イラン情勢や米中対立などの地政学リスクが、企業経営の不確実性を高めている。コーポレートガバナンス・コードの改訂案は、取締役会が扱うべき課題と位置付けた。
「コーポレートガバナンスの在り方を見直し、企業の長期的な成長に資する人的投資や新事業への投資がより積極的に行われるよう、資源配分戦略を成長志向型に変容させていきます」
高市早苗首相は2026年2月20日の施政方針演説で、5年ぶりのコーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂について、こう宣言した。金融庁は2月26日、「コーポレートガバナンス・コードの改訂に関する有識者会議」の第2回会合で改訂案を公表。4月3日に修正版を公表し、5月15日までパブリックコメント(意見公募)を受け付ける。
現行のCGコードは基本原則5個、原則31個、補充原則47個の計83原則で構成され、その全てが、原則を順守するか説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の対象になっている。改訂案では、補充原則のうち重要度の高いものを原則に格上げし、残りは「解釈指針」へ移管するか削除してコンプライ・オア・エクスプレインの対象からは外す。対象となる原則を大きく絞り込み、コード全体をスリム化する。

地政学リスクへの対応要請
注目は、取締役会の役割・責務に関する解釈指針で、サプライチェーン(供給網)途絶リスク、サイバーセキュリティリスク、情報流出リスクへの対応が盛り込まれたことだ。
サプライチェーン途絶リスクは、イラン情勢の緊迫化によって多くの企業が直面しているリスクだ。原油の調達が滞れば、企業の製造原価を押し上げ、製品の売り上げや利益に影響を与える可能性がある。米トランプ政権による相互関税の発動や、中国のレアアース(希土類)輸出規制なども加わり、世界情勢の変化が企業活動に影響を与える地政学リスクとサプライチェーンの結び付きが、かつてないほど強まっている。
こうしたリスクへの対応は、高市政権が掲げる日本の成長戦略や経済安全保障政策と方向性が一致する。高市首相は26年3月19日、米ワシントンでトランプ大統領と会談し、重要鉱物をはじめとするサプライチェーンの強化で合意した。政府首脳レベルでサプライチェーンを重要課題に位置付け、「重要鉱物サプライチェーン強靱性のための日米アクションプラン」を取りまとめた。






