肥満や老化を抑え、絆を作るホルモン…「オキシトシンは裏切らない」
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私たちの体内で働くホルモンの一つに「オキシトシン」がある。

炎症や肥満を抑える作用も報告され、アンチエイジング(抗加齢)の効果が期待されている。福島県立医科大学の前島
太っているほど効く
前島さんがオキシトシンに着目したのは、2009年だった。06年に発見された食欲抑制ホルモン「ネスファチン1」が効く仕組みを調べていた時、それが実はオキシトシンの分泌を促進して食欲を抑えるのだということを見いだした。
「ネスファチン1はアミノ酸が82個つながった大きな分子で、ロットによって効き具合が違うこともありますが、アミノ酸9個のオキシトシンは安定で、絶対に裏切らない。そこがすごくよいと思い、のめり込んでいきました」
この頃、主に海外でオキシトシンの研究が活発になり、信頼感を高める作用や、自閉症の人に投与して症状を改善する試みなどの報告が相次いだ。そんな中、前島さんは「心」よりも「体」への作用に目を向け、主に動物実験で研究に取り組んできた。

そして、食欲を抑えて肥満症を改善するほか、インスリン分泌を促進することで耐糖能(糖を摂取した時に血糖値を抑える能力)を高め、糖尿病を予防・改善する働きなども解明した。興味深いのは、肥満が進んだ体ほど、オキシトシンはよく効くという成果だ。
下村さんが説明する。「1990年代に見つかったレプチンという食欲抑制ホルモンは、太ると(その働きを妨げる)抵抗性が生まれてしまう。でもオキシトシンは太ると血中の濃度が下がり、それを体が何とかしようとして、受容体(オキシトシンを受け止めて働く物質)が増える。そこへ体外から投与すれば、よく効くんですね」
脳も若返る…世界的権威が称賛
前島さんのオキシトシン研究は、肥満への効果から、さらに抗老化作用へと広がった。肥満と老化は、低レベルの炎症が継続するなど、似た面があるのだという。オキシトシンも、肥満だけでなく加齢に伴って血中濃度が下がる。
昨年、オキシトシンを分泌する脳内の神経細胞について、新たな成果を発表した。人間の35歳以上にあたる雄のマウスにオキシトシンを10日間点鼻すると、加齢で減っていた分泌細胞がかなり回復した。
細胞内の変化を詳しく調べたところ、加齢で衰えたDNAの働きを元に戻す酵素「
前島さんは「オキシトシンの点鼻によってTET2が増え、COX4も増えて、神経細胞が若い頃の機能を取り戻す。その結果、オキシトシンの分泌が増えるという好循環ができるのではないでしょうか」と説明する。血中では、オキシトシンが増加する一方、全身の炎症の指標となる物質(炎症マーカー)が減少し、いずれも若い頃と同レベルに回復した。

この成果を報告した国際学術誌「エイジング・セル」に、オキシトシン研究の世界的権威であるシャスティン・ウヴネース・モベリ博士(スウェーデン)らが1月末、論評を寄せた。「オキシトシンが、新生児から老年期まで生涯を通じて健康を制御する基本的な因子であることを、マエジマらのエレガントな研究が初めて分子レベルで裏付けた」
前島さんは「うれしいですね。お会いしたこともない偉い方が、こんなに評価してくれて」と感激している。


























