インタビュー(対談)
日本の明日に、「楽観」を届ける使命
〜経済報道ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』がめざすこと〜
経済報道ドキュメンタリーとは「楽観」を伝えること――。いまは先が見えていなくても、人は「楽観」があるからこそ挑戦し、前に進むことができる。そう力強く語るのはテレビ東京チーフ・プロデューサーの小林洋達さん。
日経スペシャル『ガイアの夜明け』は2002年の放送開始以来、日本経済の現場で挑戦を続ける人たちの姿を追い続けてきました。2025年春には俳優の長谷川博己さんを案内人に迎え、新たなスタートを切りました。
混沌が増す時代の中で、番組は何を見つめ、何を届けようとしているのか。長年にわたって視聴者を惹きつけているものは何なのか。番組づくりの哲学とこれからの挑戦についてお聞きしました。
経済ドキュメンタリーとしての「進化」と「原点回帰」
———2025年春のリニューアルから1年弱が経ちました。視聴者の方からの反応に変化はありましたか?
小林 洋達氏(以下、小林):私は2025年4月から『ガイアの夜明け』を担当していますが、実はこれが3回目で、20年以上前の番組の立ち上げにも携わっていました。番組に戻ってきて改めて実感しているのは、経済や社会の課題に対してしっかりと問いが立った「人間ドキュメンタリー」をお届けできた時の反響の大きさです。企業の戦略や市場の動きだけでなく、その中で挑戦している人たちの葛藤や決断に焦点を当てるストーリーを、視聴者の方は求めているのだなと。
一人ひとりの主人公の心の声に耳を傾ける。視聴者の皆さまも一緒に考えたいし、その先が知りたい。けれど必ずしも「正解」が示されることを求めているわけではない。骨太な問いを立て、焦点を絞り、葛藤する人たちをじっくりと描き出す。そうした姿勢こそが『ガイアの夜明け』の原点だと思っていますし、視聴者の方からもその点を評価していただけていることに価値を感じています。

1998年にテレビ東京入社後、報道一筋。『ワールドビジネスサテライト』、東証・日銀担当記者、『ガイアの夜明け』、北京支局、『カンブリア宮殿』、『池上彰の選挙特番』、『Newsモーニングサテライト』を担当。2018年1月から22年1月までニューヨーク支局に赴任し、世界最悪の新型コロナウイルス感染拡大や、異例づくしの大統領選などを特集した。『ガイアの夜明け』では、03年のイラク戦争が開戦するまでクウェートで長期取材したほか、12年には中国で反日暴動の被害にあった日系百貨店「平和堂」が再開するまでを潜入取材した。 2025年4月より『ガイアの夜明け』チーフ・プロデューサー。
———改めて『ガイアの夜明け』を担当されるにあたって、取材現場で感じられることはありますか?
小林:日本で生活している一般の人にとっては、目の前の日々の暮らしの実感が基準になりますよね。一方で、取材でも多く訪れる製造業などの現場では、企業の意思決定が国際政治や世界経済の動向と密接に結びついているため、自ずと世界の動きに目を向けています。
そういった面で生活者、視聴者の感覚と、大手企業などが向き合っている視点はやや異なりますが、番組では常に視聴者の半径数メートルにある日常のリアリティを意識しながらも、世界経済の趨勢にアンテナを張り、その両方を視野に入れて伝えていくことが大切だと思っています。
なお、いまの時代は世界各地で戦争が起きるなど、昔より複雑化したように見えるかもしれません。しかし振り返れば、番組が始まった2000年代初頭も、世界は決して安定していたわけではありませんでした。私自身2003年には、当時の『ガイアの夜明け』の長期取材でクウェートにいて、米ブッシュ大統領がイラクのフセイン大統領に48時間以内の出国を要求する演説を現地で聞いていました。その取材は「戦争と石油」というタイトルで放送しましたが、偶然にもいままた中東では武力を行使する争いが勃発し、世界の市場が巻き込まれようとしています。社会にはその時、その時に直面する課題が常にあり、日本企業はその中で翻弄されながらも挑戦を続けています。私たちの番組も、時代は変わっても「いま起きている課題に向き合い、それを伝える」という姿勢は変わっていないし、変えてはいけないと考えています。
プロとプロ、互いの敬意から生まれるドキュメンタリー
———さまざまな企業ドキュメンタリー番組とは一線を画す、現在進行形のリアルさや踏み込みの深さを感じます。制作現場で徹底されていることはありますか?
