連載
わたしの気持ち
読者の皆様からの投稿欄「わたしの気持ち」。「女の気持ち」「男の気持ち」とともに出来事や悩みなど「時代の心」を映しています。
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国語辞典 奈良県天理市・加藤康子(無職・65歳)
2026/5/6 05:06 553文字この春、私は新しく国語辞典を買った。三省堂第8版。明るいキャロットオレンジの外装は春の陽光を思わせる。 昨年の夏、小さなワンルームに転居を決め、2週間で荷物をまとめることとなった。それまでの居住空間からはかなりのダウンサイジングとなるため、搬出できるものは限られる。特に衣類や書籍は思い切った処分が
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投資の相談 山口県山陽小野田市・大田遼(会社員・30歳)
2026/5/6 05:05 556文字3カ月ぶりに実家に帰ると、来年還暦の父からNISA(少額投資非課税制度)を始めたいが、どう思うか。積み立てではなく成長投資枠の方で考えているけどどうか、と相談を受けた。動機を聞くと、今後の更なるインフレを少しでも緩和したいからとのこと。大きな利益が欲しいのではなく、少額投資で年利は3~4%で良いと
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咲きました 仙台市宮城野区・三本松拓(公務員・58歳)
2026/5/6 02:00 551文字近所にたくさんの鉢植えを並べている家があった。夏の朝には年配の男性が1人で手入れしているのを通勤途中にときどき見かけた。花を知らない私は、きれいだなと思うだけで通り過ぎていた。 昨年の冬、残業帰りの深夜に通りかかると、鉢植えが玄関前の敷地にすべて集められていた。手書きの貼り紙があり、暗がりで透かし
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瞬間の幸せ 北九州市八幡東区・今崎多美子(パート・64歳)
2026/5/5 05:04 557文字私のお気に入りの鉄道系ユーチューバーさんがよく使う言葉に「瞬間最大幸福度を大切に」というのがある。やがて消えてなくなったり忘れてしまったりしても、その瞬間の感動が大きいことに何より意義があるというものだ。 2月に94歳の誕生日を迎えた母は、歩行にやや難があること以外はいたって元気だが、とにかく物忘
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5月の風 北九州市小倉南区・山口敬司(73歳)
2026/5/2 05:01 563文字近くの公園を歩く。木々の新緑がまぶしいように光る。目を転じれば遠近の山々が、クスノキだろうか、むっくりと盛り上がって見える。風は薫り、所々の家並みからは、その風をおなかいっぱいに抱くようにしてこいのぼりが高く、高く舞い、泳ぐ。自由、遮ることのない豊かなあふれるような自由がある。 私は風を懐に入れる
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働くって 茨城県阿見町・篠崎直子(無職・59歳)
2026/5/1 02:01 527文字いろいろあり仕事をやめた。まだまだ働くつもりだった。でも、なんだかとても疲れてしまった。 久しぶりに友と外出した。天気がよく、風も心地よい。広い公園で、小高い丘の上から子どもを乗せて歩くポニーが見えた。ふと「ポニーも働いているんだなあ」と思った。 そして、ちょっとポニーの気持ちになった。 「あー、
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おいしい! 大阪市港区・村重和美(無職・70歳)
2026/4/30 05:00 515文字「お好み、食べて行こか」。高校1年だった時の下校時、店の前で誰かが言った。「そうやなあ」と、次々とのれんをくぐって行く。「えっ。寄り道はあかんやん」。私は店に入るのをためらった。 実はもう一つ、ちゅうちょする理由があった。ひどい偏食で、野菜はトマトと芋類くらいしか食べられなかった。そう、キャベツが
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フィリピンの朝 フィリピン・マニラ市・川合進(日本語教師・72歳)
2026/4/30 02:01 512文字日本語教師としてフィリピンに滞在中です。住まいのある地区から授業をする地区までLRTという電車を使って通っています。 私が降りるヒルプヤット駅は、各方面へのバスセンターがあり、フィリピンの代表的な乗り物であるジプニー(小型の乗り合いバス)や三輪タクシーが集まっています。 私はここで三輪タクシーに乗
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いとおしい梅 神戸市垂水区・打越茜(看護師・45歳)
2026/4/29 05:03 555文字わが家の冷蔵庫の奥底にずっと入ったままになっている梅酒の梅。梅酒は母が昔くれたものでした。長女を妊娠していた15年ほど前の話です。実家に帰っていた時、「これ持って帰りね」と、うれしそうに持たせてくれた母の顔を覚えています。 正直なところ、私は甘いお酒は飲まないし、「今、妊婦なんだけどなあ」と思いま
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1枚の絵はがき 宮崎市・堀柾子(80歳)
2026/4/29 05:03 558文字小学校教師だった8年間で、一度だけ卒業生を送った。彼らと交流が続き、節目ごとに同窓会が開かれる。 私の還暦祝いの時、A君が傍らに来て絵はがきを見せた。「覚えていますか?」「覚えているよお」。ブリューゲル作「雪中の狩人」の絵だった。それは彼らの担任だった時、福岡市の絵画鑑賞研究公開授業で、高学年の部
