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「暗黒」を生き延びる 斎藤幸平さんが語る新しい社会主義の道
2026/4/19 08:00 3586文字「未来が明るいと信じることは難しい」 経済思想家の斎藤幸平さん(39)はそう言い切る。 2020年代、気候変動による文明の危機は、後戻りできない段階に突入したとみる。食糧や資源の生産・供給への影響があらわになり、慢性的に物資が不足する「恒久欠乏経済」に陥るのも時間の問題だという。 重大な局面に立た
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主役は「女流」という文学の鬼 山田詠美さんが抱いた使命感
2026/4/1 13:00 2129文字女流。昭和のある時期まで女性作家たちはそう呼ばれた。 侮蔑的な意味もあり、今や文壇では死語となった。 だが「女流と呼ばれていた時代の人たちが切磋琢磨(せっさたくま)しながら小説を書いてきた事実をなかったことにはできない」と作家の山田詠美さんは言う。 デビュー40周年の節目に発表された新刊『三頭の蝶
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暴力の「突風」しのぐ 特定妊婦支える沖縄のシェルター=清水有香
2026/3/17 06:00 2721文字窓から日の光が降り注ぐ2階建ての一軒家。パステルカラーの壁が部屋を明るくし、庭では桜やシークワーサー、マンゴーの木が季節を彩る。 10代の妊産婦を支援する施設として2021年10月に生まれた沖縄の「おにわ」。教育学が専門の琉球大教授、上間陽子さんが仲間たちと始めたシェルターだ。 ドメスティックバイ
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誰もが誰かにとって陰謀論者? 「置き配的」な社会の息苦しさとは
2026/2/21 05:30 3252文字SNSに息苦しさを感じたことはないだろうか。 「この人はただのネトウヨ」「リベラルは現実が見えていない」 互いをたたき合うSNSの空間では、発言の内容より「ネトウヨ」「リベラル」といったラベルが強い力を持ち、人を引き寄せる。 こうした殺伐としたコミュニケーションのありようを、批評家の福尾匠さん(3
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安保闘争や戦争の記憶描き続け 「時代錯誤」の画家が貫いた批評精神
2026/2/11 13:00 2489文字その人は自ら「アナクロニズム(時代錯誤)の画家」と名乗った。 今年1月8日、93歳で永眠した画家の中村宏さん。絵画は自己表現の場ではなく、精神交流の場である。そう捉え、“オールドメディア”たる絵画の可能性をひたすら追求した。 社会的事件に取材した1950年代の「ルポルタージュ絵画」から、戦争体験を
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トラウマと共に生きる 「等身大の被災者像」が描くもの=清水有香
2026/1/29 06:00 2287文字心的外傷と訳されるトラウマ。強い精神的ショックや苦痛を伴う体験によって発症する。一般的には「治療すべき心の傷」として理解されている。 でも、「トラウマ=傷」という狭いイメージだけでは、とりこぼされる現実があるのではないか。 そんな問いのもとで編まれた1冊の本がある。 関西学院大社会学部の金菱(かね
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「生涯不良」掲げた鶴見俊輔 異能の思想家が抱いた「悪」の自覚
2025/12/27 07:00 2571文字戦後日本を代表する思想家であると同時に、「生涯不良」を掲げた異能の知識人だった鶴見俊輔(1922~2015年)。没後10年を記念したシンポジウムが12月上旬、横浜市の慶応大日吉キャンパスで開かれた。 「日本・中国の個の対話」と題し、日中の研究者・著述家ら9人が参加。「悪」を抱えた思想や「反教育」論
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「生涯不良」掲げた鶴見俊輔 異能の思想家が抱いた「悪」の自覚
2025/12/27 07:00 0文字 -
トランプ政権の母国「民主主義と家父長制の闘い」 ギリガンさんの憂い
2025/12/21 08:00 2784文字勝つか負けるか。 自らの主張を押し通すためなら、力を振りかざして相手を屈服させる。 国際政治が強硬化と先鋭化を深める中、米国の心理学者キャロル・ギリガンさん(89)は言う。 「今日の世界には、『ケアの倫理』の声を沈黙させてはならない強い理由があります」 半世紀前、ギリガンさんが提唱した「ケアの倫理
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まるで地下文書だった「ケアの倫理」 キャロル・ギリガンさんの挑戦
2025/12/20 08:00 2594文字妻が病で死にひんしている。 薬剤師が開発した新薬を使えば助かるかもしれないが、高額で買えない。薬を盗むべきか――。 男の子は「命のほうが大切だから盗む」と即答した。 対して女の子は「薬剤師を説得できないか」「友達からお金を借りられないか」となかなか答えが出せない。 1980年代、米国の心理学者、キ
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老いはなぜ嫌われる?=清水有香
