ユニバ・トーク

11月5日 ピラミッドの響き

 ジャズフルート奏者のポール・ホーンが1977年にリリースしたレコード「Inside the great pyramid(ピラミッドの響き)」ではエジプト・ギザの大ピラミッドの中で即興演奏した珍しいフルートの響きを聴くことができる。ピラミッド研究に興味があるアマチュアのフルート吹きとしてはぜひとも聴いてみたくて、中古でも手に入らないかCDを探してみたが、そもそもレコードが廃版になっているらしく見当たらない。諦めかけていたら、アップルがネット配信している高音質音源再生サービスのロスレスオーディオで提供されているのを発見した。

     早速ワクワクしながらiPhoneの再生ボタンをタップすると、まずアルトフルートとチューナーの音が聞こえてきた。ピッチは一般的にオーケストラのチューニングに使う基準音のラに限りなく近いように感じたが、ネットで説明を読むと438ヘルツという。ラ(A)の音といえば440ヘルツが圧倒的に多いのでやや低い。ちなみにNHK交響楽団など一部のオーケストラでは442ヘルツを基準にしているらしいが、ピッチが高いほど響きは明るくなる。王の間のグラニットボックス(花こう岩のひつぎか?)が共鳴した438ヘルツはややくぐもった響きになるので、低音域が鳴りやすいアルトフルートにはピッタリかもしれない。

     アルバムに収録された曲の中にはスタンダードなC管フルートやピッコロなど高音域の楽器演奏も聴かれたが、王の間の響きがはっきり感じ取れたのはやはりアルトフルートだった。笛一本で奏でる単旋律にもかかわらず、前の音が残響として響き続けるために、たとえばド・ミ・ソなどの上行音階がハーモニーとなって、まるでアンサンブルのように聞こえてくるから不思議だ。いつまでも長く遠くまで響き渡る音空間は無限の宇宙にまで飛んでいきそうな広がりを感じさせる。

     機械工学の専門家で古代遺跡の調査を行っている米国の研究者、クリストファー・ダン氏は、ギザの大ピラミッドは巨大な音響エネルギー発生装置だったと主張する。クフ王のミイラや供物の全く見つかっていない王の間や女王の間は、音響発生装置または増幅装置として設けられたもので、その音響波動は地下の水脈まで伝わって水素エネルギーを発生させると彼は説明する。ピラミッドをファラオの王墓と考える考古学の定説を根底から覆すこの説、実はエジソンのライバルだった発明家、ニコラ・テスラも唱えていた。ホーンのフルートを聴いていると、ピラミッドの中からも訴えかけてくるようだ。【岩下恭士】