「健康余命」で測るワクチンの医療経済性 五十嵐中
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ワクチンの費用対効果は、ワクチン代や感染症の医療費に加え、健康上のメリットも「QALY=質調整生存年」に換算して評価する。
新型コロナワクチンはどの年齢層でも費用対効果が良好
予防接種に限らず、いわゆる「医療経済性」、すなわち費用対効果を考える際にしばしば誤解される点がある。それは、「費用対効果が良い」ことと「医療費が節約できる」ことを同一視してしまうことだ。費用対効果の本質は「おカネと効き目のバランス」であり、「おカネ=費用」と「効き目=健康アウトカム」の双方をみることだ。すなわち、費用が増えたとしても健康アウトカムが十分に改善すれば費用対効果は良好と判断される。
QOL改善を数値で表す
予防接種の場合、ワクチン代という新たな費用が発生する一方で、感染症の罹患(りかん)減少を通して、感染症の治療(さらには、感染症にともなって発生する合併症や後遺症の治療)コストを削減できる。しかし、感染症罹患減少という効き目の改善の評価を、医療費削減のみで捉えるのは不合理である。効き目の改善そのもの、すなわち罹患減少や死亡減少、さらにQOL(生活の質)の改善の健康指標(健康アウトカム)の変化そのものも、数値で評価する必要がある。
表1に示すのが、新型コロナワクチン・帯状疱疹(ほうしん)ワクチンについて、「A=ワクチン代」「B=感染症の医療費」「C=健康指標の変化」を分解したものだ。費用対効果の良しあしの目安は、総医療費の増減 (A+B)ではなく、医療費A+Bと健康指標Cのバランスとなる。
Cの単位として使われる「QALY=質調整生存年」は、その名の通り、余命(生存年)に健康状態で重みを付けた、いわば「健康余命」のような数値だ。健康状態の重み付けは、1点満点のQOL値で行う。例えば、寝たきりの状態のQOL値が0.3点として、5年間過ごしたとすれば、このときの獲得健康余命・QALYは5年間×0.…
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週刊エコノミスト
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