提供:NIKKEI Real Estate Summit 2026特集

NIKKEI Real Estate Summit 2026 都市の未来を展望する大型サミット

街の磁力を高めその価値を未来へ

顕在する社会課題に企業は
どう向き合っていくのか。
激化するグローバルな都市間競争の中、
世界に誇る不動産の力で、
社会を変革していく

01 都市開発アイコン

都市開発イメージ

ハードとソフトを融合
まちづくりは新段階に

世界中から多様な人や企業が集まる東京を軸に、都市に新たな価値を創造する再開発が加速している。各地で、緑を都市の性能として捉えた面的整備やスマートシティー化、エリアを超えた連携が進展。ハードとソフトを融合させた持続可能なまちづくりは、いまや実装段階に入った。日本経済新聞社が2月4、5日開催した「日経リアルエステートサミット」ではまさに生まれ変わろうとしている都市の姿と、未来へとつながる戦略が語られた。

INDEX

DAY 1

企業講演1

水辺のまちづくり
BLUE FRONT SHIBAURA

野村不動産 常務執行役員
芝浦プロジェクト本部長兼グループオフィス戦略室担当
山田 譲二

講演中の山田 譲二氏の写真

浜松町、デベロッパー共創で進化

野村不動産がJR東日本と共同で進める港区芝浦の大規模複合開発「BLUE FRONT SHIBAURA」が本格稼働を迎えた。2025年開業のTOWER Sから30年度のN棟完成まで、約10年にわたる国家戦略特別区域計画の特定事業。都心部では希少な水辺のまちでもあるJR浜松町駅東側に位置するツインタワーのうち、昨年開業したS棟のオフィス部分は契約満床となり、今年夏から秋口にかけて全テナントの入居が完了する見込みだ。ホテル・住宅・オフィス・商業の4つの機能で就業人口3万人のまちづくりをめざす。

BLUE FRONT SHIBAURAのイメージ

S棟のオフィスの特徴は、ワンフロア約約5000平方メートルという国内最大級の床面積。28階の「BLUE SKY LOUNGE」は全面ガラス仕様、都心で空と海と緑を感じながら働けるという特徴的な入居者専用フロアとなり、会議室やカフェ、サウナを備えたフィットネス機能、共創エリアなどで構成する。当社は「出社したくなるオフィス」をコンセプトに昨年、グループ8社約3500人の本社機能を新宿からS棟に移転した。社員自ら多様な働き方を実践する。

エリアマネジメントも加速している。昨年10月には東急不動産、JR東日本、世界貿易センタービルディングとともに「芝東京ベイ協議会」を設立。浜松町周辺では3つの国家戦略特区で計115万平方メートルの開発が進み、27年には世界貿易センタービル本館も供用開始予定だ。また日本初上陸の「フェアモント東京」が開業し5つのラグジュアリーホテルが集積する。新たなラグジュアリークルーズ船の運航も予定しており、羽田空港とも近接した陸・海双方から好アクセスなこのエリアは、さらに来街者の体験価値を高め東京のウオーターフロントの魅力向上に寄与する。

日経チャンネルにて
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都市開発 企業講演

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企業講演2

国際都市TOKYOの
未来を拓く「広域品川圏(Greater Shinagawa)」本格始動

JR東日本 
常務取締役 マーケティング本部長
中川 晴美

講演中の中川 晴美氏の写真

未来を見据えた実験場、高輪に出現

2026年3月28日、国際交流拠点「TAKANAWA GATEWAY CITY」のグランドオープンと、都市生活共創拠点「OIMACHI TRACKS」の開業を同時に迎え、JR東日本が推進する「広域品川圏」が本格始動する。広域品川圏は浜松町駅から大井町駅までの5駅を中心としたエリア。羽田空港アクセス線(仮称)やリニア中央新幹線の開業を見据え、国際都市東京の玄関口として30年代半ばまでに床面積約150万平方メートル、年間営業収益1000億円規模の事業創出をめざす。

