
業務効率化の手段は、その本質を理解しなければ機能しません。
ChatGPTを使っても「なんとなく便利」で終わってしまう——そう感じた経験を持つビジネスパーソンは少なくないはず。
しかしいま、AIとの向き合い方をめぐる根本的な転換が起きています。「人がAIに聞きにいく」のではなく、「AIが人に成果物を差し出す」という発想の転換です。
その転換を可能にするのが、Claude Codeと呼ばれるAIエージェント。
2023年の初期からAIの発信をはじめ、SNS総フォロワー10万人を超える株式会社AI Orchestra代表取締役の宮地俊充さんに、Claude Codeが非エンジニアのビジネスパーソンにとってなぜ強力な武器になるのかを聞きました。
構成・取材/STUDY HACKER編集部
【プロフィール】
宮地俊充(みやっち🧑💻/みやち としみつ)
1981年10月、静岡県浜松市生まれ。株式会社AI Orchestra代表取締役社長。青山学院大学法学部卒業後、2007年公認会計士試験合格。PwC Japan有限責任監査法人に入所。IFASの会計コンサル業務や監査業務等に従事。M&AファームのGCAサヴィアン(現フーリハン・ローキー)を経て、EC系ベンチャーで取締役CFOに就任。その後、2011年オンライン英会話スクールのBest Teacherを創業。2016年、SAPIX YOZEMI GROUPに売却。投資活動と音楽活動を経て、2020年に株式会社AI Orchestraを連続起業。AIメディア運営、AI研修、AI開発受託、AIプロダクト開発を手掛ける。
- 「ひとりで10人分の仕事を回す」ことが可能になった理由
- 非エンジニアこそClaude Codeを使うべき理由
- ChatGPTとClaude Codeは「役割」がまったく異なる
- 「AIが人に成果物を差し出す仕組み」を設計する3つの原則
「ひとりで10人分の仕事を回す」ことが可能になった理由
「いま、僕はひとりで10人分の仕事を回しています。しかも、以前より業務時間は半分になりました」
開口一番、宮地さんはそう語ります。にわかには信じがたい数字ですが、その裏側には明確な仕組みがあります。
AIが自動で進めて、人間は最終確認だけする
宮地さんが経営する株式会社AI Orchestraでは、SNSマーケティング、YouTube台本制作、経理、営業資料の作成、議事録の整理、メール対応——こうした日々の業務のほぼすべてを、Claude Codeを中心としたAIに委ねています。
具体的には、Notion、Gmail、Slack、Googleカレンダー、Google DriveといったSaaSツールをClaude Codeと連携させ、「AIが自動で仕事を進めて、人間は最終確認だけする」という体制を構築しているのです。
たとえば、毎週のSNS投稿案。以前は1週間分の投稿を考えるのに半日以上かかっていたものが、いまではClaude Codeが過去の投稿データや反応を分析し、21本の投稿案を自動で生成してくれます。
宮地さんがすることは、出てきた案に目を通して微調整するだけです。「正直、自分がいちから考えるより質が高いことも多いですよ」と宮地さんは笑います。
YouTube運営でも同様です。競合チャンネル74個の分析レポートが毎週自動で届き、トレンドの把握から台本の骨子作成まで、AIが下準備を済ませてくれます。経理処理もマネーフォワードと連携して請求書の下書きを自動作成。
「以前は雑務に追われて、本当にやるべき仕事——事業の方向性を考えたり、お客様と向き合ったりする時間が足りなかった。いまはそこに集中できています」と宮地さんは言います。

大事なのはITスキルではなく「業務を言語化する力」
重要なのは、これが特別な技術力を持つエンジニアだからできた話ではない、という事実です。
宮地さん自身、もともとはプログラマーではなく公認会計士出身。コードを書いた経験はほとんどありませんでした。「Claude Codeは、日本語で『これやっておいて』と頼めば動いてくれる。プログラミングの知識は必要ありません」と宮地さんは断言します。
