「豊島(てしま)事件」という不法投棄の歴史を現地で学ぶ環境学習を軸に、従業員のESG理解を深めていく。現地で採れた原料で商品を開発・販売し、生活者の環境意識の醸成と持続可能な社会の構築に貢献する。
瀬戸内海に浮かぶ香川県豊島。穏やかな海と段々畑の風景は、かつて産業廃棄物の不法投棄があった過去を想像させない。だが島の北西部の水ヶ浦一帯には、1980年代から約100万t規模の産廃が不法投棄され、野焼きや水質汚染、健康被害が続いた歴史がある。
当時日本最大規模といわれた有害な産廃の不法投棄事件である「豊島事件」は、90年に兵庫県警の摘発で表面化し、住民による公害調停申請や島を挙げた訴えにより、2000年に調停が成立した。その後も原状回復は長く続き、撤去・無害化処理は17年まで及び浄化対策は23年3月初めに地下水の排水基準に達した。しかし自然浄化で環境基準以下にする課題が残り、26年3月時点で解決の見通しは立っていない。
この島を、人材育成と環境学習の舞台に選んだのが、「ダイソー」などの店舗を運営する大創産業だ。瀬戸内の環境再生を支援する方針の下、同社は25年10月25日、従業員教育の一環で開始した環境学習の第1回を豊島で実施した。
グローバル広報課係長の村石百香氏は「環境学習は、豊島事件を学ぶことで自然と人との関わりを自分ごとと捉え、環境に対して日々の生活で何ができるか一人ひとりが考える場とする狙いがあった」と話す。環境学習には本社の従業員と家族の計21人が参加し、同社が法人サポーターを務める認定NPO法人瀬戸内オリーブ基金が協力した。


「瀬戸内の仲間」を支援
瀬戸内オリーブ基金は、豊島事件の教訓を風化させないため、資料館改修やアーカイブ作成などの環境教育に取り組む団体だ。公害調停成立を機に建築家の安藤忠雄氏と、豊島事件弁護団長の中坊公平氏が呼びかけ人となって設立され、瀬戸内海エリアの美しい自然環境を守り、再生することを目的に活動している。
瀬戸内海エリアの環境保全活動に資金の助成を行う他、豊島では不法投棄などで荒廃した植生の回復を、自然の営みに寄り添い手助けする。自然破壊は簡単でも回復には時間と労力がかかることを伝える「ゆたかなふるさと100年プロジェクト」、海ゴミの回収と発生抑制に取り組む「ゆたかな海プロジェクト」やオリーブ栽培などの活動を行っている。
取引先の紹介をきっかけに基金の活動を知り、同じ瀬戸内海に面する広島県東広島市に本社を置く企業として「瀬戸内の仲間」を支援したい思いが生まれたという。
環境学習のプログラムは、資料館と処分地で歴史を学ぶ、「ゆたかなふるさと再生の森」で植生回復を知る、オリーブ収穫を体験、オリーブの瓶詰めワークショップと試食という構成で実施された。参加者は、廃棄物処分地を見学して語り部の講話を聞いた。土地の見た目は整ったように見えても元の状態に簡単に戻るわけではなく、水質の回復は地下水など自然の作用に任せるしかない。「回復状況をそのまま伝えることに意味がある」と村石氏は話す。
参加者のアンケートでは、満足度は「とても満足」「満足」が95%を占め、「家族や周囲に学んだ内容を伝える」「食品ロスを減らす」など行動変容の兆しも見られたという。