TAKANAWA GATEWAY CITYは、昨年のまちびらき以降駅の乗降人員が約3倍にまで増加。「THE LINKPILLAR 2」や「MoN Takanawa」、インターナショナルスクールを併設したレジデンスが開業するグランドオープン後は1日10万人の滞在を見込む。街全体を「100年先の心豊かなくらしのための実験場」と位置づけ、環境・モビリティー・ヘルスケアを重点テーマとして取り組む。ビジネス創造拠点「LiSH」を中心に、街全体を舞台にした40件以上の実証実験も動き出している。環境面では街の二酸化炭素排出量実質ゼロを目指し、国内最大級の蓄熱槽や東日本初のビル内型バイオガス設備を設置する。

今後は重点テーマに加え、「人材・叡智(えいち)」「医療」「水素・GX」という3つの柱を据えて品川方面へと開発を拡大。持続可能な都市モデルをめざす。

OIMACHI TRACKSは、JR東日本グループ初のサービスレジデンスやアウトモール型商業施設を展開。東京ガスとの協業により、入居者がカーボンオフセット都市ガスを選択できる日本初の仕組みも導入する。

多彩な交流・共創を生み出す「TAKANAWA GATEWAY CITY」

TAKANAWA GATEWAY CITYについての図版

日経チャンネルにて
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都市開発 企業講演

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※無料/登録不要

企業講演3

「体験価値」がカギを握る、
まちづくりの付加価値創出

東京建物
取締役 専務執行役員
神保 健

講演中の神保 健氏の写真

体験でまちの付加価値創出

東京建物は、国立競技場前の都立明治公園で、民間が公園の整備・運営を担う「パークPFI事業」に取り組んでいる。パークPFIでは、園内店舗の面積や設置期間の緩和を受けることが可能で、一般的な公園にはない魅力を生み出しやすい。7500平方メートルの緑地や多様な広場を整備しつつ、来園者に多彩な機会を提供するため様々な企業とタッグを組むなど、取り組みの幅は広い。根底にあるのは、「体験価値」がにぎわいあふれるまちづくりには欠かせないという思いだ。

園内店舗では、自主事業として都市型スパ「TOTOPA」を運営し、ランニングとサウナを組み合わせた企画やスポーツイベントなど「ここでしかできない体験」を提供している。集客に苦戦する真夏にはビール、花火、映画上映を楽しめるイベントを、真冬にはアイススケート場やこたつを組み合わせたイベントを開催するなど試行錯誤を重ね、昨年1年間で約290万人が来園した。近隣では他社と共同で秩父宮ラグビー場建て替えも進めており、完成後はさらなる体験価値の創出をめざす。

従来、にぎわい創出のためのイベントは費用持ち出しになりがちで継続実施には課題があった。その解決策として、東京建物は同社グループのプライムプレイス、読売広告社と新会社WonderScapeを設立。デジタルサイネージと連動したイベント事業等を展開する。「大手町タワー」の地下通路には300インチの大型デジタルサイネージを設置し、1日平均6万人の通行客に向けて訴求している。この「建物単体ではなく周辺地域へにぎわいを波及させる」視点による体験価値の創造を、「TOFROM YAESU」ほか今後の再開発にも取り入れたい考えだ。

新たな体験価値を提供する都立明治公園

都立明治公園のイメージ

都立公園として初めて Park-PFI(公募設置管理制度)を活用し、 東京という都市が世界に誇れる“レガシー”となることを目指した公園づくり。新たな「体験価値」を提供し、3つの広場と約7500平方メートルの樹林地、個性豊かな店舗がやすらぎとにぎわいを創出する。

日経チャンネルにて
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都市開発 企業講演

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主催者講演

SCENEを創り出す
没入体験の現在地と
都市の未来

アーティスト / NAKED, INC. 創業者 / 大阪芸術大学客員教授 /
長野県・阿智村ブランディングディレクター
村松 亮太郎

講演中の村松 亮太郎氏の写真

人間らしさこそがまちの魅力

2012年の東京駅プロジェクションマッピングで日本にこの表現手法を広めたクリエイティブカンパニーNAKED, INC.(ネイキッド)は、行政や地域と連携し文化資産とテクノロジーを融合させた都市体験の創出に取り組んでいる。過疎地が年間数十万人が訪れる観光地へ変貌したことで有名な長野県阿智村では、「日本一の星空ナイトツアー」の共同企画を手掛けるなど、地方創生の先進事例を重ねてきた。

