生活保護基準の引き下げ違法と「生活保護費の遡及支給」

稲葉剛・立教大学大学院社会デザイン研究科客員教授
東大阪市の職員から追加支給の決定通知書を受け取る山内一茂さん(右)と上野眞治さん=東大阪市で2026年3月6日、塩路佳子撮影
東大阪市の職員から追加支給の決定通知書を受け取る山内一茂さん(右)と上野眞治さん=東大阪市で2026年3月6日、塩路佳子撮影

 声をあげてきた人たちにとっては到底、納得がいく内容ではなかったが、歴史的に見れば、日本の社会保障の歴史で初めてであり、他国でも前例のない「生活保護費の遡及(そきゅう)支給」が始まった。

 2013年から15年にかけて政府が実施した生活保護基準の引き下げを違法とした最高裁判決を受け、厚生労働省は今年2月20日、減額分の一部補償を3月に始めるとの告示を出した。

 13年からの過去最大の生活保護基準引き下げをめぐっては、全国の生活保護利用者が減額処分の取り消しなどを求める行政訴訟を提起。「いのちのとりで裁判」と呼ばれた一連の訴訟は、昨年6月27日、最高裁が大阪と愛知の訴訟について基準引き下げを生活保護法違反と認定し、減額処分を取り消す原告勝訴判決を言い渡したことをもって、紛争の全面的解決に向かうはずであった。

 しかし、政府は減額された差額の全額補償を求める原告の声に耳を傾けず、…

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立教大学大学院社会デザイン研究科客員教授

 1969年生まれ。一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。14年まで理事長を務める。14年、つくろい東京ファンドを設立。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『コロナ禍の東京を駆ける』(共編著、岩波書店)など。