経済・企業 挑戦者2026

AIの力で鉄道の安心を実現――渡邊亮さん

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

MOYAI代表取締役社長CEO 渡邊亮

わたなべ・りょう
 1973年5月、京都府生まれ。95年に米カリフォルニア大学ロングビーチ校を中退し、その後、広告やプロデュースなどの業界を中心に複数の企業に就職し、研さんを積む。2005年に家具を手掛けるゲート・オブ・ドラゴンを、11年にはLEDビジョン開発のゲート・オブ・ライティング&ビジョンを設立。そして18年に現在のMOYAIを設立。

 先進技術を搭載したAI(人工知能)装置で、鉄道車両の安心・安全・快適化に貢献する。(聞き手=北條一浩・編集部)

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 写真で私が手にしている装置をご覧ください。防犯用の4Kカメラのほか、温度・湿度や煙感知など八つのセンサーを標準搭載した「IoTube®」というIoTセンシングデバイスです。LED照明のある場所なら簡単に設置可能で、現在、首都圏で10、関西で1、沖縄で1と計12の鉄道会社車両に採用されています。

 最初の発想は10年ほど前ですが電車に乗っていて、少なくない数の男性が片手をつり革、もう片方にスマホを持ち、それが「両手がふさがっています、私は痴漢をやっていません」というそれとないアピールだと気づいたことにあります。通勤電車などでの痴漢は大きな問題ですが、同時に痴漢冤罪(えんざい)を恐れる人も多い。当時は次女が生まれて間もない時期だったこともあり、「みんなが安心して電車に乗れるように、車両にカメラがあったらいいのに」と考えました。それで開発に乗り出したんです。

 2020年、最初に納品した大手電鉄会社から翌月すぐに電話があり、「先月はウチだけ痴漢ゼロだったよ!」とうれしい報告をもらいました。首都圏では電車の相互乗り入れを行う関係上、各社間で毎月車内トラブルの共有をしているそうで、その電鉄会社だけ痴漢ゼロという成果を上げることができたわけです。

 また、ほどなく地下鉄車内で放火事件が発生した際、車両40台分の映像をすぐに提供し3日後に犯人逮捕。鑑識捜査も犯人の接触箇所に絞れたため、従来の20分の1の時間で完了しました。この件は警視庁から高い評価を受け、IoTubeの存在を広く知らしめる機会となりました。

常識に乗らず、流れに乗る

 社名は「もやい結び」からきています。簡単に結べて負荷がかかっても強固、そのうえすぐほどけることから「キング・オブ・ノット(結びの王様)」と呼ばれる結び方です。私はこの結び方のように、従来とは違う何かと何かを結んで新たなことにチャレンジしたいという気持ちからネーミングしました。

 私は思い立ったらすぐ行動に移す性格で、20代の頃にはアマゾン川に興味を持ち、2週間、アマゾンのジャングルでサバイバル生活をしたことがありました。仕事では雑誌編集、居酒屋チェーンの新業態開発、家具のデザインなどいろいろ経験しました。そんな中でLEDビジョン事業に出合い、時代の流れを先読みしてIoTデバイスやAI開発のほうに入っていきます。私は常識には乗りませんが、時代の流れを読んで乗っていくのは重要なことだと考えています。

那覇市に設置されたAIカメラ付きLEDビジョン「INFODIA」
那覇市に設置されたAIカメラ付きLEDビジョン「INFODIA」

 現在はIoTubeのほか、那覇市の国際通りに、AIカメラ付きLEDビジョン「INFODIA」を50台ほど設置しています。これは電線を地下に埋めた際に地上に備える機器の上部を活用し、観光案内や地域イベントなど公共性の高い情報を流すデジタルサイネージです。

 また、IoTubeのビーコン機能と連携し、スマホにアプリを入れることで同一車内にいる人に通知を送り、痴漢や迷惑行為があった際、互いにサポーターになれるサービスのリリースを予定していますのでご期待ください。


企業概要

事業内容:AI、IoT関連事業およびデジタルサイネージ、ネットワーク関連事業

本社所在地:東京都港区

設立:2018年11月

資本金:3億6443万円

従業員数:25人


週刊エコノミスト2026年5月5・12日合併号掲載

渡邊亮 MOYAI代表取締役社長CEO AIの力で鉄道の安心を実現

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