京都では22年に「NAKED GARDEN ONE KYOTO」を発足。二条城や平安神宮など30カ所以上で文化遺産を活用したナイトイベントを展開し、観光客の混雑分散を図っている。「Arts Aid KYOTO」(京都市 連携・協働型文化芸術支援制度)認定プロジェクトとして、企業版ふるさと納税を活用し、多くの企業参画を実現。25年には、京都駅ビル7階東広場に「光の茶室」を備えたアートテラスラウンジ「NIWA」をオープンと、官民一体の持続可能な公民連携スキームを構築した。海外展開も加速し、HISとともにハワイ初のXRバスツアーを開始。MRゴーグルでまちなみと仮想の海中都市を融合させ、移動をアトラクション化した。

AI(人工知能)時代に最適解を追求するとまちは均質化する。効率化できない無駄や偶然、人間らしさこそがまちの魅力を形成する。「いいカオス」を持つ文化的なまちづくりが重要だ。

日経チャンネルにて
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都市開発 主催者講演

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企業講演4

物が届き続ける未来を創る
——自動運転時代を見据えた
物流ハブステーション

三菱地所 
物流施設事業部 基幹物流事業推進室長
桂木 悠斗

講演中の桂木 悠斗氏の写真

IC直結、自動運転による物流網を構築

三菱地所は「基幹物流構想」を推進している。三大都市圏などにインターチェンジ(IC)直結の大規模物流施設を開発し、自動運転トラックなどで結ぶ「物流の新幹線」を構築する計画だ。

物流業界は労働基準法の改正等により、長距離ドライバーが不足する「物流2024年問題」を抱えており、30年には約34%の荷物が運べなくなるとの試算もある。CO2排出量の約6.8%を占める貨物自動車の環境負荷低減も急務だ。構想では関西圏・京都城陽(延床面積約28万平方メートル)、関東圏・横浜上瀬谷(同約70万平方メートル)、中京圏・愛知日進(同約23万平方メートル)、東北圏・仙台長町(同約27万平方メートル)の4拠点を開発中で、いずれも高速道路IC出口直結。関東圏・関西圏は30年ごろの稼働をめざす。

次世代モビリティーの実装も進む。資本業務提携を結ぶT2社は幹線輸送の自動化を目指し、25年7月にドライバーが乗車した上でハンドルから手を放すレベル2自動運転での商用運行を開始。基幹物流施設の稼働時には次世代モビリティーが走行可能な状態になっている想定。施設は自動運転車とドライバーの乗り換えやダブル連結トラックの連結・解除を担う「モビリティプール」と、幹線輸送と地域配送の積み替えを効率化する「クロスドック」といった機能を備え、共同配送の実現や積載率向上が期待できる。

国土交通省の「物流拠点の今後のあり方に関する検討会」では、基幹物流拠点の整備に地方公共団体が参画するスキームを検討中だ。専用アクセス道の整備等、基幹物流構想の実現には各地方公共団体の協力が必要であり、加えて荷主、運送会社等の物流関係者との共創により自動化も見据えた新たな物流のあり方に対する検討を進めている。オープンイノベーションの姿勢でネットワーク拡大を目指す。

全国の基幹物流拠点を結ぶ広域ネットワーク

広域ネットワーについての図版

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都市開発 企業講演

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パネルディスカッション

広域渋谷圏を
国際競争力を牽引する街へ

東急不動産 執行役員 
広域渋谷圏戦略推進室担当 都市事業ユニット渋谷事業本部長
黒川 泰宏

早稲田大学 
商学学術院 商学部 教授
井上 達彦

【モデレーター】
日経BP 総合研究所 チーフコンサルタント 主席研究員
小林 暢子

講演中の写真(左から)小林氏、黒川氏、井上氏

広域渋谷圏、国際競争力けん引へ

小林 渋谷はなぜ、スタートアップと人材を引き寄せ続けるのか。

黒川 このまちには新たなカルチャーや産業が継続的に生まれる「価値創造力」、最新のトレンドを世界へつなぐ「発信力」、多様な価値観が混じり合う「多様性」という3つの大きな魅力がある。これらが磁石のように人を引きつけ、絶え間ないイノベーションの土壌となっている。

