健康力は大切な人を守ります。それがなければ、危険な目に遭わせたり、自分も大変な目に遭ってしまったりするかもしれません。2022年4月の記事で、新型コロナウイルスに感染した母親を気遣ってスポーツ飲料を与え、重症の高血糖となり入院させてしまったケースをご紹介しました。このように、身内や隣人の親切心や助言が、とんでもないトラブルを引き起こすことを、みなさんが想像する以上に医療の現場で目にします。今回、いくつかの患者さんのケースをご紹介しつつ、健康力の大切さを改めてお伝えします。
寝たきりの母親におもち
ある日の診察室での出来事です。患者さんからこう告げられました。
「母におもちを食べさせていたら、自分も食べてしまって……。体重が3kgも増え、血糖値が悪くなりました。正月前の診察で、先生、言ってくれましたよね、おもちは自分が思っている以上に血糖値が上がるから気をつけて食べてね、って」
「ちょっと待ってください!」
あわてて患者さんの話を止めました。
自分自身がおもちを食べてしまい、血糖値も上がり、肥満傾向だったのにさらに太ってしまったことは、もちろん患者さんご本人が注意すべきことです。しかし、もっと大事なことがあることに気づいていただく必要があります。
「お母さんと一緒に住んでいるんですよね。お母さんのこと、もう少しおうかがいしてもいいですか」
患者さんはこう続けました。
「はい。母は85歳だったかな。歩けなくて、座っていることもできないので、今は寝たきりで、介護が必要なんですよ。その母の世話を僕がしているんですが、全然食べてくれなくて……。どんどん痩せていくから、おもちはカロリーをとるのに便利だし、母も好きなので、毎食おもちだけ食べさせています。食卓に置いておけば、どんどん食べてくれるんです。だから自分も、用意したおもちを一緒に食べていました」
高齢者の場合、…
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