「年金だけで入れる」は本当? 老人ホーム探しで必見の情報、読み解き方

=ゲッティ
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 「年金で入れる」とうたう低額なホームから富裕層向けの豪華な施設まで多様化する老人ホーム。単身高齢世帯の増加を背景に増えているが、職員の虐待や、過剰に介護サービスを使わせる囲い込みビジネス、紹介窓口に紹介料を払い入居者を集めるホームなど問題も多く、厚生労働省の検討会では登録制など規制強化策を盛り込んだ報告書をまとめたばかり(※1)。では、どのようにしてホームを選べばよいのか。有料老人ホームや高齢者住宅のデータ収集・分析を手がけるTRデータテクノロジー(東京都)の曽根隆夫さんは、「公開されている重要事項説明書(重説)には、事業者や施設の運営体制、契約解除の条件など情報が詰まっている。見学する前にぜひ見てほしい」と呼びかける。いまどきのホームの動向を踏まえた重説の読み解き方を聞いた。【大和田香織】

公開義務づけ 自治体のホームページに一覧

 現在の有料老人ホームは老人福祉法に基づく、都道府県への届け出制。標準とすべき設置・運営方法などは、厚労省が都道府県に向けた指導指針で定め、重要事項説明書(重説)や財務諸表などは入居者だけでなく、入居を検討する人にも開示すべき情報とされている(※2)。

 重要事項説明書には、ホームを運営する事業者の情報や土地・建物の権利形態、料金、居室・設備の説明だけでなく、居室などの設備、職員体制や勤続年数、料金、提供される介護サービスの有無なども記載され、都道府県や主要な自治体のホームページで一覧できる。細かな文字が並び、わかりにくそうだが、現地の見学だけではつかめない情報ばかりだ。曽根さんは「紹介事業者からパンフレットを取り寄せるだけでなく、重要事項説明書も入手して見学しましょう」と勧める。

=増加が続く有料老人ホーム。厚生労働省の有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会資料より
=増加が続く有料老人ホーム。厚生労働省の有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会資料より

「介護付き」?「住宅型」? 施設の類型で職員体制も料金の設定も違う

 最初に把握しておきたいのが、施設の類型。同じ高齢者向けのホーム・住宅でも、運営方法でいくつかの類型に分かれる=表。重説では大抵、1、2ページ目あたり、「類型・表示事項」の欄に載っている。

 有料老人ホームは大きく「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」に分かれる。「要介護状態になったとき介護サービスがどこから提供されるのかをまず押さえてください」と曽根さん。施設の料金体系や職員体制が違うからだ。

厚生労働省資料などを基に作成。「特定施設」は「特定施設入居者生活介護」の略
厚生労働省資料などを基に作成。「特定施設」は「特定施設入居者生活介護」の略

 「介護付き」は、施設が介護保険制度で「特定施設入居者生活介護(特定施設)」という事業者の指定を受けており、常駐する施設の職員が介護サービスを提供する。「住宅型」は、入居者が施設の外から介護保険の指定事業者を選んで契約し、ヘルパーを派遣してもらうなどして介護サービスを受ける。入居前から利用していたケアマネジャーや介護事業者と契約を続けることももちろん可能だが、ホームで系列の事業者を勧められることがあるので注意が必要だ。

「サ高住」は、いわば賃貸住宅

 サービス付き高齢者住宅(サ高住)は、有料老人ホームと違って、高齢者住まい法に基づいている。相談員はいても原則介護職員は置かず、言ってみれば、高齢者向けにバリアフリーの建物を用意した賃貸住宅。入居時に払う一時金は、一般の賃貸住宅の敷金礼金の水準に抑えた住宅もあれば、1億円前後する富裕層向けまでさまざまだ。

 サ高住は、制度ができた当時、比較的自立した高齢者向けとされたが、その後、デイサービスや訪問介護事業所を併設するケースも増え、今は要介護度が重い人が亡くなるまで過ごすことも珍しくない。

 「介護付き」ホームと違って、「住宅型」ホームとサ高住の場合、重要事項説明書に載っている職員体制や料金には、要介護状態になったときに使う介護サービスの分が含まれていないことを理解しておきたい。

 「介護付き」ホームの場合は重説の「介護保険の利用」の欄に「特定施設入居者生活介護」とあり、そのホームが介護保険の指定事業者であることがわかる。介護保険のサービスを使うときはホームの職員が介護し、費用の自己負担分は要介護度によって変わってくる。

ずっと同じ部屋で暮らせるとは限らない「利用権方式」

 ホームによっては、特に自立型ホームの場合、要介護状態になると建物や居室の変更を求められるところもある。「居室の住み替えに関する事項」や「事業者からの契約解除」の欄があるので注目しよう。入院や心身の変化などで居室の変更や退去を求められるのは具体的にどんな場合なのか、手続きや料金に変更があるのかどうかも書かれている。「利用権方式、と書かれていてもずっと同じ部屋にいられるとは限らないのです」と曽根さん。

 サ高住は、「建物賃貸借方式」と記載されていることが多く、こちらは通常の賃貸住宅同様に、原則、居室の変更はない。「要介護状態になったときのほか、医療機関へ入院して戻ってきたときのことなども、重要事項説明書の各項目と照らしながら確認しておきましょう」

厚生労働省が有料老人ホームの設置運営標準指導指針とともに示している重要事項説明書の見本。居室の住み替えがある場合の判断基準や追加費用などを記載するようになっている=同省ホームページから
厚生労働省が有料老人ホームの設置運営標準指導指針とともに示している重要事項説明書の見本。居室の住み替えがある場合の判断基準や追加費用などを記載するようになっている=同省ホームページから