2025/12/8 06:00 2316文字アンチエイジングという言葉が嫌い。 50歳になった小泉今日子さんが女性誌でそう宣言したのは2016年。人気女優の発言は、若さが価値を持つ社会に一石を投じた。 だが、いつまでも若々しくありたいと願うアンチエイジングの思想は根強い。「お若いですね」と言われたなら、それを褒め言葉と受け取る人は多いだろう
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「誠実な」歴史修正とは 研究者が欧米の博物館で見いだしたヒント
2025/12/7 08:00 3946文字「南京大虐殺はなかった」「ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)は作り話」 歴史の修正と聞けば、史実をゆがめる言動が思い浮かぶ。 だが、こうした暴論は歴史の「否定」であり、「修正という行為そのものが問題ではない」と小森真樹・武蔵大教授は語る。なぜなら「本来、歴史を修正する行為は学問の根幹にあるべき営み」と
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自己決定・自己責任のワナ 上野千鶴子さんが懸念する「女女格差」
2025/11/9 08:00 2769文字日本のジェンダーギャップ指数は148カ国中118位で、男女格差は大きい。さらにこの20年で「女女格差」も拡大してきたと社会学者の上野千鶴子さんは懸念する。 背景には何があるのか。 男並みの「強者」を目指して競争を強いる社会の中、「女並みでどこが悪い」と訴えてきた上野さん。1980年代以降の時代の変
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23通目の履歴書で就職 上野千鶴子さん「向かい風の女」と呼ばれて
2025/11/2 11:00 3111文字女並みでどこが悪い。老い衰えて何が悪い――。 フェミニズムは男並みの強者を目指す思想ではない。社会学者の上野千鶴子さん(77)は一貫して「弱者が弱者のまま尊重される」社会づくりを主張してきた。 日本の女性学・ジェンダー研究の第一人者。 97万部のベストセラーになった『おひとりさまの老後』(2007
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福祉現場で起きた性暴力 「当事者性」と向き合うために=清水有香
2025/10/22 06:00 2858文字もし大切な人が暴力の被害者になったら。あるいは加害者になったら。あなたはどうするだろうか。 2020年、アサダワタルさん(46)が職員として勤めていた社会福祉法人で、重大な性暴力・ハラスメント事件が発覚した。被害女性も加害男性も、自身が10年以上親交を深めてきた大切な人だった。 「当事者とは誰か」
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九州で紡がれた女たちのエロス 石牟礼道子らが探った不ぞろいの運動
2025/10/11 07:00 3457文字不ぞろいなままつながる。違うからこそ言葉を交わす――。 そんな個人と集団のありようを模索した女たちがいた。 石牟礼道子、中村きい子、そして森崎和江。 1958年創刊の雑誌「サークル村」に集い、九州で執筆した3人の作家だ。 集団は個を束ねて力を得る一方、「大義」のために同化を強いる。男性中心の社会運
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当事者の声こそ正しい? 同調圧力な現代に必要な「斜め」の視座
2025/9/27 05:00 3098文字「ケア」が注目される時代だ。 子育て、介護、家事――。誰もが誰かに支えられ、そして誰かを支えている。 必要不可欠でありながら軽視されてきたこの概念から、さまざまな事象を再考しようと、文芸誌や美術誌で特集が組まれ、関連書の刊行が相次ぐ。 精神科医、松本卓也さん(41)の新著『斜め論』(筑摩書房)は、
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「うまく話さなきゃいけない幻想」が生む暴力=清水有香
2025/9/16 06:00 2576文字人前ではできるだけ流ちょうにしゃべるべきだ。「えーと」「あのー」なんていうのはもっての外。自分の意見や思いはすらすら語れるほうがいいに決まってる。 世の中には、そんな「うまく話さなきゃいけない幻想」がある。幻想はうまく話せない人に対するいらだちを生み、そのいらだちがうまく話せない人、例えば吃音(き
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「オモロい」に宿るこの世の真実 町田康さんが語る小説と笑い
2025/8/31 11:00 2788文字小説家として何をしているか。町田康さん(63)の答えはズバリ「笑い」だ。 実際、町田さんの小説はオモロい。大阪弁や古文調の語りが絶妙に混じり合い、絶望の中で笑いがうごめく。 ユーモアやウイット、なんてしゃれた言葉じゃ物足りない。悲しみも怒りも憎しみもごった煮の渦である。 渦の底には、生身の人間がい
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参政党躍進の裏にある「歴史の消滅」 與那覇潤さんの憂い=清水有香
2025/8/18 06:00 3322文字歴史が消えた。 あの戦争と今を地続きに捉える感覚はすり切れ、国民が共有してきた物語はなくなった。近現代史が専門の歴史家で、評論家の與那覇潤さん(45)はそう言ってはばからない。 例えば7月の参院選で躍進した参政党のポスター。 「次は私たちの番だ」と大書されたメッセージの横に、徳川家康や西郷隆盛、特
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