新卒採用が厳しさを増す中、海外の大学を卒業する新卒高度外国人を採用する動きが活発化している。日本経済新聞社人財・教育事業ユニットは2月18、19日、日本語ができる新卒高度外国人と企業をマッチングする大規模イベント「NIKKEI GLOBAL RECRUITING FORUM(NGRF)」を開催した。11の国と地域から93人が参加。採用希望企業との面談は熱気にあふれていた。
就職みらい研究所が発行する「就職白書2025」によると、2025年新卒の採用目標数を充足できた企業は37.2%と、調査開始以来の最低値であった前年から微増となった。若者人口の減少が進む日本で、優れた新卒人材の採用は厳しい状況が続いている。そんな中、新卒高度外国人に対する注目度が急速に高まっている。人的資本経営の推進が求められる日本企業にとって、新卒高度外国人の採用は理系の専門人材不足を補う手段としてだけでなく、ダイバーシティー(多様性)やイノベーションを活性化する有効策となる。
人財・教育事業ユニットは、こうした社会背景や市場創出の大きな可能性を踏まえ、企業の人的資本経営支援を活動の軸として、パートナーとの事業共創を進めている。その一環として、24年にASIA to JAPAN(本社:東京・台東)と業務提携した。同社は高度外国人の採用を促進するイベント「FAST OFFER」を通じて、アジアを中心とする海外トップ校から年間300人以上の採用支援実績を誇る。
FAST OFFERは、同社が独自にデータベース化した人材の中から、参加企業が面接したい学生を選ぶと、3社以上の企業から選ばれた学生を同社が無料で日本に招待し、直接面接ができる仕組みとなっている。事前にマッチングを行うことで、互いのギャップを減らし、採用決定時にのみ費用が発生するなど、企業にとってリスクの少ないプログラムが特徴だ。
出所:ASIA to JAPAN
「日本語ができて日本を愛する海外トップ校新卒外国人」を「日本にいながらにして採用できる」イベントは、新卒外国人の採用を積極化する日本企業から高い関心を集めており、今回、人財・教育事業ユニットとASIA to JAPANがNGRFを共催するはこびとなった。
企業が新卒採用に苦慮する現在、それを打破する方法として、初任給の引き上げや希望先への配属などに加え、新卒外国人の採用もその一つに挙げられる。新卒外国人採用の大きなメリットは人材が質量ともに豊富であることだ。日本の大学生数は現在約400万人未満だが、アジア各国の大学生数は桁違いで増え続けている。
例えば、インドでは約4300万人、中国は約5900万人と日本の10倍以上の大学生が在籍している。また企業間の争奪戦となる理系大学生の比率は、日本では外国人留学生も含めて約20%にとどまるが、インドでは約34%、中国は約40%と高い。深刻化する採用難の状況を考えると、こうした海外の新卒高度外国人に注目しない手はない。
実際、日本で働く外国人労働者数は、厚生労働省の「外国人雇用状況(24年10月末時点)」によると、24年に過去最高の230万人を突破し、対前年増加率は12.4%だ。中でも専門的・技術的分野の在留資格を持つ人材は前年比20.6%増と、大幅に伸びている。
ASIA to JAPANの三瓶雅人社長は「日本企業の福利厚生の充実や技術力の高さ、日本文化への憧れなどから、日本への理解を深め、日本語を学んだ上で日本での就職を希望する外国籍学生が増えている」という。

