香港CKハチソン、英通信から撤退へ ボーダフォンに9100億円で売却

【香港=伊原健作】香港の大手複合企業、長江和記実業(CKハチソンホールディングス)は5日、英通信大手ボーダフォン・グループとの合弁会社の持ち分を、43億ポンド(約9100億円)でボーダフォン側に売却すると発表した。四半世紀を費やした投資を完了し、事実上撤退する。
合弁会社は2025年、英携帯電話業界3位のボーダフォンと、4位でCKハチソン傘下のスリーが経営統合して発足した。CKハチソンによると、通信子会社を通じて保有する合弁会社の持ち分49%の全てをボーダフォン側に売却する合意を結んだ。
CKハチソンの霍建寧副主席は同日の声明で2000年に参入した英通信事業の経緯に触れた。最後は「英国最大の通信事業者としてリーダーの地位を確立した」と感慨をにじませ、「売却により投資の価値を実現し、グループと株主にリターンをもたらす」と強調した。売却代金は現金で受け取るという。
売却発表を受けCKハチソンの株価は5日に急騰し、一時前日比5%高の68.45香港ドルと約6年9カ月ぶりの高値を付けた。
ボーダフォン側も同日取引を公表した。「いまが完全子会社化の絶好の機会で、英国のデジタルインフラの変革を加速する」とコメントした。負債などを考慮して算出した合弁会社の企業価値は138億5000万ポンドと、日本円で3兆円弱だった。
英通信事業は中国から欧州へとシフトするCKハチソンの戦略の象徴だった。
創業者の李嘉誠氏は、第2次世界大戦後の香港で「ホンコンフラワー」と呼ばれるプラスチック製の造花事業から身を立てた立志伝中の人物だ。不動産や通信、電力、港湾、小売りなどにまたがる巨大グループを築き、時代を先読みして投資する嗅覚の鋭さから「超人」の異名をとった。
現在の中国経済の変調を他社に先駆けて嗅ぎ取り、中国本土の不動産などの資産を処分して欧州事業にシフトした。2000年の3G通信の入札を機に参入し、03年に「スリー」ブランドでサービスを開始。10年代前半までは長く業績不振が続いたが、低価格戦略によるシェア拡大路線を貫き事業転換への決意を示した。
当初は日本のNTTドコモも2割を出資して事業参画したが、04年には資本を引き上げて事実上撤退した。日本で成功したネットサービス「iモード」の展開などを模索したが、思惑にずれが生じたとされる。
今回の売却はCKハチソンが注力する事業の再構成の一環だが、中米パナマ運河両端の港湾運営を巡って難題も抱える。
中米から中国の影響力排除を目指すトランプ米大統領はCKハチソンを中国企業とみなし、パナマの港湾運営を猛批判した。これを受け25年3月にパナマを含む世界43港湾の実質的な運営権を米ブラックロックなどの投資家連合に売却する基本合意を結んだものの、中国政府の反発などで先行き不透明感が強まる。
李嘉誠氏から18年に経営を引き継いだ長男、李沢鉅(ビクター・リー)主席は3月に、中東情勢の緊迫化など国際情勢の変動で「M&A(合併・買収)のチャンスが増える」と述べた。パナマ問題の不確実性を抱えながらも、事業の入れ替えを急ぐ方針を示した。
2月には英配電大手UKパワーネットワークスの全株式を、総額105億4800万ポンドで仏エネルギー大手のエンジーに売却すると決めた。英通信事業売却で手元資金はさらに厚くなる。優良な買収案件を見いだし、事業転換を進められるかが問われる。
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