グループ19社の経理を統一、
紙1.7万枚をゼロにしたFFGのDX実践
福岡銀行、十八親和銀行などを中核とするふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は、地方銀行グループとして国内最大級の規模を誇り、地銀業界で唯一「DX銘柄(※1)2025」にも選ばれている。その戦略を支えるサービスの1つが、人工知能(AI)で経理・人事業務の効率化・自動化を実現するLayerX(レイヤーエックス)の「バクラク」だ。バクラク活用を推進するFFGのキーパーソンと、LayerXのパートナー戦略を担う執行役員に話を聞いた。
- 高崎遼平氏
- ふくおかフィナンシャルグループ
経営企画部
経営企画グループ調査役
(インタビュー時:経営企画部 財務グループ所属)
- 坂梨令治氏
- 十八親和銀行
ソリューション事業部
DX・人事ソリューショングループ
主任調査役
(インタビュー時:デジタル化推進部DX支援グループ所属)
- 鈴木竜太氏
- LayerX
執行役員バクラク事業
CBO
経理業務のガバナンス強化と属人化解消にバクラクを生かす
── FFGにおけるDXの取り組みについてお聞かせください。
高崎氏: 我々が目指しているのは、DXを自ら実践して成長・発展の源泉にすることと、グループの銀行が中心となってDXを地域企業に波及させて経済の活性化に貢献することです。その中で一番大切にしているのは「変革を恐れない姿勢」です。これはFFGのスローガンにも通じるものです。
── 高崎さんは、FFG内のDXの取り組みとして、グループ19社の経理システムを統一するプロジェクトを推進されました。それについて教えてください。
高崎氏: 以前、19社はそれぞれ異なるシステム、プロセス、ルールのもとで経理業務を行っており、全体のリアルタイムなデータ把握やガバナンスの徹底が困難で、業務の属人化も進んでいました。それに人手不足の問題が重なり、ベテラン職員の退職で経理業務が立ち行かなくなるリスクもありました。そこで、経理業務のデジタル化・標準化・省力化と、それによるガバナンス強化や属人化の解消、さらにはシェアードサービス化(グループ内での業務集約)を目指して、システム統一のプロジェクトを始動させました。
(インタビュー時:経営企画部 財務グループ所属)
── その取り組みの中でバクラクを採用した理由はどこにあったのですか。
高崎氏: この製品を高く評価したポイントは、19社の多様な運用に耐えうる柔軟なワークフロー設計が可能な点と高精度のAI-OCR(AIを用いた光学式文字読み取り装置)を備えている点、そしてUI/UXが誰にとっても使いやすい点です。また、金融機関の厳しいセキュリティー基準を満たすために、LayerXの担当者は我々と緻密なやり取りを重ねながら、ゼロトラストに近いアクセス制御を設計・実装してくれました。そうしたサポート力も採用の決め手といえます。
── バクラクによる現場業務の変革をどのように推進されたのでしょうか。
高崎氏: プロセス設計の段階からグループ各社の担当者にプロジェクトに参加してもらい当事者意識を持ってもらうよう心がけました。またオリジナルのマニュアルを作成し、各社を回りながらバクラクの使い方や活用の意義を丁寧に説明することで、現場への定着を促しました。
── 結果としてどのような効果が生まれましたか。
高崎氏: 導入前は請求書処理に関しては紙帳票での処理が主流でしたが、導入後は19社合計で年間約1万7000枚がペーパーレスで処理されるようになり、紙帳票での処理はゼロになりました。業務の可視化・標準化も進み、シェアードサービス化に伴う業務の引き継ぎや人材育成の手間も軽減されています。さらに、以前は紙の請求書に印鑑を押して回覧するといった昔ながらのアナログな運用が残っており、承認のプロセスや証跡をデータとして一元管理しにくいという課題がありましたが、請求書処理の流れがデータで記録・可視化されたことで、全体のガバナンスは以前とは比較にならないほど強化されました。
── LayerXでは、こうしたFFGの成果をどう見ていますか。
鈴木氏: FFGのような大規模なお客様の場合、バクラクの導入検討に1年、導入の実務に半年かかり、動き始めるまでに2年近くかかることがあります。その中で、FFGは、金融機関の厳しいセキュリティー基準など、さまざまな障壁を乗り越えながら、19社へのバクラク展開と現場への定着をスピーディーに成し遂げています。そこにDXに対する強い意志と推進力の高さを感じています。
「自分たちも使っている」が深める地域DX支援への信頼
── 坂梨さんは、地域企業のDX支援に携わっています。その取り組みの中でバクラクを活用する意義をどのようにとらえていますか。
坂梨氏: DXに関しては、「IT人材が不足している」といった声が多く聞かれます。
こうした状況の中で、デジタルに不慣れな方でも導入がしやすいという点において、バクラクは一つの選択肢になり得ると考えられます。また、FFG内で実際に活用している立場から、運用面を含めた具体的な利用イメージをお伝えすることも可能です。加えて、規模や業態の異なる19社での活用実績があることから、中小企業においても参考となる事例があると言えます。
FFGでは、特定のシステムを推奨するのではなく「ベンダーフリー」の立場を基本としています。その中で「自社でも利用している事例の一つ」としてご紹介できるサービスがバクラクです。
(インタビュー時:デジタル化推進部DX支援グループ所属)
── LayerXとしてFFGとのパートナーシップに何を期待していますか。
鈴木氏: FFGは地域企業と長年の信頼関係を持ち、経理・人事業務の現場課題も熟知されています。そうした地域の金融機関は非常に心強いパートナーです。また、FFGの「一歩先を行く発想で、地域に真のゆたかさを。」という理念は、一歩先を見据えたプロダクトでお客さまの変革を後押しするLayerXの姿勢と重なります。考え方や想いが一致するパートナーと一緒にプロダクトを届けられる意義は大きいと感じています。
DXの推進で地域の未来を変える
高崎氏: バクラクによる効率化・自動化で経理の現場に時間的なゆとりが生まれ、より付加価値の高い業務に集中できるようになりました。また、これまで紙で綴(と)じていた情報がすべてデータ化され、見やすいリポートとして蓄積されています。今後はこれらのデータを分析し、「どの会社にどれくらい経費がかかっているか」などをリアルタイムで可視化することで、経営判断の迅速化・高度化につなげることが次のミッションです。
坂梨氏: グループ内での活用を通じて蓄積した知見を地域に横展開することで、大都市の企業に匹敵する、あるいはそれ以上の収益力を持つ企業が地域から生まれると見ています。LayerXのようなIT企業と密接に連携しながら、地域のDXをさらに加速させていきます。
鈴木氏: バクラクではAIエージェントによって1から10ある作業の1から9までをAIが処理してくれて、最後の1のところだけは人間が目視で承認してフローが終わるという「業務の自動運転」ができる世界を目指しています。人が付加価値の高い業務に集中できる環境こそ、地域の企業・経済の活性化に不可欠です。そうした環境の普及に向けて、FFGをはじめとする各地の金融機関とのつながりをこれからも強化していきます。