小林 渋谷区のスタートアップ出現率は都心5区で最も高く、オフィス賃料が最も高いにもかかわらず空室率は2番目に低い。今後の「伸び代」も大きいだろう。

黒川 当社は渋谷駅から半径2.5キロメートルの「広域渋谷圏」にて、原宿、表参道、代官山など、個性豊かなエリアを「面」で捉えるまちづくりを推進中だ。自社施設の空室率は0.6%(25年9月末)と低く、1坪(3.3平方メートル)あたり6万円超の成約も出るなど、マーケットをけん引している。グループ全体で、産業育成(スタートアップのコミュニティー拠点)、都市観光(渋谷リアル・イカゲームなどのコンテンツ)、都市基盤(IoTスマートダストボックス、外国人材プラットフォームなど)を重点に「ハード×ソフト」両面で推進していく。

SAKURA DEEPTECH SHIBUYAでのコミュニティーの様子
スタートアップのコミュニティー拠点「SAKURA DEEPTECH SHIBUYA」

井上 都市エコシステムの鍵は「衝突密度」にある。単位面積当たりの活動量に多様性が掛け合わさるほどシステムは強くなり、共同投資が活発なほどスタートアップの数や多様性が増すことが研究でも明らかだ。グローバルスタートアップエコシステムランキングで2025年11位と健闘している東京は、今後、地域の強みにテクノロジーを掛け合わせた「ニューヨーク型」の成長モデルが参考になる。渋谷が次にめざすべきは、成功した起業家が次の世代を支援し、資金と知恵が循環する「自走」の仕組みの確立である。

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都市開発 パネルディスカッション

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企業講演5

赤坂・虎ノ門エリアに
おける緑のまちづくり

日鉄興和不動産 
常務取締役 都市事業本部長
丸山 博史

講演中の丸山 博史氏の写真

地域をつなぐ革新的な緑地計画

日鉄興和不動産は赤坂・虎ノ門エリアにて、約850メートルの緑道構想を軸に回遊性とウェルビーイングを底上げする「面」のまちづくりを進めている。1960年代から緑化を開発に組み込み、90年代に開発を始めた同エリアで4つの主要物件を展開する。

1号案件の「赤坂インターシティ」では、100年たっても色あせないまちづくりを掲げ10年以上地域と一体でまちづくりを推進、今年で21周年を迎える。地上38階・高さ205メートルの大規模複合ビル「赤坂インターシティAIR」では、5000平方メートル超の広大な緑地に加え幅12〜13メートルの緑道を200メートルにわたって整備し、国土交通省「TSUNAG認定」優良緑地確保計画認定制度の1号案件となった。4つめとなる最新案件は、旧虎の門病院跡地に2025年2月に竣工した延べ18万平方メートルのオフィスビル「虎ノ門アルセアタワー」だ。森ビルと接続するなど周辺街区と一体感を醸成、さらに今後、米国大使館前の広場を緑地として整備する。

08年には赤坂・虎ノ門緑道協議会を設立。約850メートルの大緑道の整備を目指し、ハード整備だけでなく緑地を使ったイベントなどソフト面にも力を入れ、緑を「見るもの」から「使うもの」へ革新することで、平日ワーカーと地域の接点を生み出している。東京都と実施協定を締結し、気象と人流データを重ねてバーチャル空間で体感できる仕組みも構築。世界最大級のイベントである「スマートシティ エキスポ ワールド コングレス2025」(バルセロナ)で発信を行った。25年11月には「赤坂・虎ノ門サステナブルシティコンソーシアム」も設立し、環境負荷低減とウェルビーイングをテーマに活動している。緑の整備で終わらず、官民とテナントを交えた継続的な運営体制へと重心を移す。

