「守る」か「攻める」か 併用もあり? 男性型脱毛症治療薬とつきあう心構え

=ゲッティ
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 前回、男性の加齢に伴う薄毛(男性型脱毛症)について概要を述べました。思春期以降、ジヒドロテストステロンという男性ホルモンの作用により、生え際と頭頂部で薄毛が進行すること、薄毛の進行には個人差があり、それは主に遺伝子レベルで決まってしまっていて、生活習慣の改善で防ぐのは難しいこと、一方で薬を用いた治療で改善することなどを紹介しました。今回は薬を用いた男性型脱毛症治療の実際について紹介します。

内服薬と外用薬 いずれかまたは両方で

 薬は大きく2種類に分けられます。一つは薄毛の原因となるジヒドロテストステロンの産生を抑制する、5α還元酵素阻害薬で、フィナステリド(もしくはデュタステリド)という内服薬があります。

 もう一つは、毛の細胞(正確には毛乳頭細胞)に作用して毛の成長期を長くすることで毛の本数を増やす、ミノキシジル外用薬です。この2種類のいずれか、もしくは両方を用いた治療が一般的です。

現状維持を希望するなら

 薄毛の進行が比較的軽度であったり、年齢相応の毛の量であったりで、現状の毛の量に大きな不満は無いものの、今より薄くなるのは嫌だな、という場合はフィナステリド(もしくはデュタステリド)の内服を勧めます。私たちの体内で機能している男性ホルモンのほとんどはテストステロンというホルモンです。テストステロンは精巣で産生されます。このテストステロンのごく一部が、5α還元酵素という酵素によってジヒドロテストステロンというホルモンに代謝されますが、これが薄毛を進行させる原因のホルモンです。

 フィナステリド(もしくはデュタステリド)は、5α還元酵素の働きを阻害する薬剤です。5α還元酵素を阻害することで、テストステロンからジヒドロテストステロンへの代謝が抑えられ、薄毛の原因ホルモンが減少することで、薄毛の進行を食い止めることが可能になります。男性ホルモンの中で主要な働きをするものはテストステロンですが、テストステロンを減らしたり、弱めたりする薬ではありません。この薬単独で発毛する(毛が太くなることと、毛の本数が増加することとで毛の量が増える)こともあります。5α還元酵素にはⅠ型・Ⅱ型の2タイプあり、フィナステリドはⅡ型のみ、デュタステリドはⅠ型・Ⅱ型の両方に作用します。男性の薄毛で重要になるのはⅡ型と考えられていますが、デュタステリドの方がフィナステリドよりも強力にⅡ型を阻害します。

5α還元酵素の働きを阻害薬が抑えることにより、薄毛を進行させるジヒドロテストステロンの産生を防ぐことができる
5α還元酵素の働きを阻害薬が抑えることにより、薄毛を進行させるジヒドロテストステロンの産生を防ぐことができる

髪の毛を太くし本数を増やしたい場合は

 薄毛の進行がある程度顕著で、現状の毛の量に不満があり、毛の量を増やしたい場合は、ミノキシジル外用薬を勧めます。

 1本の頭髪の一生は、2年から5年かけて成長する時期(成長期)、やがて根元の細胞が萎縮する時期(退行期と呼び2、3週間)、抜け落ちるまで頭皮にとどまる時期(休止期と呼び2、3カ月)――の大きく三つの時期で成り立っています。

 休止期を経て、頭髪が抜け落ちると、やがて同じ所から新しい毛が生えてきて、同じ運命を繰り返します。これを毛周期と言います。この毛周期を調整しているのが頭皮に存在する毛乳頭細胞です。ミノキシジル外用薬は、頭皮の毛乳頭細胞に存在するATP感受性カリウムチャネルを開口し、毛乳頭細胞内で種々の遺伝子発現を促進することで、毛周期の成長期を長くする薬剤です。毛がより長く頭皮にとどまって成長することができるようになり、結果として毛の本数が増加します。

 
 

 ミノキシジル外用薬には毛を太くする効果もあり、太さと本数が増すことにより、薄毛が改善します。個人差はありますが、3カ月から6カ月程度で発毛を実感できます。フィナステリド(もしくはデュタステリド)の内服薬が医師の処方で入手する薬剤なのに対して、ミノキシジル外用薬は医師の処方を経ずに薬局やドラッグストアで購入が可能です。薄毛の原因を抑えるフィナステリド(もしくはデュタステリド)との併用を勧めますが、飲み薬に抵抗がある人や、医師の診察、処方箋無しにすぐに治療を始めたい人には、開始しやすい薬剤と言えます。

未承認のミノキシジル内服 医療機関で安全性を確認しながら

 海外には、男性型脱毛症ではなく高血圧の治療薬として承認されたミノキシジルの内服薬が存在します。日本ではまだどちらの用途でも承認されていないのですが、このミノキシジル内服を男性型脱毛症の治療に低用量で用いる場合があります。外用で用いる場合より、強い発毛効果を示します。国内未承認薬であることから、たとえ低用量の使用であっても、適さない症状であったり、使用できない人もいるので安全性に留意して用いることが重要です。治療実績が豊富な医療機関で十分な説明、定期的な診察を受けながら処方を受けることをお勧めします。

=ゲッティ
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長くつきあう心づもりで

 いずれの薬剤も使用を中止すると、治療開始前の毛の量に戻ってしまうため、薬による治療は長期間となるケースが多いです。年齢を重ねて、治療前の毛の量に戻っても構わないと思える日が来るまでは薬と付き合っていくことになります。薬を長期使用することに不安を感じる方もいらっしゃいます。次回以降、男性型脱毛症の薬の副作用についても紹介したいです。

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こやま・たろう 2001年慶應義塾大医学部卒。同大病院形成外科を経て、10年Dクリニック東京(旧城西クリニック)に入職。Dクリニック新宿院長を経て現職。一男一女と一犬(ロングコートチワワ、こたろう)の父。

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