介護の手厚さ示す職員体制「○:1以上」 

 「介護に関わる職員体制」の欄で、「2.5:1以上」「3:1以上」などの数字は、介護職員1人が世話する入居者数を示す。「介護付き」のホームでは年度ごとに必ず記載することになっている。「:」の左側の数字が少ないほど手厚い介護といえるが、24年の曽根さんらの調べでは有料法人ホームの65%が「3:1以上」。実際は早朝や夜間の時間帯にも対応する必要があり、ほとんどのホーム・住宅では、常勤と非常勤(パートタイム)の職員を組み合わせて24時間のシフトを組んでいる。職員の忙しさは時間帯で異なり、24時間、常に3人の入居者に1人の介護職員がつくわけではない=イメージ図。

=介護職員体制「3:1」の介護付き有料老人ホームで夜勤時間帯のイメージ。曽根隆夫さん作成
=介護職員体制「3:1」の介護付き有料老人ホームで夜勤時間帯のイメージ。曽根隆夫さん作成
=介護職員体制3:1の介護付き有料老人ホームで忙しい時間帯の職員配置のイメージ。曽根隆夫さん作成
=介護職員体制3:1の介護付き有料老人ホームで忙しい時間帯の職員配置のイメージ。曽根隆夫さん作成

 また、「住宅型」のホームやサ高住の重説には、こうした介護の人員配置比率の欄は無い。相談員や事務員と並んで介護の職員数が書いてあったら、そのホームに常駐するスタッフなのか、外部の介護事業所から来るスタッフなのかを確認したい。

有料老人ホームの重要事項説明書で、夜勤時間帯などの職員体制を示す項目=厚生労働省ホームページから
有料老人ホームの重要事項説明書で、夜勤時間帯などの職員体制を示す項目=厚生労働省ホームページから

本気度を示す介護報酬「加算」の取得

 介護保険では、介護サービスを提供した事業者に介護報酬を支払うとき、サービス内容や事業所の体制など事業者が努力した分、各種の加算をつける仕組みがある。「特定施設」として介護保険の指定事業者となっている「介護付き」有料老人ホームの場合、重要事項説明書には、そのホームがとれる加算も記載されている。加算が上乗せされる分だけ、入居者が払う自己負担もかさむが、曽根さんは「介護報酬が低く抑えられる状態が続き、加算無しでは事業者の経営も立ちゆかないのが現状。加算が認められるためにはホーム側が職員研修をしたり有資格の人材を雇ったりする必要がある。つまり事業者の取り組みを知る目安になります」という。

 「夜間看護体制加算」、リハビリの個別指導をする体制を整えると取れる「個別機能訓練加算」、介護福祉士など有資格者や勤続年数の長い職員の割合に応じて取れる「サービス提供体制強化加算」、終末期に本人の意思を尊重したケアをするための「看取(みと)り介護加算」などがある。

入居者数や退去者数も貴重な情報源

 年齢や人数など入居者に関する情報をまとめた「入居者」の項目も重要。「直近1年間に退去した人数と理由、退去先はチェックしておくべきです」と曽根さん。「今は、看取りまで対応するホームが普通になりつつあり、退去理由で一番多いのは『死亡』。介護付きホームで6割弱、サ高住でも4割弱に上ります」

 経済的に余裕があるケースだが「入居してみたらイメージと違っていた」と移る人、貯金が底をついて退去する人もたまに見られるが、曽根さんは「退去して他のホームや介護施設へ住み替えた人数が多い場合は要チェック。介護体制、ノウハウ、地域連携などがうまくいっていない可能性もあります。どんな事情で他の施設に移ったのか、特別な医療ニーズが生じたり認知症の問題行動に対処できなかったりといった理由なのか、家族の事情か、聞いた方がいいでしょう」とアドバイスする。

介護付き有料老人ホームの重要事項説明書の見本。介護保険サービスを利用するとき支払う自己負担のほか、入居時に払う前払い金の償却、保全先なども記載することになっている=厚生労働省ホームページから
介護付き有料老人ホームの重要事項説明書の見本。介護保険サービスを利用するとき支払う自己負担のほか、入居時に払う前払い金の償却、保全先なども記載することになっている=厚生労働省ホームページから

 入居率(定員に対する入居者数)は一般に8割を超れば安定稼働とされる。完成間もないホームは一般に入居者数が少ないが、曽根さんによると、低額の介護付きホームなら1年で5~6割に達するのが普通。開設から何年もたつのに入居率が低い場合は、理由や経営状況を確認したほうがよさそうだ。

情報は変化する 日付の確認も忘れずに

 「入居者数や料金、協力医療機関など、重要事項説明書に記載された情報の中にはその年によって変動する項目も多くあります」と曽根さん。例えば、曽根さんらによる全国の434社(ホーム数7,309カ所が対象の調査では、22年から3年間で6割の施設が管理費や食費を値上げしていた。重説の記載内容に変更が生じる場合は、施設側が利用者や都道府県に届ける義務がある。書面で重説をもらったら冒頭にある日付(基準日)も確認しておきたい。

 老人ホーム選びは、事前に情報を確認し、現地に足を運んで決めるのが基本だが、ある日突然倒れて入院した後、転院や退院を迫られたり、要介護状態で自宅の生活に戻るのも難しかったり……ということも起きる。曽根さんは「そんなときにさまざまなホーム・住宅の中から急いで探すというのは負担が大きい。ついのすみかが気になるようになったら重要事項説明書も見慣れておくと安心です」と話している。

TRデータテクノロジー取締役の曽根隆夫さん=東京都中央区で、大和田香織撮影
TRデータテクノロジー取締役の曽根隆夫さん=東京都中央区で、大和田香織撮影

※1 厚生労働省 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会とりまとめ
※2 厚生労働省 高齢者向け住まいについて―有料老人ホームの設置運営標準指導指針について

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