ユニバ・トーク

8月26日 月面ナビ

 宇宙ビジネスへの期待から各国の政府、民間を問わず地球から最も近い月や火星への関心が高まっている。米航空宇宙局(NASA)はアポロ計画から半世紀を経て新たな有人月面着陸ミッションを掲げるアルテミス計画を開始した。2026年に打ち上げる予定のアルテミス3号には、月面着陸では初となる女性と有色人種男性の宇宙飛行士が乗り込み、月面に降り立つ予定という。月の南極には水があると考えられており、将来、人類が月に移住したときに不可欠となる水が十分確保できるか、基地の建設は可能かといった課題を探査するのが目的。

     NASAでは現在、この二人のクルーが約1週間船外活動をするときに、月面から迷わずに月着陸船に戻ったり、重要なポイントをマーキングできるナビシステム「Kinematic Navigation and Cartography Knapsack(KNaCK)」を開発中だ。

     月では地球で私たちが当たり前に使っているスマートフォンのナビアプリは使えない。そもそも全地球測位システム(GPS)が機能しないからだ。そこでNASAは月面の地図情報と、レーザー光を用いて対象物までの距離や位置を測るLiDARを搭載したバックパック形のモバイルセンサーを考案した。

     月面の情報はGoogle Moonで衛星写真を閲覧可能だ。しかし、実際に月面で移動中に使用するとなると、駅や建物などランドマークのない中で、しかも徒歩だけでどれだけ移動範囲を広げられるのか疑問だ。

     このKNaCK、もしも月面で大きな成果を上げられたら、ぜひ地球上でも私のような全盲者のナビ用に使ってみたい。ただし本体約18キロという重量は、月では6分の1の3キロだが、地球上ではそのまま。開発コストも相当なものだろう。しかし、技術協力している企業にとっても、宇宙旅行用というまだまだ汎用(はんよう)にはほど遠い目的だけでなく、地球上で普及させることができればおいしいビジネスになるかもしれない。

     ご存じのように、世の中には電話やタイプライターのように元々障害者用に開発された支援技術からみんなが使う汎用製品になっているものがある。汎用になれば、コストも市民が購入できるレベルまで下がるはずだ。

     昼は110度、夜はマイナス170度という過酷な月の温度環境下で問題なく機能する技術となれば、地球上ではかなり頑丈な製品として使えそう。2年後の月面探査に期待したい。【岩下恭士】