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「そんな薬やめとけ!」 命の危険にさらす無責任な助言からわが身を守るには?

金子至寿佳・日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長
 
 

 健康力は大切な人を守ります。それがなければ、危険な目に遭わせたり、自分も大変な目に遭ってしまったりするかもしれません。2022年4月の記事で、新型コロナウイルスに感染した母親を気遣ってスポーツ飲料を与え、重症の高血糖となり入院させてしまったケースをご紹介しました。このように、身内や隣人の親切心や助言が、とんでもないトラブルを引き起こすことを、みなさんが想像する以上に医療の現場で目にします。今回、いくつかの患者さんのケースをご紹介しつつ、健康力の大切さを改めてお伝えします。

寝たきりの母親におもち

 ある日の診察室での出来事です。患者さんからこう告げられました。

 「母におもちを食べさせていたら、自分も食べてしまって……。体重が3kgも増え、血糖値が悪くなりました。正月前の診察で、先生、言ってくれましたよね、おもちは自分が思っている以上に血糖値が上がるから気をつけて食べてね、って」

 「ちょっと待ってください!」

 あわてて患者さんの話を止めました。

 自分自身がおもちを食べてしまい、血糖値も上がり、肥満傾向だったのにさらに太ってしまったことは、もちろん患者さんご本人が注意すべきことです。しかし、もっと大事なことがあることに気づいていただく必要があります。

 「お母さんと一緒に住んでいるんですよね。お母さんのこと、もう少しおうかがいしてもいいですか」

 患者さんはこう続けました。

 「はい。母は85歳だったかな。歩けなくて、座っていることもできないので、今は寝たきりで、介護が必要なんですよ。その母の世話を僕がしているんですが、全然食べてくれなくて……。どんどん痩せていくから、おもちはカロリーをとるのに便利だし、母も好きなので、毎食おもちだけ食べさせています。食卓に置いておけば、どんどん食べてくれるんです。だから自分も、用意したおもちを一緒に食べていました」

 高齢者の場合、…

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日本赤十字社 和歌山医療センター 糖尿病・内分泌内科部長

かねこ・しずか 三重県出身。医学博士。糖尿病医療に長く携わる。日本糖尿病学会がまとめた「第4次 対糖尿病5カ年計画」の作成委員も務めた。日本内科学会認定医及び内科専門医・指導医、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医・指導医、日本内分泌学会認定内分泌代謝科専門医・指導医、日本老年病学会認定老年病専門医・指導医。インスリンやインクレチン治療薬研究に関する論文を多数執筆。2010年ごろから、糖尿病診療のかたわら子どもへの健康教育の充実を目指す活動を始め、2015年からは小中学校で出前授業や大人向けの健康講座を展開している。