赤坂・虎ノ門エリア主要プロジェクト

赤坂・虎ノ門エリア主要プロジェクトについての図版

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都市開発 企業講演

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主催者セッション

これからの都市開発の
あるべき姿

パノラマティクス主宰 /
アブストラクトエンジン 代表取締役
2025年大阪・関西万博 EXPO共創プログラムディレクター
齋藤 精一

講演中の齋藤 精一氏の写真

「参加できる余白」が価値生む

新型コロナウイルス禍を経て、都市の同質化が進んでいる。都市開発を「床面積」中心から「人」中心へ戻すべきだ。2019年、1万平方メートル以上の都市計画決定が399件出された。少子高齢化の中でこれだけの床が本当に必要なのか。基本構想では坪単価や動線の話ばかりで「人」の話がない。渋谷では駅前の複合開発が進む一方、雨の日には駅前で行動が完結し、人々は遠くまで行かなくなった。都市が「インテリア化」し、まちの輪郭が薄れ愛着が消えつつある。

解決策として提唱するのが「ファンダムシティ」だ。オールターゲットではなく、まずは刺さるコミュニティーを定めて1000人の真のファンが回し続ける施設・物件にする。K-POPファンが自発的に翻訳・リミックスしてSNSでシェアしているように、まちにも「参加できる余白」を設け利用者を共同制作者とし、都市を「与える側」と「受け取る側」に分けず、価値が生まれ続けるプラットフォームへ転換するのだ。

DAY 2

オープニングリマーク

建築というきっかけ

永山祐子建築設計 取締役
永山 祐子

講演中の永山 祐子氏の写真

建築の可能性、リユースが開く

大型建築物にもリユースの概念は取り入れられる。2021〜22年に開催されたドバイ万博の日本館は、設計段階から資源の再利用を見据えていた。外観の立体組子の工法に採用したボールジョイントシステムは組み立てに特別な技術を要しない上、様々な形状に組み替え可能だ。球状部材と棒状部分、メッシュ状の膜材の3種のみと構成をシンプルにしたことで保管や輸送の効率化も実現した。現に立体格子の総パーツ数は1万個に及ぶが、解体後にはコンテナ1.5個分に収まる。大阪・関西万博では同リユース部材を使った結果、二酸化炭素(CO2)排出量は新規資材使用時の半分程度にまで削減している。27年にも横浜市の国際園芸博覧会で再利用する。

リユース建築への取り組みが、伝統的な工法の従来とは異なる活用につながった。形を変えながらあらゆる場所へ「動く建築」は、建築の新たな可能性だ。循環型経済に建築を含める上で、リユースの技術や考え方が広く一般化してほしい。

特別講演1

建築物への
木材利用の促進

林野庁 
林政部木材利用課 建築物木材利用促進官
牧野 秀史

講演中の牧野 秀史氏の写真

森林資源、利用拡大で持続化へ

日本の人工林面積は約1千万ヘクタールと世界第6位の広さを誇り、その6割は木材利用に適した植林後50年を超えている。森林は温暖化対策、水源涵養(かんよう)、生物多様性などの効果があり、貨幣評価にして年間70兆円規模の価値を持つ。これらの効果や資源を持続するには「植える」「育てる」「伐(き)る」「使う」のサイクルが重要だ。人工林資源が充実している我が国は特に「使う」が推奨される時期といえる。

国内では低層住宅の木造率が8割を超える一方で、中高層住宅や非住宅建築物での利用は少ない。人口減少による住宅着工の減少も見込まれる中、用途の拡大が必要。木材利用は使用者にもメリットがある。鉄骨や鉄筋コンクリートより軽いため基礎工事のコストを抑えられるほか、木のある空間はリラックス効果や集中力向上に寄与し、人材獲得や来客数増加につながった事例もある。補助金だけでなく、木材利用による環境貢献の見せ方の手引などを通じて、国としてもサポートしていく。

