自分はダメなやつ。そんな人に「コンパッション」を!
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銃の引き金をマインドフルに引き、罪もない人を正確に殺害する。
ブラック企業の理不尽な働き方に、マインドフルにひたすら耐える。
唐突ですが、これらの意味、分かりますか? 前者はまあ、日本の一般市民にとってはありえない状況ですが、「マインドフルネス」をきちんと理解せずに実践すると、こうした事態も起きかねません。これを防ぐカギとなるのが、「コンパッション(思いやり、慈悲の心)」です。
10月22日付読売新聞朝刊の解説面 と、同日からスタートした 朝刊くらし家庭面の「医療ルネサンス・思いやりの力」 で、「コンパッション」をテーマに記事を書きました。医療ルネサンスは計7回の連載記事です。
私は2009年ごろからマインドフルネスに関心を持ち、翌10年から新聞紙面や医療健康サイトのヨミドクター、そしてこのコラムで、マインドフルネスに関する記事をたびたび書いてきました。
グーグルなど多くの米企業が導入の「マインドフルネス」だが……
マインドフルネスとは、 「今ここにある感覚や感情、思考に意識を集中し、『良い』『悪い』といった価値判断をせずに、ありのままに感じ、受け入れること」 。冒頭に書いた「マインドフル」は、その形容詞です。もともと初期仏教(原始仏教、上座部仏教)の教えの一つですが、欧米で、ストレスを減らす効果が認められ、うつや不安、慢性の痛みなどの治療プログラムに導入され、世界に広がりました。
米国では、グーグルをはじめとする数多くの企業が、ストレス低減だけでなく、集中力や生産性、創造性の向上を目指し、社員研修の一部にマインドフルネスを導入しました。こうして知名度は一気に高まり、あらゆる分野に導入が進んだのです。もはやブームと言ってもよく、商業主義とも結びついた手軽なマインドフルネスは、全国チェーンのファストフード店になぞらえて「マック・マインドフルネス」と
「マインドフルネス」の真の目的は?
ただし、集中力や生産性、創造性の向上を目指してマインドフルネスを使うのは、本末転倒と言えます。マインドフルネスは、目標達成を目指す心のあり方である「すること(doing)モード」から、今ここにある体験をありのままに気づく「あること(being)モード」にギアチェンジすることを学ぶのですから。
そして、仏教の教えであるマインドフルネスにはもともと、コンパッションが含まれています。コンパッションは、「相手の苦しみを深く感じ、軽くしてあげたいと思う前向きな感情や態度のこと」です。これを自分に向けると、「セルフ・コンパッション」になります。単なる思いやりや優しさではなく、苦しみに巻き込まれない「強さ」をも兼ね備えた感情や態度と言えます。
「マインドフルネス」の実践に必要な「コンパッション」

医療ルネサンスの7回目に登場した有光
冒頭で紹介した「銃の引き金をマインドフルに引き、罪もない人を正確に殺害する」人は、他者へのコンパッションが欠如しており、「ブラック企業の理不尽な働き方に、マインドフルにひたすら耐える」人は、自分への「セルフ・コンパッション」が欠落していることになります。つまり、 マインドフルネスとコンパッションは車の両輪 のようなもので、どちらも共に育んでいく必要があるのです(余談ですが、米国防総省ペンタゴンが、スナイパーの訓練にマインドフルネスを取り入れているのは有名な話です)。
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