日本ではクルミなどのナッツ類アレルギーが急増し,深刻な問題になっている。米国で急増するピーナッツアレルギーと同様,少量の摂取でも反応が出やすく,アナフィラキシーショックを引き起こすリスクも高い。食物アレルギーでは,少しずつ食べて慣らす「経口免疫療法」が研究段階の治療法として実施されているほか,アナフィラキシーショックを緩和する点鼻スプレーがこのほど承認された。ゲノム編集によってアレルゲンを除去した鶏卵の開発も進んでいる。日本の食物アレルギーをとりまく現状について,アレルギー中心拠点病院に指定されている相模原病院で臨床研究センター長を務める海老澤元宏に聞いた。
「今回の調査ではナッツ類が最多になるだろう」と海老澤は語る。海老澤らの研究チームは,アレルギーを専門とする日本全国の医師の協力を得て,食物アレルギーのモニタリング調査を3年ごとに実施している。原因食物の上位3品目は長らく,鶏卵,牛乳,小麦が占めていた。この10年ほどでナッツ類が急増し,小麦と牛乳を追い抜いて1位の鶏卵にも迫る。直近の2023年の調査では,鶏卵が26.7%,ナッツ類が24.6%で,その差はわずかだった。現在実施中の2026年の調査ではナッツ類が鶏卵を上回り,1位になる可能性が高いとみられている。
ナッツ類はそのまま摂取するだけではなく,菓子や調味料などの加工食品にも広く使われているため,モニタリング調査の結果をふまえて食品表示の見直しが進められてきた。鶏卵や小麦などの7品目に加えて,2023年にはナッツ類の中でも最多のクルミが表示推奨から表示義務に格上げされた。2025年12月に開かれた消費者庁の有識者会議では,クルミに次いで多いカシューナッツも格上げされることが決まり,表示義務がある特定原材料は9品目になった。ピスタチオも新たに表示推奨に追加される予定だ。
ナッツ類アレルギーは,自然に治りにくく,重篤な症状が出やすいという特徴がある。これまで上位3品目を占めていた鶏卵,牛乳,小麦のアレルギーの多くは乳児期に発症するが,成長するとともに次第に食べられるようになる。小学校に入学する前には約8割が,特に治療をしなくても症状が出なくなる自然寛解という状態になる。一方,ナッツ類アレルギーは発症する年齢が鶏卵などに比べて高く,自然寛解に達する割合も約1割にとどまると考えられている。
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協力 海老澤元宏(えびさわ・もとひろ)
相模原病院臨床研究センター長。日本アレルギー学会理事長。2020年に世界アレルギー機構の理事長に就任し,2023 年からは顧問を務める。専門は食物アレルギー。
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