実際、宮地さんが運営するAI講座や法人研修ではこれまでに150名以上の受講生にClaude Codeの使い方を教えてきましたが、そのうち職業エンジニアはたった1名。受講生の大半は非エンジニアのビジネスパーソンですが、全員がClaude Codeを業務に取り入れることに成功しています。
「大事なのは、ITスキルではなく"自分の業務を言語化できるかどうか”なんです。何をやっているか、何に時間がかかっているかを整理して、それをClaude Codeに伝える。たったそれだけで、業務時間は劇的に変わります」
非エンジニアこそClaude Codeを使うべき理由
「Claude Codeはエンジニアのためのツールじゃないんです。むしろ、コードが書けない人のほうが恩恵を受けやすい」
一見矛盾するようなこの主張には、明確なロジックがあります。Claude Codeが代わりにやってくれるのは「コードを書くこと」であり、人間が担うのは「何をつくるか決めること」——つまり課題設定です。
「何をつくるべきか」がわかる人が、直接つくれる時代
自社のどの業務がボトルネックになっているか、何を自動化すれば最もインパクトがあるか。この判断力こそがClaude Codeを使いこなす鍵であり、それを最も持っているのは、毎日現場で泥臭く業務を回しているビジネスパーソンにほかなりません。
「エンジニアは"どうつくるか”のプロですが、"何をつくるべきか”のプロではない。いままではこのふたつの能力が別の人間に分かれていたから、コミュニケーションコストが生まれていた。でもClaude Codeがあれば、"何をつくるべきか”がわかっている人が、直接つくれるんです」
14年間のコンプレックスが「一瞬で解消された」
宮地さん自身が14年間抱えてきたのが、まさにこの「つくりたいのにつくれない」というコンプレックスでした。
放送作家を志して挫折し、公認会計士の資格を取り、監査法人、投資銀行、ベンチャーCFOを経て起業。オンライン英会話サービスを立ち上げて売却するまで、経営者として「何をつくるか」は常に自分で決めてきました。しかし、「つくる」のは常にエンジニアに頼るしかなかったのです。
「アイデアがあっても、エンジニアに頼まないと形にならない。仕様変更のたびにコストが発生して、"これぐらいすぐできるでしょ”と思ったら"2週間かかります”と言われる。Claude Codeに出会って、初めて自分の手でアイデアを形にできたとき、大げさじゃなく14年間のコンプレックスが一瞬で解消された感覚でした」
操作もシンプルです。Claude Codeを起動し、「こういうツールをつくって」と日本語で指示し、できあがったものを確認して修正点があれば伝える。宮地さんはこれを「LINEでメッセージを送るのとほぼ同じ」と表現します。プログラミングの専門知識は一切必要ありません。
ChatGPTとClaude Codeは「役割」がまったく異なる

「AIで効率化しよう」と考え、まずChatGPTを試す人は多いでしょう。しかし宮地さんは、ChatGPTとClaude Codeでは根本的に役割が異なると指摘します。
「ChatGPTを触った方の多くが感じるのは、"質問して答えが返ってくるけど、自分の業務が劇的に楽になった実感がない"ということ。それは当然なんです。ChatGPTは"話し相手”であって、"仕事の依頼相手”ではないから」
「対話型」と「実行型」——決定的な構造の違い
ChatGPTは対話型のAIです。質問すれば答えてくれますし、文章を考える手伝いもしてくれます。しかし、あくまで「人間がAIに聞きにいく」という構図は変わりません。AIを使っている間は、人間の手が止まったままなのです。
一方、Claude Codeは「実行型」のAIエージェントです。パソコン上のファイルを直接操作し、メールやカレンダー、Slack、Notionといった業務ツールとも連携できます。
「この業務を自動化して」と依頼すれば、実際に動くツールをつくってくれる。人間がAIの前に座っている必要はなく、依頼したらあとはAIが勝手に作業を進めてくれるのです。
