剣道乙女、宮原あおい!
あー……
何もかもが面倒や。
せやからあたし、面と胴しか打たへん。
コテとかツキとか、それなんやねん──
「面! 胴!」
あたしの神速の連続攻撃に、相手はいつも反応すらできずに敗れ去る。
せやけど今日の相手は面倒くさいほどの極上や。
ひらり──蝶のようにあたしの攻撃をかわしよった。
「フフ……存じておりましてよ、宮原あおいさん」
悪役令嬢みたいな声であたしを挑発してくる。
「あなたは面と胴しか打たないのですわよね? そんな手抜きがこのワタクシに通用するとでも思って?」
なんかコイツ『お蝶夫人』とかいうらしいな。
めんどくさ⋯…。
一発でKOされへん相手、めんどくさいねん。
「めーんっ!」
あたしの光速の竹刀がお蝶夫人の頭上に──
「ホホホホホホ!」
ひらりと避けるお蝶夫人。
めんどくさ……
めんどくさいわぁ……
はよKOされてくれんかな。
でも、おもろいわ。
歯応え、ありや!
あたしの面と胴を超えて立ち塞がるライバル!
思わずツキが回ってきよった!
「コテ!」
コテッと、お蝶夫人があたしの竹刀を喰らってのけぞった。
「コテッ! コテッ! コテーーーッ……」
豚モツ!
豚モツやで!
こてっちゃんやで!
懐かしの財津一郎! 令和に知っとるひと、どのくらいおるんかいな!
「ホホホ! 宮原あおいさん! 遂にご自分の主義を捨てられて、小手を打ってこられましたわね!」
お蝶夫人がそう言うけど、かまへん、かまへん!
あたし、元々めんどくさかったから面と胴しか打たへんかっただけやさかいな。
勉強しまっせ、引っ越しのサカイ!
どどっ、どーーん!
高校のインターハイではなかなかお目にかかれん異能力勝負や!
あたしがこてっちゃんを繰り出せば、お蝶夫人はテニス技を繰り出してきよる。強烈なサーブや!
対するあたしは──
「ピアノ売って、ちょうだーい!」
もはや剣道とは呼べぬ試合展開に、観客はみんなサイリウムを振って熱狂や!
「あおい! あおい!」
「お蝶! お蝶!」
もはやまるでアイドルのライブやな。
観客みんなライバーや!
そんで武富士のCMの踊りをはじめんねん、みんなで!
レオタードやで!!
あぁ、あたしは世界一かわいい、剣道乙女、宮原あおい──
佐藤あかりには負けへんで!




