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大切な人を自死でなくした男女はどう折り合いをつけるのか……「想像して、想像して書きました」 窪美澄さんの胸を突く小説

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 大切な人を自死で亡くした男女は、その後をどう生きていくのか――。作家の窪美澄さん(60)の新刊『君の不在の夜を歩く』(新潮社)は、心の底を突き抜くほど重いテーマを抱えた小説だ。残された者たちの心境を、「想像して、想像して書きました」と語る。(待田晋哉)

『君の不在の夜を歩く』 窪美澄さん

自身にも、30代後半のころがあった。「小説を書かないといけないのに、40歳がきてしまうと思っていました」=稲垣政則撮影
自身にも、30代後半のころがあった。「小説を書かないといけないのに、40歳がきてしまうと思っていました」=稲垣政則撮影

 <菜乃子が死んだってよ>

 金曜日の深夜、高校時代の友人だった沙耶にLINEのメッセージが届いた。美しくて聡明な菜乃子はなぜ、30代の後半でこの世を去ったのか。夫の達也や沙耶をはじめ、同級生だった4人は会うようになる。

 「年齢もあってコロナ禍を挟んで、大事な人をぽつぽつと亡くすことがありました。死んだ後にその人のメールが残っていると気づくこともあり、人は亡くなった後に存在感を増すことがあるなと思ったことが始まりでした」

 胸に大きな穴があいたその後の4人の話が、短編を連ねる形でつづられていく。宗教2世であることを隠していたり、小説家を目指していたり、それぞれの事情を抱えながら、菜乃子のことを思い続けている。

 「自殺をした人は天国にいけないとか、悪く言うことがある。それは、ちょっとないなと感じます。特に女性は、30代から40代にかけて結婚や出産など決めなくてはいけないことも多いし、ホルモンバランスで気分がふさぐこともある。何かに 翻弄ほんろう され、戦って亡くなることもあると思う」

 菜乃子は、相手の深い部分へ降りていける性格だった。ノースリーブのシャツから伸びる白い腕は心配になるほど細かった。4人が思い出す彼女の言葉やエピソードからは、一行も直接的には書かれていないのに、命のかけがえのなさが浮かび上がってくる。

 「薬のオーバードーズ(過剰摂取)をするような女の子には、きょう一晩をやりすごせば、あすは違う感じになるかもしれないと話したくなる。承認欲求が満たされなくても、人間は生きられることも言いたい」

家を出た母

 亡くなった人や残された人の思いや考え方が、心のひだに張りつくように書かれるのは、「自分が近い気持ちにあったから」だと語る。東京都生まれで、12歳のときに母が家を出ていった。

 「今ならば母の事情があったと分かります。でも当時は、自分は捨てられた子供だと思いました。暗い方に向かうのは『舗装された道路』で簡単に転がっていきそうで、何とかそこに行かないように考えていた」

 その中で、思春期には小説をよく読んだという。結婚後、最初に授かった子は生後間もなく亡くなった。その後、再び子宝に恵まれたもののシングルマザーとしての子育てを経験した。年上の主婦と不倫する高校生らが出てくるデビュー作『ふがいない僕は空を見た』を刊行したのは40歳を過ぎてからだった。

 「デビュー作は、すごく『ホルモンの力』を感じる。今よりは色々なことに怒っていた。『性』を描いても、最後は『生』を書くというのは、自分の一番個性が出るところかもしれません」。穏やかな表情で話す。最近はあまり性を書かなかったが、今作には強烈な場面がある。「自由に書いてほしい」と編集者に言われ、出てきたという。

 コロナ禍などを背景にした短編集『夜に星を放つ』で22年に直木賞に輝いた。「人の再生まで書けたのが変化だと思う」と語る。

 「亡くなった人は、ゼロになるわけではない。生きているように話しかけてくる。年齢を重ねるほど、対話をしているような境地になるのかもしれません」

 自身の人生と会い直し、これからも純度の高い小説を生む予感を漂わせた。

  窪美澄 (くぼ・みすみ) 1965年生まれ。2009年に「ミクマリ」で女による女のためのR―18文学大賞を受賞してデビュー。11年に同作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞を受賞。著書に『給水塔から見た虹は』など。

お気に入り

  ★猫の置物  猫が好きで色々と持っているけれど、この2体が最近のお気に入りです。大きな方は息子がくれたもので、小さな方は大阪の住吉大社のものです。

  ★シャンプーブラシ  本来はシャンプーのときに頭皮を洗うものですが、私は仕事が終わったときに頭をもむように使います。肩凝りや目の疲れにきく気がします。

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