「日経リスキリングアワード2024」各賞決定 大賞は石川樹脂工業に
日経リスキリングコンソーシアム
リスキリング(学び直し)を通じて成長事業に向けた人材を育成する企業やそれを支援する公共団体を表彰する「日経リスキリングアワード2024」は石川樹脂工業が大賞に決まりました。今年から実施する同賞は公募形式により優れた仕組みやイノベーティブな取り組みを有識者が評価し、外部審査委員会(委員長、柳川範之東京大学大学院教授)が選出します。
各賞については企業・団体総合部門最優秀賞にデンソー、日立製作所、企業・団体イノベーティブ部門最優秀賞に山陰合同銀行、ニューホライズンコレクティブ、公共団体部門最優秀賞は広島県、審査委員特別賞は札幌市立大学がそれぞれ選ばれました。
授賞理由は以下の通りです。
大賞
▼石川樹脂工業
「中小企業からスタートアップ型企業への変革」を掲げ、リスキリングを経営戦略の中核に据えている。漆器などの伝統工芸を祖業としながら、ロボティクスや生成人工知能(AI)、デジタルマーケティングなどの先端スキルを、就業時間内の研修を通じて従業員に習得させ、労働生産性の向上や新規事業の育成などで大きな成果を上げている。「人材の変革を通じた組織の変革」というリスキリングの本質を高いレベルで具体化し、かつ好業績につなげている。日本経済の成長を取り戻すには国内企業の9割を占める中小企業のリスキリングが不可欠であり、そのモデルとなりうる石川樹脂工業は、第1回の日経リスキリングアワードの大賞とするのにふさわしい。
企業・団体総合部門 最優秀賞
▼デンソー
「CASE」など自動車業界の大変革に対応するためのソフト人材の育成という、明確なビジョンに基づいたリスキリングを実施している。「SOMRIE認定制度」を通じた独自のスキル認証やそれに対応した専門教育カリキュラムの設計、現場での実践を重視する「バディ制度」などユニークで多彩な仕組みを駆使し、他分野からソフト開発分野への職種転換などで実績を挙げている。日本経済の屋台骨であり、広いすそのを持つ自動車産業全体の構造転換にもつながる取り組みであり、将来的に同業他社や関連産業への貢献を展望している点でも評価できる。脱炭素化などグリーントランスフォーメーション(GX)に対応したリスキリングの側面もあり、他産業に参考になる点も含んでいる。
▼日立製作所
「製品やシステムの提供からデータを活用したソリューション等の提供へ」という成長戦略と緊密に結びついたリスキリングに早くから取り組んできた。学習プラットフォーム「LXP」や企業内大学「日立アカデミー」の整備、必要なスキルとも対応したジョブディスクリプション(JD)の策定や専門人材育成のKPI管理などは、デジタルトランスフォーメーション(DX)という共通の課題に直面する、日本企業のリスキリングのスタンダードといえる。近年もソニーグループとの「相互副業」や生成AI人材の育成を目指した専門プログラムなど、新たなリスキリング手法の開拓に絶えず挑戦しており、後に続く企業のベンチマークであり続けている。
企業・団体イノベーティブ部門 最優秀賞
▼山陰合同銀行
法人コンサルティングという戦略事業の強化のため、それまで同分野に関わってこなかったエリア限定勤務の女性社員などに集中的にリスキリングを行い、大規模な人材の再配置につなげている。大都市の大企業と比べて専門人材の確保が容易ではない地方企業にとって、事業変革の定石は既存人員に対するリスキリングである。限られた人材への効率的な投資で大きな成果を上げている山陰合同銀行の取り組みはその好例である。日本は昇進や賃金の男女間格差が大きく、金融業界はとりわけその傾向が強い。リスキリングを通じた女性のキャリアの向上は、男女間格差解消の処方箋でもあり、メガバンクを含む大手金融機関にも多くの示唆を与える。
▼ニューホライズンコレクティブ
健康寿命の延伸や生産年齢人口の減少に伴い「生涯現役」が日本の標準となりつつあるなか、働き手にはライフステージの変化に合わせて、新たなスキルを習得していくことが求められている。キャリアの後半戦を迎えた中高年にフォーカスしたニューホライズンコレクティブの取り組みは、「人生100年時代」のリスキリングの先駆けである。同じ立場の仲間がサロンやサークルに集い励まし合うことで、学びのモチベーションを高め合うという仕組みもユニークだ。当初は電通主体で発足した組織だが、その後、趣旨に賛同する様々な業種の企業が参画するなど、企業の垣根を越えた人材育成のプラットフォームとなっている点にも新しさがある。
公共団体部門 最優秀賞
▼広島県
日本社会にリスキリングを定着させるには、主体となる企業や個人の努力に加え、サポート役となる地方自治体が果たす役割も大きい。広島県は全国の自治体に先行してリスキリングの専門部署を設け、地元企業の支援に取り組んでいる。セミナーを通じた経営者の啓発や独自の補助金制度に加え、各社の状況に応じたコンサルなどの「伴走型支援」に力を入れている。個別企業の人材育成だけでなく、リスキリングを通じた成長産業への労働移動を射程に入れている点も優れている。地域に寄り添ったきめ細かな取り組みは自治体のリスキリング施策の模範といえる。地元経済団体や労働団体などとつくる「リスキリング推進検討協議会」の設置など、政労使連携の在り方にも見るべきものがある。
審査委員特別賞
▼札幌市立大学
あらゆる業種が人手不足に直面するなか、特に不足が深刻なのが医療・介護業界である。その担い手の生産性と働きがいを高めていくことは、日本社会にとって喫緊の課題であり、リスキリングはそのカギを握る。札幌市立大学が主導し、20以上の病院が参加する「看護コンソーシアム」は、医療・介護業界のリスキリングの貴重な実践例であり、400人以上の看護師にリスキリングの機会を提供するなど実績もある。他の業種のリスキリングでも事例が少ない、産学連携のモデルケースともなっている。大企業の高度専門人材の育成に光が当たりがちな日本において、エッセンシャルワーカーのリスキリングへの関心を高めるためにも、顕彰する意味は大きい。
















