年度までに約8万3000人の上積みが必要とされています。しかし、その人数は18年度をピークに減少に転じたまま、年々、少なくなっているのが現状です(※2)。
「ケアマネジャーが足りないのは、なり手がいないからです。ケアマネ試験の受験者も半減しています。なぜかというと、まず報酬が低い。毎年の昇給がある事業所は少なく、資金繰りが困難なため、どこも節約を重ねながら運営しています。例えばケアマネが7人いる私の事業所では、ガスストーブをつけるのは12~3月の4カ月だけ。そこでガスの契約を一旦切ります。そうすれば基本料金も節約できる。お茶を飲む時は、電気ポットでお湯を沸かしています」
人件費が経費の9割以上を占めるため、この物価高騰のおり、そこまでやらないと事業所が立ち行かないと、小島さんは苦笑しました。というのは、小島さんが勤務するのは居宅介護支援(ケアマネ業務)だけを行っている単体事業所。ヘルパーステーションなどほかの介護サービス部門がないため、国からケアプラン作成の報酬として支給される費用だけが事業所の収入源です。在宅介護の分野ではこうした単体の小規模な事業所が多く、どこでも運営に苦労しているといいます。
「ケアプラン作成の報酬は介護度に応じ決まっていて、東京都の場合、要介護1~2が1万2380円、要介護3~5が1万6085円で、ここに加算がつきます。要支援は自治体によって多少違って4000~5000円程度。利用者を増やせば利益も上がりますが、ちゃんとやろうと思うと多くは担当できません。薄利多売のような仕事はしたくないので、私自身は30件くらいがちょうどいいかなと。でも、そうすると手取りが少なくなってしまいます。今回の介護報酬改定で、ケアマネジャーには処遇改善加算がつかなかったので、介護職員の手取り額のほうが高いという状況も出てきました」
ケアプラン作成は体力勝負
ケアプランというのは要支援・要介護認定を受けた人が、適切な介護保険サービスを利用して、できるだけ自立して生活を送るようにするために必要な「介護の計画書」です。利用者の心身の状況や生活環境、さまざまな課題やニーズに合わせ、ケアマネジャーが作成しています。
「ケアプラン作成」と一口にいわれますが、実際には面談や訪問調査を行い、利用者の心身状況や生活環境、課題やニーズに合わせてサービスを組み立て、関係機関と連携して本人に合ったサービスとマッチングさせることも必要です。サービス開始後も経過観察を行って評価と見直しを行い、さらに本人や家族の相談に乗るなど、多くの仕事が含まれています。
「ケアマネジャーの人材不足の原因には、報酬の安さに加えて、仕事の煩雑さ、制度理解の難しさ、算定の複雑さ、書類の多さもあると思います」と、小島さん。ケアマネジャーはヘルパーと同じように高齢化が進んでいるため、業務負担の多さに体力が追い付かず、音をあげてしま…
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