【最終回】若者よ! どうか死なないで!…今はつらくても、とにかく生き延びて
完了しました
今から20年ほど前、私の妻は、うつ病を発症しました。
精神科のクリニックでカウンセリングを受けても、処方された薬を飲んでも、症状はあまり改善されませんでした。
妻から届いた「今から死ぬ」メール
ある日の昼過ぎ、私が会社で仕事をしていると、携帯電話に妻からメールが届きました。
「今から死ぬ」
「そんなこと言わないで! 死なないでほしい」。はっきりと覚えてはいませんが、私はそんなメールを返信し、その日の取材予定をキャンセル、所属していた医療情報部(現・医療部)のデスクに事情を話し、急いで電車に乗って帰路につきました。
東京・大手町の職場から、当時住んでいた千葉県松戸市の家に着くまで、電車と徒歩で1時間ほど。まだ明るい午後の、ガランとすいた電車のシートに座りました。
怖かった。すごく怖かった。前にも「死にたい」と言ったことはあるけど、今度は本気かもしれない。ほんとに死んだらどうしよう? 半分、泣きそうになったのを覚えています。でも、自分ではどうすることもできません。特定の信仰は持っていないけど、神様に祈るしかありませんでした。

それでも、何かしないではいられない。私はビジネスバッグから取材のメモ帳を取りだし、ボールペンで「〇〇(注・妻の名前)は死なない!」と書きました。でも、すぐに上からペンでグジャグジャに消しました。「死」という文字自体に、不吉な感じを抱いたからです。そこで、メモ帳にこう書きなぐりました。
「〇〇は生きる! 生きる! 生きる! 生きる! 生きる!」
強く念じながら、何度も、何度も、ページをめくっては書き続けました。
自宅に着き、急いで玄関のドアを開け、リビングへ入ると、幸い、妻はソファに横になって休んでいました。私は、心の底から
それから数日後、妻は都内の大学病院の精神科に1か月間入院し、うつ症状は治まりました。その後も年単位でいろいろなことがあり、精神状態に波はあったものの、次第にうつを発症する間隔が長くなり、症状も徐々に軽くなっていきました。
そして今、50代になった妻は、うつ状態に陥ることはほとんどなく、毎日を元気に過ごしています。
このコラムを書くにあたり、私が「あの時のことを書いていい?」と尋ねると、妻は「いいよ」と答え、こう言いました。「でも、私、あのころのことをあまり覚えてないんだよね」。あまりのつらさから、記憶障害が起きてしまう「解離性健忘」という状態だったのかもしれません。


























