創業期は電力と化学、高度成長期は建材メーカーとして発展、石油危機で高付加価値の電子事業に進出した。半導体の技術を土台に、データセンターの需要に合わせた投資で事業構造を進化させ、時代のニーズに応える。

 創業114年を迎えるイビデンは、コア技術をベースに、時代のニーズに合わせて核となる事業を入れ替えてきた。

 サステナビリティを担当する吉川文康氏は、「培った技術をどう使っていくかを考え抜く視点を持ち続けたからこそ、事業環境が変化しても価値の高い製品を提供することができ、技術開発型企業として事業を継続することができた」と話す。

 直近の売上高では電子事業が59%と最も高い割合を占め、次にセラミック事業が23%となっている。環境に合わせて事業構造を大きく変化させてきた結果、現在は生成AI(人工知能)のサーバーに向けたIC(集積回路)パッケージ基板に強みを持ち、電子事業の分野で世界をリードする企業となっている。

■ イビデンの事業の変遷
■ イビデンの事業の変遷
時代ごとに最先端の事業を生み出した。ニーズに合わせ事業の柱を入れ替え、国内からグローバルに需要を拡大し、発電、化学、素材、電子へと事業構造を進化させてきた(出所:イビデン)
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 1912年の創業時は、水力発電所の電力を供給する事業からのスタートだった。当時は「揖斐川電力」という会社名で、揖斐川の豊かな水資源で発電し、岐阜県大垣市の地域経済への貢献を目指した。

 電力を活用するために進出したのが電気化学事業だった。45年ごろまでに、石灰岩から得られる生石灰と炭素を高温で熱することで生成するカーバイドや、石灰窒素で作られる製品を製造した。こうした化学品は化学肥料として使われるようになった。

安売りではなく技術を高める

 戦後は石灰窒素から生成されるメラミン樹脂を原料とするメラミン化粧板を製造するようになり、建材の高い需要を支えた。60年代は建材が主力産業となり、売上高の38%を占めるまでになった。

 しかし70年代、原油の供給削減と価格高騰により「石油危機」が起こったことが会社の転換期になったという。

 「安売り競争ではなく、技術を高めて付加価値の高い製品を製造する方向性を目指した」(吉川氏)

 建材をメインに据えた事業環境が難しくなる中、プリント配線板に着眼したことが、「当時としては先見的だった」と吉川氏は振り返る。既存事業で培ってきためっき技術や積層技術を活用できるプリント配線板の開発を始めていたが、それが後に「花開いた」からだ。80年代、90年代は携帯電話やパソコンに組み込まれるプリント配線板が、海外の携帯電話メーカーなどから引く手あまたとなった。

 さらに既存事業での技術を活用し、自動車の部品であるセラミック製品の部品製造も手掛けた。ディーゼル車の排気ガス浄化フィルターに使われ、欧州の工場を中心に生産してきた。半導体や太陽光電池に向けたシリコン製造用の特殊炭素製品も開発を進めてきた。

 このように技術開発に熱心に取り組んできた背景には、「石油危機からの教訓」があった。