海外売上比率95%の「ソニック」の成功を機に
IP戦略を広く展開
世界の企業間競争の主軸は、ハードウエアや規模の経済から、IP(知的財産)・物語、体験の設計へ大きくシフトしつつあり、その中で日本のアニメ、マンガ、映画、ゲームといった「コンテンツ」の強みは大きな競争優位となり得る。
日本政府が掲げる「新たなクールジャパン戦略」においても、基幹産業としてクールジャパン関連産業を位置づけ、2033年までに日本のコンテンツの海外市場規模を20兆円に拡大することを目標としている。
PwCコンサルティングの森祐治氏は、共著書『世界で勝つエンタメビジネス~異業種連携で広げるIP活用戦略~』を踏まえ、世界市場での日本コンテンツの立ち位置について、次のように明かす。

シニアアドバイザー
森 祐治 氏

代表取締役
社長執行役員COO
内海 州史 氏
「当社による独自調査では、日本コンテンツの海外市場規模は、政府統計に含まれていない二次流通やクリエイター発信などの市場を含めるとすでに14.4兆円の規模が存在していると試算され、今後の成長余地も大きいと見ています」とし、海外での日本発コンテンツの人気の高さを指摘する。一方で、長年、培ってきた独自のコンテンツの強みがありながら、その価値を十分に海外で収益化できていない現状を課題として挙げる。
こうした構造的課題に対し、自社IPのグローバルブランド化で成功を収めている数少ない企業がセガだ。登壇したセガ代表取締役の内海州史氏は、ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)の経営企画部門にて「プレイステーション」の事業計画策定、米国プレイステーション事業立ち上げなどを経て、セガで家庭用ゲーム機「ドリームキャスト」を立ち上げた。その後もグローバルに存在感を放つ多様なエンターテインメント企業を経験し、IPを世界規模で育てて展開する総合エンターテインメント企業や音楽IPを全世界へ展開するマネジメント会社などで要職を歴任した後、セガに再び入社し、トップに就任したユニークなキャリアを持つ。
内海氏は、同社のゲームに代表されるコンシューマー事業、アミューズメント・トイ、アニメ・映像といった多岐にわたる事業展開を紹介した後、独自の競争優位として「日本よりも世界でインパクトのあるIPを多数保有していることが挙げられます」と語る。実際、同社の代表的IPに位置づけられる「ソニック」シリーズの海外売上比率は95%に達するという。
こうした主力IPにフォーカスし、グローバルブランド化を図るべく同社が推進するのが「トランスメディア戦略」だ。
契機となったのは、「ソニック」における成功である。1990年代に北米で爆発的なヒットを収めながら、徐々に人気に陰りが見え始めた「ソニック」IPの復活に向け、ファンに向けたSNS戦略からスタートし、20年以降ハリウッドでの実写映画化で大ヒットを達成。映画公開時期も組み込んだIPカレンダーを作り、コミュニティ施策やマーチャンダイジング展開などで、ユーザーが「ソニック」IPと接するあらゆる場面において、体験を最適化し、満足感を醸成できるよう、 タッチポイント・エンゲージメントを高めていった。同時に、他の新作ゲームやカタログの販売も大きく伸ばした。NetflixやParamount+といった動画配信プラットフォームでのアニメリリースや、Robloxなどといった人気ゲームとのコラボレーションも行った。玩具・食品・アパレルなども含めたライセンス事業は大幅に成長している。
その他、「龍が如く」「ペルソナ」といった同社の人気IPについても、複数のメディアやプラットフォームへの展開を実践し、自社で良質なコンテンツを創出しつつ、優れたビジネスパートナーと連携しIPを多面展開して価値向上を図るトランスメディア戦略が確立されていった。
かつてハードウエアを展開していた当時から販売していたゲームタイトルやブランドに対するリスペクトや愛情は、とくに海外において根強いという。「こうしたレガシーIPのリバイバルを順次仕掛け、業界や企業の垣根を越えたパートナーシップにより、共同でIPを育てていただくサイクルを実現しています」と内海氏。
ここで重要となるポイントの1つが、各領域に合ったベストパートナーを見つけることだ。
内海氏はゲーム市場におけるプラットフォームの多様化を受け、「従来の国内大手ゲーム企業に加え、大手IT企業やVOD(Video On Demand: 映画会社やテレビ局など、コンテンツを持っている企業が自社で配信を行うサービス)企業などもゲーム市場に乗り出し、ディストリビューションパートナーとの連携も広がりを見せています」と明かす。トランスメディアパートナーについても、「世界市場ですでに地位を確立している、いわばウィニングパートナーと組むこともポイントです」と言う。
内海氏は続けて2つ目のポイントに、時代の流れ・トレンドのキャッチアップの重要性を挙げる。「エンタメはタイミングが重要な“空気のビジネス”のような側面があり、いつ、どこで、どのコンテンツをプッシュするかという時流や勢いも大事にしています」と内海氏。こうした考え方は、以前、前職に在籍していた際に学んだものだと明かす。