大学=UNESCOの定義するISCED2011のLEVEL5~8で、大学相当の全ての高等教育機関が含まれる(日本での四年制大学・大学院・短期大学などに相当)
資料:GLOBAL NOTE「世界の大学生数国別ランキング・推移」
出典:UNESCO(UNESCO Institute)
今回のNGRFは、インドや台湾、中国、エジプト、マレーシア、タイなど、アジアを中心に11の国と地域から93人の学生が参加し、対面もしくはオンラインで面接に臨んだ。会場内に設置された参加企業のブースで、専攻分野や専門性、技術力、日本語力、日本で働きたい理由などについて、面接官と外国籍学生との間で、日本語でのやり取りが交わされた。
この日参加したインド・R.M.D.エンジニアリング大学のゴクル・ダッシェン氏は、ASIA to JAPANのインド子会社であるAtoJ HIRAMEKIが提供している日本語教育サービスで日本語を習得。「日本の文化やアニメが好きで日本での就職を希望した。入社後はより深い専門知識を身につけてソフトウエア開発に携わりたい」と意気込みを語った。また中国・西南大学院のゴ・レイ氏は「営業やコンサルティングの仕事を志望している。日本企業は安定した職場環境を提供してくれるところが良い。6年間専攻した日本語の語学力を生かして日本社会に貢献したい」と話してくれた。
インタビューに答えてくれたダッシェン氏(右)とレイ氏
会場では、新卒高度外国人の採用を検討している企業を対象に見学会も行われた。日本で就職を希望する外国籍学生との面接の様子を見学したり、採用実績のある企業と情報交換するなど、今後の採用活動の参考となる貴重な機会となった。
また、グローバル就職のトレンドや課題を考察する「国際セミナー」も同時開催された。冒頭、三瓶社長が「日本企業の採用動向とアジア学生への期待」をテーマに講演した。日本の就職市場の現状や日本企業が求めるスキル、アジア人材の強み、学生の日本語力が採用に大きく影響することなどを説明。参加企業や海外大学の関係者らが熱心に耳を傾けた。続いて各国の大学教員が登壇し、日本の技術・文化への憧れ、治安の良さから日本での就職を希望する理系学生が多いことや、日本語教育の現状や現地での就職事情について話した。サビトリバイ・フールプネ大学のプラジュワール・チャンナギリ氏は「日本企業は技術職・専門職が好待遇で、インドにはないボーナス制度や福利厚生も充実している。さらに複数のテクニカルスキルの獲得が期待できるため、円安を考慮しても日本での就職は魅力的だ。日本のものづくりや最先端技術に関心の高いインド人学生も増えている」と語った。
最後に行われたパネルディスカッションでは、大学と企業の間にある期待感のギャップや、外国籍学生が入社後に感じる敬語や専門用語の難解さ、価値観の違いや食生活への戸惑いなど、学生と密に接している立場からの率直な意見と対応策が話し合われた。
今回のNGRFでは、26人の学生が内定を勝ち取った。参加企業からのイベントに対する評価も高く、人財・教育事業ユニットでは、今後もASIA to JAPANと共に、マッチングイベントのさらなる充実と発展に取り組む考えだ。
ヤンマーホールディングス

面談を担当した笹田葵氏(左)と和田裕貴氏
海外事業拡大とIT(情報技術)分野の高度専門人材確保のために、外国人材の積極採用を進めるヤンマーホールディングス。創業以来受け継がれるヤンマーの価値観「HANASAKA(ハナサカ)」にマッチする、自らチャレンジして貢献できる外国人材を求めて面接会に参加した。
「技術系と事務系の募集だが、私が面接した技術系では優れた技術力の学生が多かった。専門外の分野まで学習しており、高い目的意識とポテンシャルを感じた」と人事部の笹田葵氏は評価する。
今回初参加だが、ヒアリングに基づいた学生の人選が「書類審査の段階で全員とお会いしたくなるほど完璧なマッチングだった」と笹田氏。同社では外国籍の新卒社員に対して入社後の負担や不安に配慮し、1年間の職場内訓練(OJT)やメンターシップ制度などの手厚いフォロー体制を用意。将来的には駐在員や海外事業担当者としてのグローバルな活躍を期待している。
静岡銀行

熱心な説明に聞き入る福世学氏(中央)と松永双視氏(右)
海外に6拠点を設け、17の現地金融機関と提携し、取引先企業の海外進出や現地での事業展開など、幅広く海外ビジネスを支援する静岡銀行。12年前から留学生採用という枠組みで外国籍人財の採用を開始し、近年は新卒外国籍人財の採用にも取り組んでいる。
25年1月、初めて「FAST OFFER」を利用して2人を採用した。経営管理部人事開発グループ課長の松永双視氏は「多様な国籍の人財を確保する目的で参加している。専門分野や研究テーマを自ら積極的にプレゼンするなど、総じてパワフルで多様な価値観を持つ学生に出会え、満足している」と語った。
入行後は本部または国内営業店への配属となり、日本人の新卒と同じ新入社員研修を受けることになる。「『地域とともに 夢と豊かさを広げます。』の基本理念を体現するべく、まずは静岡という地域を好きになり、個性を発揮して当行に新しい風を吹き込んでもらいたい」 と期待を寄せる。
第一生命テクノクロス

オンライン面談する岩元慎弥氏(左)と牧村啓太氏
第一生命テクノクロスは、主に第一生命グループにおけるシステム開発を担当している企業だ。インドでグローバル・ケイパビリティ・センター(GCC)設立の予定があり、新卒グローバル採用に踏み切った。「今回6人と面接したが、日本語レベルが非常に高く、キャリアパスに対する明確な考え方を持っているのに感心した。人工知能(AI)などの新領域だけでなく、COBOL(コボル)などにも挑戦したいという学生もいて新鮮だった」とDX推進本部DX変革推進部統括マネジャーの岩元慎弥氏は振り返る。
同社はインドの現地大学とのインターンシッププログラムなど、多様な採用活動を行っている。しかし「FAST OFFERは、自社ではリーチできない高い語学力と技術力を持つ人材を選定でき、効率的だ」と岩元氏は高く評価する。今後も新卒高度外国人の採用人数は増えると見込んでおり、社内での受け入れ態勢の整備が課題だという。

