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教職回顧 佐賀県唐津市・鬼木重代(90歳)
2026/4/22 05:02 558文字半世紀以上も昔、教職に身を置いていた。現在の教育現場のことは分からないが、3月6日の本紙1面トップ記事「教員不足」を、何ともわびしく悲しい思いで読んだ。 初任校は1学年が1クラス50人以上で4クラスもあり、1日8時間労働とは名ばかり。毎日テストや作文の持ち帰りと教材研究など、家での残業が夜遅くまで
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社会人を育てる 埼玉県坂戸市・秋庭緑(塾講師・46歳)
2026/4/22 02:01 555文字かつての上司の姿をニュースで見た。熊本地震の遺族代表としてスピーチしていた。私が彼女に出会ったのは四半世紀前なので、もちろん年齢を重ねて髪の色や姿に変化はある。それでも、はつらつとした面影やりんとしたたたずまいは変わりなかった。考えてみると今、私は当時の彼女の年齢だ。 大学を卒業したての私は何も知
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ありふれた話 山口県下関市・豊崎香穂理(家業手伝い・57歳)
2026/4/21 05:03 552文字私が中学1年の頃の話だ。音楽の授業は一時中断していた。悪たれ男子にからかわれ、新任の女性教師が応戦していたためだ。手持ち無沙汰だった私は机の上の落書きを読んでいたが、英語のスペルが間違っていることに気づき、訂正することにした。 と、不意に教師が私の名を呼んだ。ビックリして顔を上げると「落書きはやめ
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ジーサンズ 福岡県直方市・宮木慎次郎(73歳)
2026/4/20 05:03 565文字かつて魁皇という力士がいたが、私はむしろその弟弟子の戦闘竜に感心していた。土俵の片隅で見せる控えめな気配りが絶妙だったのだ。やがて魁皇が大関に昇進し地元が沸き立つ中、私はあえて「戦闘竜の功」と新聞に投稿した。すると「まったく同感」と一通の手紙が舞い込んだ。これが30年近い付き合いとなるM氏である。
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脳トレ川柳 山口県防府市・道岡加津子(パート・59歳)
2026/4/19 05:03 544文字本紙3月8日の「脳トレ川柳」に掲載されていた最初の句を読んで大いに共感した。「記憶力2人あわせて思い出す」とは、まさに最近の私たち夫婦そのものである。 人の名前は「あれよ、あの人、あの人よ」という状態から、お互いに情報を引っ張り出し合って何とか導き出す。間違い探しの問題も1人ではすべて見つけきれず
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60年ぶりの卒業 福島市・西郷和子(主婦・82歳)
2026/4/18 02:08 543文字3月14日、60年ぶりに自分自身2度目の大学卒業式に出席した。4年前、京都にある大学の通信教育部3年に編入。日本文化や歴史遺産の勉強をし、2枚目の大学卒業証書をゲットしたのだ。 ズームを使った遠隔授業のほかに、キャンパスでのスクーリングにも出席した。拡大鏡を使って国史大辞典や漢和辞典をひき、資料を
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思い出 札幌市豊平区・打方栄子(主婦・96歳)
2026/4/15 02:01 539文字私が5歳ぐらいのときだったでしょうか。「日本勝った 日本勝った ロッシャ負けた」という歌を覚え、大声で叫びながら跳びはねていました。当時は満州事変などもあり、日本が他国に攻め入っていたのです。 小学3年生のころ、学校では戦地の兵隊さんへ手紙を書いて、慰問袋で送りました。「兵隊さんが心配するようなこ
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初めての卒園式 奈良市・渡辺妙子(無職・80歳)
2026/4/14 05:02 556文字かい君、だん君、ご卒園おめでとう。平城宮跡の北側に広がる佐紀盾列(さきたたなみ)古墳群の一画で空き家になっていた民家を借り、「うみの森ほいくえん」が動き出して3年。初めての卒園式があった。 ここは自然のままの森の中に40戸ほどの民家が点在する特別風致地区。高齢化が著しく、長く子供たちのにぎやかな声
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先生の訃報 長崎県佐世保市・木村輝子(主婦・81歳)
2026/4/14 05:02 543文字50年近く家族でお世話になってきた、かかりつけ医の先生が、突然亡くなられた。享年78。私が最後に診察を受けてから1カ月後の訃報に信じられない思いだった。真面目で口数の少ない、寡黙なタイプの先生だった。 私が65歳の時、市の健康診断で要再検査となり、大腸内視鏡検査を嫌がる私に「実は僕も大腸がんで先日
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初めての電報 佐賀市・豊岡ひかり(高校生・17歳)
2026/4/8 05:02 539文字ある日、私宛てに電報の不在連絡票がポストに入っていた。電報を受け取るなんて、人生初めてのことで驚いた。連絡票には、送り主が記載されていなかったが、もしやと思い当たる人がいた。 電報という今時珍しい配達物のこじゃれた物を送る人は、あの人しかいないと。祖母の友人であり、何かと気にかけてくれる人だ。祖母
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