「インスリンを打ったらもう終わり。絶対に打つのはイヤです!」
「先生の説明には納得しているつもりですが……。妻がインスリン治療はどうしてもダメだって言ってきかないんで」
糖尿病を専門に診ている医師は多かれ少なかれ、これと似たことを患者さんに言われた経験があるといいます。症状の進んでいる糖尿病の患者さんにとって、インスリンはまさに“命綱”そのものです。では、一体なぜ患者さんとご家族の間で、インスリン注射のこうした忌避が起こるのでしょうか。
インスリンとは
「一体、誰が『最後の治療』だと言い始めたんだ!」――。先日もある医師が、インスリン治療をめぐる誤解をこう言って嘆いていていました。
インスリンはホルモンの一種で、血糖値を下げる働きがあります。では、インスリンは血糖値をどうして下げることができるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
生きていくうえで栄養を取ることは不可欠で、そのために私たちは食事をします。食べた物は胃で消化され、エネルギーの源であるブドウ糖といった栄養素が小腸で血管の中に吸収されます。そのため、食事をした後は血液中のブドウ糖の値(血糖値)が上昇します。
そもそも人間は、血中のブドウ糖の値が一定に保たれるようにできています。体の細胞はブドウ糖などを主なエネルギー源にして生きています。つまり、ブドウ糖がなければ生きていけないのです。
もちろん、食べ物の種類や食べ方などによって、血中に取り込まれるブドウ糖の量が変動します。そこで登場するのがインスリンです。
食後に血糖値が上がると、膵臓(すいぞう)から大量のインスリンがまず分泌されます。そして、そのインスリンが肝臓の細胞の中にブドウ糖を押し込んでくれるのです。また、肝臓で取り込まれなかったブドウ糖は、今度は筋肉の細胞に取り込まれます。この時もインスリンが活躍し、細胞内に押し込んでくれます。だから、インスリンがあると血糖値が下がるのです。
早期に打てば治療の“卒業”も
インスリンは、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる場所にある「β細胞」によって作られます。このβ細胞は年齢とともにその能力が落ちていきます。そのピークはだいたい10歳くらい。そこから徐々に低下していきます。脂質が多すぎるなど食事の仕方がよろしくなかったり、アルコールを飲み過ぎてしまっていたり、運動をしなかったりすると、能力が低下するスピードが通常よりも早まります。そして、能力が50%くらいまで落ち込むと、…
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