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都市開発 特別講演

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パネルディスカッション

働く場に新たな価値を
生み出す木の力~REVZO新橋に見る
木造・木質オフィスの可能性~

中央日本土地建物 執行役員
加藤 俊一

中央日本土地建物 投資開発部 リーダー
津田 祥子

林野庁 林政部木材利用課 建築物木材利用促進官
牧野 秀史

【モデレーター】
日経BP 総合研究所 上席研究員
徳永 太郎

講演中の写真(左から)徳永氏、加藤氏、津田氏、牧野氏

木造オフィス、意義と魅力両立

徳永 木造・木質化オフィスビルの開発理由は。

津田 これまで「REVZO」が提供してきた“自然とのつながりを感じるオフィス”の価値を一層深度化できると考えた。更に森林資源の循環、脱炭素社会の実現という面でも取り組む意義があった。一方、従来のオフィス開発では出会わなかった課題にもぶつかった。保有林材を活用したため用途に応じた樹種の選択・伐採に向けた専門家との伐採計画から始まり、木材の搬出にも苦慮した。加えて木材は温度湿度で伸び縮みするため、施工現場で細かい調整も求められた。しかし、木材は、建材からチップまで、余すところなく活用できる。多様な用途・規模での木造化が進むと面白い。

加藤 鉄骨に比べコストは高くなるが、軽量化のメリットに加え、建材の選択肢を広げる効果も狙った。何より木に包まれた空間がもたらす効果は大きい。「REVZO新橋」は木に包まれて働く場を提供する。モデルルームを訪れた人は、心引かれる木の柱に触れ、木目が並ぶ天井を見上げる。自然の中で樹木の幹に触れて枝葉を見上げるような感覚が生まれる。不動産業では「床を貸す」と言われるが、同建物は「空間を感じて使ってもらう」ビルといえる。多様な業種の企業から順調に入居申し込みを受けている。ビジネスの場でも、木には人を引きつける魅力があると実感した。

牧野 木に携わる人は熱い思いを持つ方が多い。そのような方々による木材の利用可能性を広げる取り組みを国も支援していきたい。自治体でも森林調査データを公表したり、独自の補助金があるので活用いただきたい。

徳永 木材を利用したオフィスは利用者のウェルビーイングの向上や、人材確保に効果的との声も聞く。木造・木質化オフィスビルは今後も増えていくだろう。

木に包まれた「REVZO新橋」の共用ラウンジ

「REVZO新橋」の共用ラウンジのイメージ

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都市開発 パネルディスカッション

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特別講演2

宇都宮市におけるスポーツによる都市の魅力創造と
市民のWell-being向上について

宇都宮市 魅力創造部 スポーツ都市推進課 課長
黒崎 泰広

【モデレーター】
スマートシティ・インスティテュート(SCI-Japan) 専務理事
北村 達也

講演中の写真(左から)北村氏、黒崎氏

スポーツ×まちづくりで地域活性化

北村 次世代型路面電車「芳賀・宇都宮LRT(ライトライン)」をはじめ、宇都宮の地域資産や地域資源をスポーツと連携したまちづくりにどのように活用しているか。

黒崎 宇都宮市は産業・観光・都市拠点を公共交通網でつなぐネットワーク型コンパクトシティーを目指している。ライトラインの沿線にはスポーツ施設や大学、企業などが集積しており、沿線を「東部スポーツウェルネスライン」として位置づけ、スポーツと様々な分野を掛け合わせた研究や産業活動など産学官連携の取り組みを強化している。また、まちなかを舞台に開催するサイクルロードレースの国際大会は、本場欧州のレースと遜色がないと参加選手からも好評で、道路や広場など既存の都市インフラをフル活用することで開催効果を上げている。ソフト面での地域活性化も進めており、2025年には産官学でスポーツを軸とした新事業創出をめざす「みやSOIP」を設立した。街を挙げての「スポーツまちづくり」は、市民の健康増進や企業誘致にもつながる取り組みである。おのおのの都市の裁量が大きい分、リターンも期待できるのがスポーツ事業だ。今後もスポーツと他分野を掛け合わせたまちづくりを推進していく。

北村 スポーツ振興とまちづくりを連携させ、地域活性化と市民のウェルビーイング向上を推進する宇都宮の取り組みは、他自治体にとってもベストプラクティス(成功事例)となるはずだ。

スポーツを活用したまちづくりを支える「みやSOIP」

みやSOIPについての図版

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都市開発 特別講演

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