専修大で最新画像技術のアクセシビリティーを紹介
デジタルカメラの活用など画像技術の応用研究に取り組む画像電子学会の第52回VMA研究会が2月28日、東京都千代田区の専修大学・神田キャンパスとオンラインで開かれた。画像技術のアクセシビリティー(利用しやすさ)に焦点を当てた当日の研究発表では、専修大の教員、学生らによる研究発表や、4月1日施行の改正障害者差別解消法で民間事業者にも合理的配慮の提供が義務づけられることから、視聴覚障害者らにも使いやすいウェブサイトに求められるアクセシビリティーを取り上げた研究者らの発表などがあった。
「博物館におけるバーチャルツアー開催の現状~一都三県の登録博物館・指定施設を対象としたアンケート調査から~」をテーマに、インターネット上で誰もがどこからでも博物館や美術館を見学できるオンラインサービスの提供について紹介した専修大文学部の石渡桃夏さんと野口武悟さんは、250館中バーチャルツアーを実施しているのが18館にとどまること、実施館では歴史博物館が10館と最も多く、設置主体は公立9館、私立9館で、国立(独立行政法人)は0館だったことや、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降に開始した館が目立ったことなどを紹介した。今後の取り組みについては、アーカイブとして残す意義や学校教育での活用など肯定的な評価があった一方、利用状況が把握できない、入館料の徴収など収益確保が課題などの指摘があった。
「学術研究団体WEBページにおけるアクセシビリティの客観的評価-2024年4月1日に向けて-」を発表した専修大文学部ジャーナリズム学科の飯塚直也さんと植村八潮さんは、日本学術会議協力学術研究団体におけるウェブページを対象に行った代替テキスト(ALT属性)の有無など障害者や多様な環境でウェブにアクセスしている人への対応であるウェブアクセシビリティーの実装状況について紹介した。飯塚さんらによると、半数以上の団体ウェブサイトはアクセシブルデザインを施しており、画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)による音声読み上げにも対応しているという。ただしリンクラベルにALT属性がないために「ボタン」としか読まないサイトは地方自治体サイトなどと共通していることが分かったという。飯塚さんらは「改正法の施行を契機にウェブアクセシビリティーの重要性について社会への周知が望まれる」と訴えた。
一方、障害当事者による支援技術活用事例などが紹介された午後のセッションでは、画像表示用ピンディスプレーの最新動向について記者(岩下)と韓国ドット社のチャーリー・シンさんが、同社が一昨年に開発した世界初のiPad用携帯触覚ディスプレー「Dot Pad(ドットパッド) 320」の可能性について紹介した。ドットパッドは画像表示部300セル(2400ドット)と点字表示部20セル(160ドット)のある触覚画像表示ディスプレー。日本国内で第1号の当事者ユーザーになった記者は、対応アプリのiOS版「Dot Canvas」を介してiPhoneからドットパッド上で図形や活字をかいてリアルタイムに表示できることを紹介。米国では既に学校教育で視覚障害児のドットパッド利用が始まっていることに触れて、活字のハングルなど画数の少ない文字が触って認識しやすいことを説明しながら、これまで難しかった視覚障害者の活字言語教育への効果を強調した。
続いて、オンライン会議ツールの直感的ユーザーインターフェース(UI)をスクリーンリーダーで利用する場合のユーザーの学習コストについて発表した、自身も視覚障害者で中央大社会科学研究所研究員の植村要さんは、スクリーンリーダーを使ってZoomやTeamsなどの会議用ツールを使う場合に、スクリーンリーダーによって用いられるキーボードショートカットコマンドがバラバラで記憶するのが困難な現状を具体例を挙げながら報告した。植村さんは「元々晴眼者がコンピューターの画面を見ながらマウスを動かして操作できるように設計されたツールにキーボードショートカットコマンドをどんどん割り当てていくため、多くのアプリを使いこなす視覚障害者の記憶容量は努力の限界を超えている」と訴えた。
また、植村さんは日本で最も普及しているWindows用スクリーンリーダーの「PC-Talker Neo」(高知システム開発)とオープンソースの「NVDA日本語版」を取り上げて、現在フォーカスが当たっているアクティブウインドーのタイトルを確認するのにPC-TalkerではCONTROL+ALT+1、NVDAではNVDAキー(無変換キーなど)+tが割り当てられているとした。またカーソル位置の文字詳細読みはPC-TalkerがCONTROL+ALT+mで、NVDAではNVDA+ピリオド2回、そしてZoomとTeamsで新たに加わったミュートのオン・オフはZoomがALT+a、TeamsがCONTROL+SHIFT+mなどとなっているという。
植村さんは、スクリーンリーダーやウェブ会議ツールなどアプリごとに、あるいはWiindowsとMACなどOS別に新たなショートカットコマンドを学習しなければならない視覚障害者の現状について、同じ機能を実行するコマンドを全てのスクリーンリーダーやアプリで統一することや、直感的操作を重視するUIに視覚障害者がアクセスできる新たな技術の開発を提案した。
この他、研究会では生成AI技術による画像からのテキスト抽出や、写真の音声解説付与などアクセシビリティーへのAI活用の試みなどが披露され、参加者の注目を集めた。【岩下恭士】