連載
憂楽帳
50年以上続く毎日新聞夕刊社会面掲載のコラム。編集局の副部長クラスが交代で執筆。記者個人の身近なテーマを取り上げます。
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未来に挑戦する街
2026/5/1 13:07 457文字JR御殿場線岩波駅(静岡県裾野市)のホームに降り立つと真新しいマンションなどの建物群が見える。歩いて15分ほどでトヨタ自動車が建設した「ウーブン・シティ」に到着した。 2025年9月開業の「フェーズ1」エリアは東京ドームとほぼ同じ広さ(約4万7000平方メートル)で、実験施設などが建ち並ぶ。箱根駅
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55回目の米作り
2026/4/30 13:08 467文字熊本、鹿児島と県境で接し、霧島連山を望む宮崎県えびの市では田植えの準備に入った。市内で主食用米を16ヘクタールで栽培する本坊農園を営む本坊照夫さん(75)が4月中旬に種もみをまいた苗床では今、芽立ち始めた。 「去年の米価が高すぎたから下がる予想はしているが、どうなることやら」。一方で、上がりそうな
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出世魚
2026/4/28 13:16 432文字ブリ、お茶、牛肉――。鹿児島県が米国に輸出する主力産品のトップ3だ。4月中旬、塩田康一知事が米首都ワシントンを訪れ、トップセールスを展開した。県産農林水産物の輸出総額は約471億円(2024年度)。そのほぼ半分を米国向けが占める。中でもブリは、他を大きく引き離す稼ぎ頭だという。 米国ではすしブーム
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五感に訴える
2026/4/27 13:06 445文字長崎市の長崎原爆資料館で29日から、ラムネ飲料が販売される。企画したのは九州産業大の教授、伊藤敬生さん(63)。商品名は「ヘイワノラムネ」という。長崎の飲料卸売会社「古田勝吉商店」などと連携し、進めてきた。 社会課題解決のためのソーシャルデザインが専門の伊藤さんは被爆3世。戦禍の記憶が遠のく中、五
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代々木の踏切
2026/4/24 13:33 440文字東京・代々木駅近くの「青山街道踏切」は埼京線や湘南新宿ライン、りんかい線などが通過し、すぐそばの高架を山手線が走行する。別路線の列車を一枚の写真に収められることから、訪日外国人にも人気のスポットとなっている。 近くでかばん店を営む木内俊行さん(61)によると、踏切はSNSを通じて知られるようになり
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ある母親の便り
2026/4/23 13:01 459文字どんな方が聴いてくださっているのだろう? 毎日新聞ポッドキャストのMCの一員として、ニュース解説や取材の裏側を音声で伝えている。感想が届くとリスナーの存在を感じてうれしい。ただ、そのお便りは痛みに満ちていた。 3月27日配信「母親はなぜ追い詰められたのか 障害児殺害事件を追って」。母親が障害児を殺
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自慢にならない
2026/4/22 13:33 481文字奈良市にある自宅から世界遺産・唐招提寺の南大門まで、370歩ほどで到着する。 そんなご近所さんといえる名刹(めいさつ)で、毎年5月19日にあるのが「うちわまき」。鎌倉時代を起源とする伝統行事で、病魔退散、魔よけの御利益があるという「宝扇(ほうせん)」(うちわ)が宙を舞う。だが、その争奪戦を繰り広げ
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来たれ小学生
2026/4/21 13:08 457文字ここ数年、男子バレーボールのブームが続いている。流れに乗り、各選手が個人のファンクラブを設立しているが、対象は「バレーを見る」層の成人女性が中心だ。その中で、2024年パリ・オリンピック代表のセッター関田誠大選手(32)=サントリー=は「バレーをする」層も意識し、競技の普及に力を入れている。 そも
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選択的別姓、自民議員の啖呵
2026/4/20 13:13 464文字高市早苗首相が慎重姿勢を示す「選択的夫婦別姓」だが、自民党内にも推進派はいる。衆院選で毎日新聞が実施したアンケートでも、小泉進次郎防衛相や河野太郎元外相らが「賛成」と回答した。ただ、実現に向け法案提出などを仕掛ける野党と比べ、積極的な動きは見られない。 ある推進派議員は、地元弁護士との会合で、自民
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生と死と祖父の蓄音機 /新潟
2026/4/19 05:01 457文字重厚なローズウッドをぜいたくに使った1970年代の英国製スピーカー。「バイタ・ボックス」(命の声)というメーカー名通り、ピアノトリオでもビッグバンドでも、レコードをかけてもらうと生演奏のような迫力だ。 新潟市の喫茶店「ジャズ・フラッシュ」の店内の左右に配置され、独特の存在感を示す。持ち主は店主の佐
