
保険業界は構造的な転換期の真っただ中にある。そうした中、2026年4月1日に保険代理店事業会社の三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス(以下、SMIF)が誕生した。同社が掲げるのは、「保険とは、挑戦のためにある。」というメッセージだ。今回はフリーアナウンサーの唐橋ユミ氏が代表取締役社長の金丸宗男氏と対談。3社共同出資のもと、新たな挑戦に踏み出すSMIFの狙いと覚悟を聞いた。
唐橋
SMIFは銀泉、三井住友海上火災保険、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)の3社共同出資による新会社です。まずは設立の背景を教えてください。
三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス
代表取締役社長
金丸 宗男 氏
金丸
私たちは保険業界を、国民生活の安定を支え、日本の経済成長や発展に貢献する役割を担う「社会の重要なインフラ」と捉えています。併せて近年、お客さまの保護と経営の健全性を確保するため、保険会社や保険代理店に対する規制は厳しくなってきています。
三井住友インシュアランス&フィナンシャルサービス
代表取締役社長
金丸 宗男 氏
現在の保険業界に求められているのは、透明性や中立性をしっかり確保すること、そして経営の品質を高めていくことです。コンプライアンスを徹底した引き締まった経営と、高い提案力を備えた会社になると同時に、業界の変化にも柔軟に対応していく。そうした新しい枠組みをつくろうというのが新会社発足の経緯です。
唐橋
中心である銀泉の歩みや事業内容について教えていただけますか。また、社長としての心構えに関してもお聞かせください。
金丸
銀泉は2024年に創業70周年を迎えました。保険代理店、ビル、駐車場の3事業を展開していますが、保険代理店は祖業であり、事業の柱です。法人のお客さまが約9000社、個人のお客さまが約42万人と数多くのお取引をいただいています。
保険代理店の仕事は表面的には保険を販売することですが、銀泉の根底には常に「お客さまを支える」との意識があります。70年にわたり、単に保険を売るだけではなく、お客さまにどう寄り添い、伴走するかを大事にしながら事業を積み上げてきました。この姿勢こそが、SMIFの土台になっています。
社長としては、先ほども言及したコンプライアンスと、その上位概念であるインテグリティを重視しています。インテグリティとは高い倫理観と誠意を持って行動する規範ですが、この2つを徹底していくことが最も大切だと考えています。
あわせて社員が誇りを持ち、やりがいや成長を実感できる会社にしていく組織づくりも欠かせません。社会や業界が大きく変化している現状に向き合い、危機やピンチをチャンスに変える。このような変革のマインドセットを社員一人ひとりに持ってもらうことも、私に課せられたミッションです。
唐橋
保険業界はどのような転換期にあるとお考えですか。
金丸
まさに今、保険業界は大きな転換期にあります。損害保険業界における保険金不正請求や保険料調整行為などの問題発生を機に、より健全な競争環境の確立が急務とされています。
SMIFは複数の保険会社と契約し、それぞれの保険商品を提供できる「乗合代理店」です。一方、特定の企業グループ内でその企業の保険を中心に扱う「企業内代理店」もあります。しかし現在、親会社の特定の保険に偏った「特定契約比率」に関する規制の強化が検討されています。日本には約14万の保険代理店がありますが、もしこの規制が強化されると多くの保険代理店がルールに抵触してしまう可能性があると言われています。
保険代理店とは保険会社との系列関係や囲い込みの中で商品を販売するのではなく、公平・中立的な立場で複数の保険を比較し、お客さまに最適な商品を提案する役割を担っています。だからこそSMIFは透明性や中立性を担保しながら、お客さまの立場で考え、最適な保険プログラムを提供する存在になりたい。それが大転換期に対するSMIFの1つの答えです。
フリーアナウンサー
唐橋 ユミ 氏
唐橋
保険業界の仕組みを再構築していくような取り組みになりそうですね。それを実現するためにも3社共同の形が必要だったのでしょうか。
フリーアナウンサー
唐橋 ユミ 氏
金丸
おっしゃる通りです。お客さまとの接点である保険代理店、保険商品を設計する保険会社、企業成長を支える金融知見を持つSMBCグループの3つの力を掛け合わせることで、新たな相乗効果を生み出していくのが狙いです。私はSMIFを“新しい価値を生み出すための組織”だと思っています。違う文化を持つ人たちが集まるからこそ、多様性のある議論ができるはずです。互いに刺激し合い、様々な化学反応が生まれるのではないかと期待しています。
唐橋
「日本一の乗合代理店」を目指すという力強い言葉もありました。理想の姿はどのようなものですか。
金丸
日本一の目標に向けて、私たちは3つのポイントを重視しています。
1つ目は、業界トップレベルの品質と経営体制の構築です。高度な提案力はもちろんですが、何よりコンプライアンスや社会のルールをきちんと守り、市場の変化にも柔軟に対応できるガバナンスが必要です。さらに、複数の保険会社の商品を比較してお客さまに提示し、最適なものを選んでいただく比較推奨販売を徹底していきます。
2つ目は、お客さまの最善の利益を第一に考え、社会に責任ある行動を取ることです。そのうえで企業の経営や個人の生活をより豊かなものにし、お客さまから“ベストパートナー”として選ばれる会社を目指します。
3つ目は、持続的な成長ができる会社であることです。安定した経営体制を整えながら、収益性や効率性でも他社に負けない会社にしていきたいと思っています。
その結果、社員が「SMIFで働いていて良かった」「面白い会社だ」と感じ、自分自身の成長も実感できる会社を実現することが、私たちが考える「日本一の乗合代理店」の姿です。
唐橋
その意気込みが「保険とは、挑戦のためにある。」との言葉にも表れています。このメッセージにはどのような思いを込めているのでしょうか。
金丸
企業でも個人でも、新しいことに挑戦しようとすると必ず不確実性が伴います。保険はそれを整理し、リスクを見える化した上で、企業や個人が安心して意思決定や経営判断ができる環境をつくることで、お客さまの挑戦を支える。これが1つ目の意味です。
もう1つは、私たち自身の挑戦です。異なる強みや才能を持つ人材が集結して一体感をもって創意工夫をし、新たな挑戦に取り組む組織へと進化していく。この言葉には、お客さまの挑戦を支えることと、私たち自身が挑戦を続けるという思いを込めています
唐橋
スタートに際してブランドムービーも制作されましたね。
金丸
はい。ムービーの中でも「保険とは、挑戦のためにある。」というキーワードを象徴的に登場させています。「挑戦」や「伴走」、3社が持つ3つの価値をどう伝えるかを最優先に考え、できるだけシンプルな表現にしました。キーワードの強さを際立たせることで、皆さんが見た瞬間に「SMIFはこれから進化していくんだ」と直感的に感じていただけるような演出です。
唐橋
本日のお話からも強い熱意を感じました。最後に、今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。
金丸
今は業界の転換期でもあり、規制強化の影響を受ける保険代理店も出てくると思います。この先はM&A(合併・買収)による業界再編も進むでしょう。SMIFも再編の流れに迅速に対応し、国内だけでなく海外にも目を向けながら、新しいビジネスの可能性を広げていくつもりです。そのほか、損害保険と生命保険を組み合わせたクロスセルによるシナジーも生まれると考えています。
新時代の保険ビジネスを加速させるためにもスピーディーに取り組みを進め、新しい未来を切り開いていきたいと思っています。各社のノウハウを持ち寄りながら保険をさらに進化させ、将来的には社会のインフラとしての役割を果たしていくのが私たちの使命です。ぜひ読者の方々も、SMIFのこれからにご期待いただければと思います。