小林:一言でいうなら、取材相手との信頼関係です。私たちの取材チームには本当に誇れるカメラマンたちがいます。当然密着取材では長い時間を一緒に過ごすことになりますが、取材相手の方はだいたいまずカメラマンを好きになるんですね。自身がプロとして働き、決断していく姿を、同じくプロのカメラマンが撮る。その関係の中でお互いにリスペクトが生まれるのでしょう。取材対象の方にも自然体で接していただけるようになり、その素顔や、本音が見えてくるのです。
密着取材を続けていると、取材相手の一瞬の感情の機微を捉えたカメラマンが、思わず質問を投げかけることもあります。本来、質問やインタビューはディレクターの役割ですが、長い時間を共に過ごし、相手に伴走し続けているカメラマンだからこそ引き出せる言葉もあるのです。そうした意味で、ガイアのカメラマンたちは皆、本物のジャーナリストだと感じています。
カメラに撮られるというのは、本来は怖いもの。信頼関係がなければ接近して撮ることもできませんし、微妙な表情の変化を捉えることもできません。その距離の近さ自体が、信頼されている証しだと思います。
ディレクター、プロデューサー陣も同じです。この取材で何を伝えたいのか、なぜ追いかけたいのかを、丁寧に真剣に取材相手にお伝えし、真実のストーリーを目指してまとめあげていくことを何よりも大切にしています。膨大な映像素材の中から、本当に伝えるべきものを見極めて、削ぎ落としていく。我々は毎回、番組のプレビューを4〜5回実施します。その中で何度も「この回の本質はどこにあるのか」「取材を受けてくれた方に真実を伝えてもらえてよかった、と思ってもらえるか」を繰り返し全員が考え、細かな部分まで調整していくのですが、その積み重ねが番組のリアリティにつながっているのだと思います。

———番組が標榜する「経済報道ドキュメンタリー」の本質とは?
小林:昔、尊敬する報道局の先輩からかけられた「経済を伝えるということは、楽観的であることだ」という言葉が、ずっと私の中に残っています。経済というのは、人が未来を信じることで動くものなんですよね。新しい事業を始めたり、設備投資をしたり、新しい製品を買ったりするのも、「明日は今日より良くなるはずだ」という期待があるからこそ。もし社会が完全に悲観的な空気に包まれてしまえば、人は挑戦しなくなってしまうと思うのです。
目の前の壁があまりにも高すぎて、越えられるのかどうかわからない。たとえそんな状況でも未来を信じて挑戦している人たちを追い続けることで、必ず可能性があるんだということを伝えたい。混沌とした時代の中でも、どこかで誰かが挑戦を続けている。金曜日の夜に『ガイアの夜明け』に登場したそんな主人公たちに共感し「私もがんばろう、来週から何かに挑戦してみよう」と思える、そんな「楽観」を届けることこそが、経済報道ドキュメンタリーの役割だと考えています。
『ガイアの夜明け』新たな挑戦
———番組の今後の進化や挑戦について教えてください。
小林:私はこれまでもよく取材に向かうディレクターに「入り口となる問いが立ったら、ゴールは考えるな」と声をかけてきました。先に落とし所を自分で想定してしまうと、大事なものを見落としてしまうことがあるからです。特に最近は、何が起きているのかすぐには整理できないような出来事が膨大に増え、そこに明確な定義があるかどうかを考えていると、取材すらできないテーマ、溢れ落ちてしまうテーマも多くなったと実感しています。ですから、ゴールはどうなるかわからないけれど、とりあえずこの人は何を考えているのか、なぜいま注目されているのか、そうした素朴な疑問から問いを立てていくことも必要ではないかと考えています。
『ガイアの夜明け』には、人を見る力を持ったカメラマンが多くいます。ドキュメンタリーを愛するプロデューサーやディレクターたちがいます。これからもその力を信じて人物に迫り、時には編集ノウハウやストーリー構築を超えて、取材相手と取材者・撮影者の関係そのものを見せるような表現にも挑戦していきたいと思いますね。
経済・社会の課題に対して挑戦する人を描き、その姿から時代を生きるヒントを届けるという、変わらない理念を守りながら、新しい方法にも挑戦していく『ガイアの夜明け』。これからもぜひご期待ください。
———私たちは「楽観」があるから挑戦できるーー。「楽観」そして「信頼」という一見経済とは結びつかないキーワードに、番組の変わらない魅力の源泉を見つけられた思いがします。私たち日本経済社は2002年の放送開始時から番組づくりを応援してきました。これからも『ガイアの夜明け』を通して希望を届け、働く人々の挑戦への一歩を後押ししていきたいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました!
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日経スペシャル『ガイアの夜明け』は、こちらでも紹介しています!
●番組概要
【番組名】 日経スペシャル ガイアの夜明け
【放送日時】
毎週金曜 夜10時〜10時54分放送
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ 九州放送
毎週日曜 夜10時30分〜11時25分放送
BSテレ東
【配信】
テレ東BIZ:https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/gaia
TVer:https://tver.jp/series/sr7x3ce7ak
U-NEXT:https://video.unext.jp/brand/txbiz
出演者
小林 洋達 氏
テレビ東京 報道局
チーフ・プロデューサー
聞き手
藤井 愛
日本経済社
メディア本部
テレビ・ラジオソリューション部 部長
※内容および出演者の所属・肩書は2026年4月現在のものです。