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生と死と祖父の蓄音機
2026/4/17 13:01 454文字重厚なローズウッドをぜいたくに使った1970年代の英国製スピーカー。「バイタ・ボックス」(命の声)というメーカー名通り、ピアノトリオでもビッグバンドでも、レコードをかけてもらうと生演奏のような迫力だ。 新潟市の喫茶店「ジャズ・フラッシュ」の店内の左右に配置され、独特の存在感を示す。持ち主は店主の佐
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タクシードライバー
2026/4/16 13:00 469文字ほろ酔いで最終列車に間に合ったはいいが、寝過ごした。慌てて降りたのは無人駅。途方に暮れていると運良くタクシーが通りかかった。 ドライバーは70代とおぼしき男性。行き先として自宅近くの神社を伝えると「寝過ごしましたね」と同情するように笑った。二十数キロ先の小さな神社だ。知っていることに驚くと「30年
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「必要を言うな」
2026/4/15 13:00 436文字10年前にオーケストラの生演奏を聴いた時、音の圧力と空気の振動が客席まで伝わり、身震いした。以来、ホールでクラシック音楽を聴くのが楽しみになったが、仕事に追われていつしかそんな余裕はなくなった。 今月、近所で弦楽合奏の演奏会があると知り、久しぶりに出かけた。豊かな響きに包まれるような安心感があり、
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成功の「3.5%ルール」
2026/4/14 13:09 452文字3月下旬、米首都ワシントンなどでトランプ米大統領に抗議する大規模デモ「ノー・キングス(王様はいらない)」が行われた。イラン攻撃の停止、強硬な不法移民対策反対、米富豪エプスタイン氏を巡る疑惑解明。人々がプラカードで掲げるメッセージはさまざまだった。 こうした全米規模のデモは昨年から続き、今回で3回目
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男性の暴力の根源
2026/4/13 13:11 449文字やりきれない。なぜ後を絶たないのか。東京・池袋で女性が元交際相手の男性に刺殺された事件。男性は過去にストーカー規制法違反容疑で逮捕されていたことも判明した。 警察庁の統計によると、ストーカーの加害者は8割が男性。昨年の同法違反の検挙は1546件、関連する刑法犯・特別法犯の検挙は2171件と過去最多
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ブーム支える中学生
2026/4/10 13:12 462文字明治の文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)ブームが巻き起こっている静岡県焼津市で、異色の中学生観光ガイドが活躍している。市立東益津中3年の塚本隆介さん(14)は「やいづ観光案内人の会」メンバーとして、八雲ゆかりの名跡に観光客を案内している。 塚本さんは2024年7月に鹿児島県から父親の故郷・焼津
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利右衛門さん
2026/4/9 13:12 457文字桜の咲く日、九州山地に抱かれた宮崎県美郷町に「利右衛門さん」を訪ねた。本名は岩田幸男さん(77)といい、30歳の頃から地域の「地芝居」の座長を務めた。2009年には「サンデー毎日」7月12日号がグラビアで「憂き世を笑い飛ばす『地芝居』 岩田利右衛門一座」と紹介している。コロナ禍で地芝居は引退した。
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功労者のV宣言
2026/4/8 13:09 448文字「サッカーショップKAMO」といえば全国展開するサッカー用品専門店。洗練された店舗のイメージと同様に、創業者の加茂建さん(83)もいわゆるシュッとした人なのだが、サッカーの話となると言葉が熱を帯びてくる。 サッカー一家だった。兄の周さん(86)は日本代表監督を務めた。建さんも関西学院大学から実業団
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視野を広げれば
2026/4/7 13:09 452文字ある日のこと、バレーボールSVリーグ男子の東京グレートベアーズ(GB)の試合に行くと、「バレーはもうしない」と言っていたはずの彼に会い、驚いた。日本代表選手を輩出する強豪・早稲田大男子バレー部出身の山上優太さん(23)。しかし、彼は選手ではない。設営や物販などを行う運営スタッフだ。 大学での役割も
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愛嬌と強情
2026/4/6 13:01 440文字「あら、ええなあ、それ。どこでやったん?」 8年ほど前、国会内の一室であった会合後、衆院議院運営委員長に就任したばかりの高市早苗氏が、取材のために集まった記者団のうち、ひとりの指先に目をやった。どうやら記者のネイルが目に留まったようで、堅苦しくなりがちな場がなごんだ。 初の女性首相となり、その挙動
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