「ChatGPTは"ちょっと賢い検索エンジン”に近い使い方になりがちです。調べ物をするには便利だけど、それだけでは業務改善にはつながらない。Claude Codeは違います。"こういうツールをつくって"と頼めば、本当に動くアプリができる。しかも自分でつくるから、自分の業務に100%フィットしたものになるんです」
たとえば「毎週月曜に先週の売上データを集計して、前週比と前年比を計算し、報告メールの下書きを自動でつくって」と指示すれば、それだけで毎週30分かかっていた作業がボタンひとつで終わるツールができあがります。
外注すれば100万円以上かかるような業務アプリが、日本語で依頼するだけでつくれる。これがChatGPTとClaude Codeの決定的な違いです。
ツールをつくる過程が、業務の「棚卸し」になる
さらに宮地さんが強調するのが、「自分でツールをつくること自体が、業務の棚卸しになる」という副次的な効果です。
「Claude Codeに業務を伝えようとすると、"この作業って結局何をやってるんだっけ?”"なぜこの手順でやってるんだっけ?"という問いが自然に生まれる。僕の講座の受講生でも、ツールをつくる過程で"そもそもやらなくてよかった作業を3つ見つけました”という方が何人もいます」
つまりClaude Codeは、単なる効率化ツールではなく、自分の業務を構造的に見直すきっかけにもなるのです。
「AIが人に成果物を差し出す仕組み」を設計する3つの原則
ここまでの話を踏まえて、宮地さんが最も伝えたいメッセージとは何か。そう尋ねると、迷いなくこう返ってきました。
「これからの時代、大事なのは"AIを上手に使うこと”じゃないんです。"AIが勝手に仕事をして、自分には成果物だけが届く仕組み”をつくること。人がAIを触りにいくんじゃなくて、AIが人に成果物を差し出す。この発想の転換が、すべてを変えます」
では、その仕組みをどう設計するのか。宮地さんは3つの原則を挙げます。
原則1:「自動化するゴール」を先に決める
「多くの人がAIを使おうと思って、まずChatGPTに質問を投げるところから始めるんですけど、それだと"ちょっと賢い検索エンジン”で終わる。そうじゃなくて、"この業務を自動化するツールをつくる”という明確なゴールを先に決めて、そこに向かってClaude Codeを使う。この順番が大事なんです」
原則2:最初は「たったひとつの業務」から始める
宮地さん自身も最初は1つの業務から始め、それが2つになり、5つになり、今では40以上の業務プロセスがAIによって自動化されています。
いきなり全部をやろうとするのではなく、「毎週やっているけど面倒な定型作業」をひとつ選ぶ。売上報告のまとめ、請求書の発行、問い合わせメールの振り分け、競合の価格チェック——こうした「誰かにやってもらいたいけど、頼む人がいない」業務こそ、最初の自動化の対象です。
原則3:「人間が確認するだけ」の状態をゴールにする
宮地さんが目指しているのは、朝パソコンを開いたらすでに成果物が届いている状態です。
「自分がやることは、できあがったものに目を通して"OK”を出すだけ。この状態をひとつずつ増やしていく。小さな成功体験を積み上げた結果、気づけば"ひとりで10人分の仕事が回る”状態になっていたんです」
まずひとつだけ、自分の面倒な業務を選ぶ。そのひとつを自動化できた瞬間、働き方を根本から変える気づきが訪れると宮地さんは言います。3つの原則はいずれも難しくはありません。必要なのは、最初の一歩を踏み出すことだけなのです。

次の記事の予告
こんなにもすごいClaude Codeですが、宮地さんの肌感覚では、まだ超アーリーアダプターにしか浸透していないと言います。エンジニアが普段使うターミナルから利用するのが一般的であるため、少し敷居が高く感じられるからです。
次の記事では、宮地さんが運営する個人向けのAI講座や法人研修で既に実証済みの、全くのIT初心者でもClaude Codeの初期設定を完了できる方法をお伝えします。「Claude Codeやりたいけど、どこから手をつけていいかわからない」という悩みをきれいさっぱりゼロにします。
STUDY HACKER 編集部
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